山下武著「夭折の天才群像」☆ マンジュウ本とも言われる遺稿集までフォローした鎮魂歌的名著☆ | 書物と音盤 批評耽奇漫録

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 山下武著「夭折の天才群像」☆

 これは10代で病気や自殺にて逝った作家たちに有名無名を問わず光を当て、レクイエムのように生前の姿を浮き彫りにした一冊ですね。
 
 山下氏は昔書店で、全く無名の県満天雄のいわゆる遺族に配られるだけのマンジュウ本とも言われる遺稿集に大きな感銘を受け、それから有名無名に関係なく、それらの本を分析・研究してきてその鎮魂歌をここで捧げている感じですね。

 紹介されているのはわりと有名な藤村操という「巌頭之感」遺して投身自殺した人
 十六歳ですでに早熟な作家だった県満天雄
 同情心熱い、大正時代の良家の子女宮田千重子
 文壇からも注目されていた天才詩人で、鉄道自殺した清水澄子
 天才的空想力の奥居頼子
 川端康成に惜しまれた、今だ人気のある山川弥千枝
 他、平山千代子、千野敏子、原口統三、松尾太一、哲学少女中沢節子、長沢延子、蛭田昭、
 天才少女画家で「阿寒に果つ」で有名な加清純子(映画にもなったが加清を演じた当時清純派の五十嵐純子はレズシーンから何からかなり体当たり的に演じていた☆)、
 鬱病と差別に苦しんだ福本まり子、
 この中では個人的には最も注目させられた鉄道自殺した小池玲子、
 そして今も人気ある山田かまち、
 愛されたかった哲学的思考の文学少女 井亀あおいなどです。

 この中では山田かまちと山川弥千枝が今だ人気が高いですが、私個人はほとんど無名に近い小池玲子の自殺するまでの遺稿や、同じく鉄道自殺した清水澄子の遺稿、わりと私と生年が近い飛び降り自殺した井亀あおいの亡くなる前の日記などが一番印象深いというか一番胸に迫るものがありましたね。

 どれも自分の10代のぎりぎりの生を賭けた言葉の数々なだけにそれぞれタイプは違いますが感慨深いものがありますね。

 彼ら彼女らに対して文学者・山下武氏が真摯に対峙しているところもよかったです☆