日野鏡子作品まとめ(エルンスター物語以降)-荒野に咲くべき花


イラスト/碧也ぴんく


1992年1月 講談社X文庫ホワイトハート






さてさて。

『エルンスター物語』本編も終わりまして、番外編の出番でございます。


番外編はふたつありまして、まずは『荒野に咲くべき花』。


本編でも大活躍(笑)のレスター王子の両親のお話でございます。


実は、わたくし、これが一番好きでございます。本編よりも、より「どうにもなりません度」が高くて。





さて、どんなお話かというと。



本編では、まわりくどい外堀の埋め方によって、リリアンをゲットしようとしていたレスター王子様の親世代のお話です。

本編より25年くらい前の話? レスター王子が生まれる前の話なので。

つーか、レスター王子って何歳なんだろ。23、4くらいでいいのかしら。



まあ、それはおいておいて。



主人公は、シタの王様ダーハル。25歳独身です。

彼はエルンスターの首都アーロンを包囲し、そんで聖王家のお姫はんを一人もらって嫁にしようと計画してます。


なんでか言うと、先代の王(ダーハルの父)が死んで以来、後見人として彼を手の平でごろごろさせている叔父から権力的に独立するため、何かでっかい偉業を成し遂げねばならんからです。


しかも、聖王家の姫を嫁にして子供をこさえとくと、聖王家の王位継承権がシタにもいくらか回ってくるという、一粒で二度おいしい計画です。



ですが進軍中、シタとエルンスターの国境にある標高の高い山脈で、ダーハルは毒を盛られて卒倒。時間と資金をかけまくった計画をあやうくご破算にされかけます。



でもまあ、なんとかかんとか回復して、アーロンを包囲。国を占領&略奪する代わりとして、お姫はんをもらいます。



それが、レスター王子の母であり、リリアンの伯母でもあり、エルモア女王の姉でもあるサラです。



このサラは美女ではあるんですが、どーしよーもなく気性が荒い(笑)。

なので、ちっともダーハルに心を許しませんのです。


サラにしてみれば、自分の意思関係なく、デーン神のご神託によって戦利品みたいにして引き渡されたんだから、仕方ないっちゃー仕方ないんですけども。



あとこのひとは、シタに引き渡される前に、「戦利品」の価値を下げようと、好きでもない幼馴染の男と寝ようとするんですね。

それが彼女のできる唯一の抗いというのが切ないです。ちなみに未遂に終わって、追ってきたル・シュトーに捕まります。


本編でもあったように、ル・シュトーはサラに惚れていて…、でも、敵王に渡さないといけなくて、神託受けたの自分でって……、

ほんとにもうどうにもなんねー!!(笑)

大好きよ、こういう話!!


んで、シタに帰国。


毒を盛った犯人探しを始めますが、上手くいかない。


それどころか、先王が死んだときに起こった反乱以来ダーハルの側に仕えていて信頼しまくっているルーファスという金髪イケメンが、どうもその犯人に関わりがあるのでは、というタレコミもあったり、その反乱のときの残党がウロウロしているとか、まーなんやいろいろあって大変です。

とにかくこの人、味方がいない。敵を作ってしまう本人が悪い感じですが。


なので、サラに癒しを求めようとするんだけども、そうはいかんざき!(何だって?)


側近のイケメンはイケメンで、反乱時の残党と組んでるんじゃねーの?!的な疑いも濃くなります。ダーハルはもーへろへろになってしまいます。


でも、そんな彼に、次第にサラは心を寄せてくれるようになります。
サラとは初夜(これがすごい)以来、ずーっとビミョーな関係だったんですが、やっぱり疲れた男の背中というものは女に効くんでしょうかね(笑)。


で、結局毒を盛った犯人は分からないんだけども、サラとは心が通じ合ってきたし、ダーハルはご機嫌です。


でーすーがー。


彼女の部屋に行くと、サラは早速、若い医者とベッドの上でごろごろと浮気してます(笑)。


「なんじゃそりゃー!」とダーハルはカンカンですよ(そりゃそーだ)。

サラをごろごろ死体にしようとしますが、実は妊娠していたことが発覚。

サラを殺さずに置いておきますが、もう触れることはないだろうと。
このシーン、これがもう…どうにもなんねー!!

大好きよこういう話!!(もう一回言う)


「もう、バカなんだからあんたたち!」といいたくなります。

ほんとにねー、もう。「どうにもならないこと」に抗って、ますますどうにもならなくなっていくのでございますね。



以上、終わり。


ほんとにねーこのひと…。サイラス、ユーリア、コンドラ王とあわせて、むくわれない四天王ですよ。
でも、3人は理解してくれるリリアンやリカードがいたけども、ダーハルはな~、いろんな意味で涙がとまりません。

フツーだったら、「ウフフ、わたしのかわいい子ウサギちゃん。今日も一日頑張ったわね、偉かった偉かった」って頭なでなでしてくれるよーなキャラを配置するとか、もしくはサラがそうだとか、「いやー、今の僕は叔父さんがいてくれてこそですよエヘ!」とか言えるオトナなキャラにするとかなんでしょうけど、そうはいかんざき!!(??)なのが、日野流なのでしょう。




ダーハルもサラも、オトナになりきれていない子供なんですよね。マダオ(まるでダメな王様(男))とマダオ(まるでダメな女)同士で。



そういうのが、サラの初恋相手が二次元キャラというか(笑)、物語の登場人物だとか(「初恋が二次元じゃ駄目ですか?!」だ)、ダーハルの愛妾が、ボヨヨンボヨヨンな豊満年上女だとか、そういうところに出てるんだなあと。



情況を受け止めて、それからなんとかしてクリアしようとしたリリアンのほうがオトナです。
リリアンはかっこいいわ、うん。


つーかダーハルって、本編で何やってるんだろ~。サラは、レスター王子が「物心つく前に死んだ」と本編で言ってますが。
レスター王子は「王子」なんだから、王様は健在なはずなんですけどね。





日野鏡子作品まとめ(エルンスター物語以降)-アイリーンの剣


イラスト/碧也ぴんく


1991年11月 講談社X文庫ホワイトハート





んで、いよいよ最終巻『アイリーンの剣』です。



える☆すたの「もってけ! アイリーンの剣」です。どっちか言うと、「かえして! アイリーンの剣」かも知れませんが。

…どうでもいいですね、うん。


こんなん、もう誰もわかってくれないんじゃ…(笑)。


『らき☆すた』アニメもあれ2007年ですもんね。

この記事の元記事も書いたの2009年だったり…(遠い目)。

しみじみ。



さて、そんなことはおいておいて。




そんなお人おられるかどうかですが、「これから『エルンスター物語』読みます」って方は、スルーを。ラストはどうかご自分の眼で。




さて、コンドラ王とリリアンの結婚式から半年。あいもかわらずセックスレスなふたりです。


さっさと抱いてやったほうが、リリアンもモヤモヤが晴れる気がしますが、それがコンドラ王なりの彼女への罰か、それとも父性愛か、ってとこでしょうか。もしくはローティーンじゃないと中略もしくはドM以下略




半年は平穏に過ぎて行ったようですが、エルンスターの西南部の方では事件が勃発したようです。


うさんくさいニセ預言者が現れ、しかもそいつの言ったことがどんぴしゃで当たったため、信者が増える一方、それだけならまだいいんですが、民衆のハートをがっちりわしづかみした預言者は、レスター王子こそ救世主みたいなことを言い出した様子。

まあ、後ろで操ってるのは、モチロンレスター王子なんですけど。


彼のダークな創世の力は、そこまでの威力を持ち始めているということです。



それプラス、前巻でちらりと出てきた、ガイコツの古武士集団が、アーロンの城壁にまでやってきます。


コイツラは、やってもやっても復活するんですが、どうもリリアンの創世の力を使うと完全に動きを止められる?みたいなので、ここからずーっとリリアンのガイコツ集団との戦いが始まります。



ですが。


毎日毎日せっせと伝家の秘剣アイリーンの剣でガイコツ処理をしますが、あるとき、先日倒したはずのガイコツが復活しているのを見て絶望してしまいます。


つまり、彼女や数少なくなってしまった兵士がやってきたことは、全くの徒労だということですよ。



まあ、そういう大変なことてんこもりですが、ここへ来てコンドラ王との仲が深まります。それでもセックスレスですけど。

彼がずっと自分を見守ってくれてたことに気付いて、「リカードに出会わなかったら…」とリリアンは号泣ですよ。


そういう、心の通い合いがせっかくあったのに、コンドラ王は、リリアンが創世の力を暴走させて壊した城壁の下敷きになって、顔半分潰されてあっさり死にます。



な、なんかもう、読んでいるこっちが呆然としてしまう。コンドラ王、すごいエエ人やのにこんな死に方…。

でもまあ、彼のことなので、こーゆー死に方に自らニヤニヤしながら逝ってそうですが(笑)。


リカードはリリアンの「恋人」で、コンドラ王は、同じ聖王家の血を引き、眼に見えないものに縛られて、でも、それを乗り越えていこうとする「同志」だったんだろうなあ。



この最終巻は、コンドラ王を始まりとする、死体がごろごろな巻です。


そうこうしていると、リリアンの元にリカードがやってきます。これも、レスター王子の用意した絶望の一部です。


リカードによると、この作品のヒロインキャラ(わたくし的に)ユーリアが死んだとのこと。オレイカルコスの塔で見たことは、ほんまやったということです。

オレリーアナでは、死者は帆船に乗せて海へ送るんですが、どうもユーリアの葬儀の時には凪だったようで、勢いをつけるために、身内のどうでもいい男が、ユーリアを乗せた帆船を足で押し出したとかで、リカードはそれをすごく悔しがります。なんやモウせつなすぎる。

わたくしめはモー、このエピソードが『エルンスター物語』で一番キュンときます。

コンドラ王もユーリアも、サイラスも、その人生が全く無意味な徒労であったかのような最期なんですよ。




どんどん悪いことは起こります。



塔っぽいとこから逃げてレスター王子側に付いた悪神官ル・シュトーの手によって、リリアンとリカードは王子のいるシタのお城へ連れて行かれます。


外堀が完全に埋まった王子はモーウッキウキですよ。


牢屋につないだリカードの前で、リリアンをちゅぱちゅぱしかけたりするんですが、しかし、ほんの些細なリカードの一言により、彼を殺してしまいます。


この世に自分をとどめてくれる唯一の存在のリカードを失ったリリアンは、レスター王子をアイリーンの剣で倒します。


前巻で出てきたように、リリアンとレスター王子は表裏一体の関係なので、レスター王子が死ぬと同時にリリアンも死にました。




終わり。




え?(笑)
いや、ほんまに。



レスター王子をやっつけて、リカードと一緒に東の大陸を目指すわけでもなんでもないんですよ、コレ。




もともとは、大陸を焦土と化すために降臨してきたデーン神の意思を継ぐものとしてリリアンとレスターが用意されていて、多分、レスターがオンスイッチでリリアンがオフスイッチだった、と思えばいいんかと。


「創世の力」とは、「世界を滅ぼす力」だったのですよ。



そう思うと、好き勝手やってたように見えるレスター王子も、運命という不可抗力に操られていた存在だったってことですね。



だいたい、敵の悪役って、その「悪役たる所以」ってのがあると思うんですけど、例えば、復讐とか、支配欲とか、変態的な快楽とか。

このひと、そんなん何もないですね。


なんやもう、創世の力のお人形さんもいいところなんだわー。


本編&番外編通しての、一番の悲劇的な人かも。



そして。



リリアンの姉や妹、ローリーやエルモア女王を始めとした人々は、船で東にあるという大陸を目指しました。

悪の大国となったシタも、もともとは、はるか西から船団を組んでやってきた人々の末裔なのだとか。


歴史は、場所と時間を変えて、繰り返されるのでしょうね。



さて。

本編はこんな終わり方です。


リリアンが作中で繰り返す、


「どうにもならない情況をどうにかしようとして、無駄に終わった人間の努力はどうなるのか」


という言葉が、『エルンスター物語』のキモなんだろうなあ、と思います。

一見、絶望的な答えしかなさそうですが、

世の中のものは全部どこかで繋がっているので、無駄に終わったと思われる努力も、どこかで何かに繋がるとは思うのですよ?


…というのが、(ローティーンから大人になった)わたくしの意見でもあります。



しかしこの一見絶望的とも思える考えは、日野さんのその後の作品にもず~っと受け継がれていると思います。





日野鏡子作品まとめ(エルンスター物語以降)-ラ・テルビントの妃


イラスト/碧也ぴんく


1991年9月 講談社X文庫ホワイトハート





さて。


いよいよお話も佳境に入ってきまして、どんどんスゴイ展開になっていきます。

4巻のタイトルは『ラ・テルビントの妃』。



前巻で、塔に幽閉されたコンドラ王を救出したリリアンは、いよいよコンドラ王と結婚することになりました。今までは、悪神官ル・シュトーのイヤガラセの一環で、のびのびになってたとかなんとかかんとかで、とにかく今度は逆に悪神官が塔っぽいところに幽閉されてますもんで、いよいよ華燭の典が執り行われるんです。

ちなみに、イヤガラセの一環に、「嫁をもらうまでは正式な王にはさせません」というものがありましたもので、リリアンと結婚することにより、コンドラ王はやっとこさ正式な聖王様になるということらしーです。

んで、タイトルにもありますように、コンドラさんは正式な聖王「ラ・テルビント2世」(1世は母方の祖父)になり、リリアンもそれにともなってそのお妃になるんですね。


ところがぎっちょん!


婚礼前夜に、シタの兵士っぽいのに、リリアンはさらわれてしまいました。


…なんですが、実はコレ、シタの兵士を装った「高原」の人でした。
しかも、コンドラ王の元愛人のロリキャラ・イヴの兄クルトでした。


この高原の人たちというのは、なんとデーン神の末裔でもあり、少しながら創世の力も使えるらしいです(修行すれば)。

普段は高原で牧歌的な暮らしをしていますが、裏社会の闇ネットワークみたいのを持っていて、エルンスター聖王家を、それと分からないように操っているとか。

リリアンのお母さんがバドリジアに嫁に行ったりしたのも、この人たちが裏で暗躍してたかららしいです。



さて、表向きは、シスコンの兄クルトが、妹をオモチャにされた恨みからエルンスターとシタを戦争させようとリリアンをさらってきたんですが、実はそう思っているのは彼だけで、その他の高原の人たちは、リリアンに創世の力の使い方を教えるために、彼女を高原に連れてきたんです。


なので、それまでアイリーンの剣や原石を光らせることしかできなかったリリアンは、本格的な力の使い方を教えてもらうことに。

そして、デーン神が降臨した元々の目的が、地上を焦土と化すためだったということを知ります。



途中、リカードと再会し、彼に、犯人はシタではないということをコンドラ王に知らせに行ってもらったり(ドキドキの対面)、なんだかいろいろあったりして、無事エルンスターへ戻ることになります。


ちなみに、高原では、子供が生まれると、その日によって決まった名前をつけるようです。昔、フランスはその日によって決まってる聖人の名前をつけてたとかって訊いたことありますが、そんな感じかと。
えー、リリアンの場合、「レスター」になるそうです(笑)。うぎゃー!!


さてさて。
邪魔が入りましたが、リリアンにとっては大してめでたくもない結婚式が始まります。


ですが、あちらこちらでは不穏な現象が起きているようです。

再会できた妹のクレメンティアや、ローリーからの手紙によると、どうやら骨だけの落ち武者みたいのが墓からどんどんよみがっているとのこと。あのレスター王子の仕業じゃねーの?!ってウワサが。
怯えた人々は、船で大陸を脱出しようとしていて、クレメンティアも、今一緒にいる旅の一座とともに、東の海へ旅立つようです。東の方には、ウソかホンマかは分からないけれど、住める大陸があるらしいです。

リリアンも、一緒に行かないかと誘われますが、彼女はレスター王子を倒さないと、どこへ行っても一緒だという決意から、妹を送り出します。
うーん、ここから、別れが怒涛のごとく始まっていくんですよね。


んで、大してめでたくもない結婚式が終わって、初夜なんですが。

婚礼の儀式で、デーン神の像までの規定の歩数10歩のところを、「魔」の数字9歩でたどり着いてしまったコンドラ王は、意外な行動に出ます。


1・昼とは全く違った。
2・役に立たなかった。
3・逃げた。



どうでもいいですが、正解は下の方に(笑)。





えー、答えは「逃げた」です。

この逃げ方がきもい(笑)。「魔」にとり付かれたから?
コンドラ王って、やわで優柔不断ってな感じでリリアンはとらえてますけど、変なところでしたたかなところがあったり、闇を抱えていたりするキャラです。今、再読して考えると。


さて、レスター王子のコーナー4巻編(なにそれ)。

毎回、回りくどい方法で外堀を埋めて、リリアンをゲットしようとニヤニヤしているレスター王子ですが。
今回は、結婚式のど真ん中に、疾風とともに登場。「お前と私は両極で表裏一体で分かつことのできない存在だ」と意味深な言葉を残して去っていきます。
うん、これと、リリアンの高原ネーム「レスター」が重なっていくんですね。

いよいよ次は最終巻です。



日野鏡子作品まとめ(エルンスター物語以降)-アーロンの神官


イラスト/碧也ぴんく


1991年7月 講談社X文庫ホワイトハート



第3巻は、リリアンがエルンスターという国の王妃様として強制連行されていくというお話です。


まず、このエルンスターという国の説明をしましょう。

元々は、デーン神という神さまが天界から地上へ降臨してきたことから始まります。リリアンがいる時代よりも、多分500年以上昔の話です。


そのデーン神は、地上の人間の娘リアと恋仲になってしまい、「創世の力」の秘密を教えてしまうんですね。んで、天界の怒りをかってしまい、戻れなくなり、リアと夫婦になって地上で暮らすこととなります。


二人の間に生まれてきたのがアイリーン(男)。半神半人の彼が、エルンスター聖王家の始祖です。


アイリーンはデーン神から創世の力を受け継いでまして、民衆からスゲースゲー言われるわけです。大陸の各地には神殿が設けられ、その創世の力の恩恵を人々は浴びるように受けます。

ですが、人間の欲は際限がなく、とうとう天界は怒り狂って地上に罰を与えます。


それが「大破壊」


なんやもう、地上は災害やら天変地異やら疫病やらでエライことになったとかなんとか。

その大破壊後、エルンスター王家には、創世の力を持つ子供が滅多に生まれなくなり、しかも女ばっかり生まれるわで、威厳は落ち、各地で新しい支配者が誕生して大陸は分裂。


なので、血を濃くするために従兄弟婚を繰り返し、たま~に生まれてくる創世の力を持つ子は、問答無用で聖王家に。リリアンの母方の祖母も、彼女と同じく創世の力を持ったために、聖王妃にさせられたとか。


とまあ、こんな感じで、リリアンも問答無用でエルンスターへ連れて行かれます。


第3巻のタイトルは『アーロンの神官』

アーロンと言うのは、エルンスターの首都の名前です。


エルモア女王危篤の知らせでブロニジアに帰ったリリアンを、エルンスターの使者が早速待ち受けてます。


元老院の第一執政官モラールというおじさんなんですが、彼によるとモーとりあえずさっさとエルンスターに来てくださいよ、って言うか来いってな感じなんですね。なんか知らんけど、儀式の日程がもう決まってるので、とにかく急いでるみたいです。


んで、なんとか無事にエルンスターに着いて聖王に謁見します。

リリアンより少し年上の王様はコンドラ様といいまして、優しげではあるけれどもすごく頼りなさそう。リカードとは全然違うなあ、はあ~憂鬱と思いながらも、コンドラ様になぜか親近感をリリアンは覚えます。


んで、その謁見のさなか、日蝕が起こります。もう不吉や不吉やで大パニックですよ。
実は、ブロニジアで急かされたのも、儀式と日蝕を重ねさせるためだったんですね。
これはデーン神の怒りじゃ~みたいな感じの茶番を仕組んだのは、神官ル・シュトー

タイトルの『アーロンの神官』ってのは、この人です。


この人もうかなりの歳なんですが、実は若い頃、リリアンの伯母でもあり、レスター王子様のお母さんでもあるサラ姫に惚れていたんだそうで。

でも、サラ姫は、デーン神のご神託によってシタの王様に嫁にやられたので、それ以来、ル・シュトーは聖王家に恨みを持って30年、長い年月をイライラしながら過ごしてきたんですって。


さて、この悪神官を始めとする、利権やいろんな思惑を持つ神官派との戦いに明け暮れる毎日が、アーロンでは待ってたよってな感じです。



んで、エルンスターに来てからというもの、料理に虫盛られるわ、ベランダの手すりは緩められてるわ、神官派(と思われる輩)からの「できれば死んで欲しい」的なイヤガラセがヒドいので、ずっと多忙だったコンドラ王の静養もかねて、リリアンたちは離宮へ出かけます。



つーか、向こうからムリヤリ聖王妃として連れてきたのに、ひどいですわ。
規律とかルールとか、しきたりや血筋といった眼に見えないフワフワした「どうにもならないもの」に、リリアンをはじめ、誰も皆が縛られています。



離宮でも、できれば死んで欲しい的イヤガラセは続きまして、リカードを騙ったワナにリリアンはうっかりはめられて、海の近くの洞窟で水責めに遭いそうになります。

が、運悪く、リリアンの後をつけてきたコンドラ王のほうに被害が行ってしまって、彼は毒魚の刺にやられて死の淵を彷徨います。


簡単にワナにかかってしまった上、コンドラ王まで巻き込んでしまったリリアンは、自分がなんとかせなあかんと、毒に効く薬草を取りに、その薬草が自生する山に向かいます。

んで、無事薬草をゲットするんですが、帰路、いきなり襲われます。


相手は、なんと、コンドラ王の元愛人・イヴ。15歳くらい? 

彼女は、リリアンがアーロンへ来る際、コンドラ王によって閉鎖された後宮にいたそうです。多額のお金を持たせて兄のところへ帰した、となっていたはずなのですが、そこがせつない乙女心。複雑な思いから、リリアンに斬りかかります。



『ラブやん』で書いてあったんですけど(ここで『ラブやん』出すか)ロリコンの人って、父性愛が行き過ぎた人だとかなんとか。そういや、コンドラ王のリリアンに対する態度も、どちらかというと「娘を見守るお父さん」な感じもします。
リリアンが彼に感じた親近感も、どちらかと言うと「家族」という感じなんでしょうね。


まあ、おいておいて。

薬草のおかげでコンドラ王は九死に一生を得るんですが、今度は、リリアンが山からの帰りの途中で別れたイヴの行方を捜して留守をしている間に、悪神官の手によって卑劣にも塔っぽいとこに幽閉。リリアンは、見つけ次第殺すという命令が。


今、王様に死んでもらったら、聖王妃になって権力を得、レスター王子をぶっ潰してリカードと一緒になるっていう計画が駄目になる、ってことで、数少ない味方、第一執政官モラールと救出大作戦です。


大騒ぎになっている塔の前に集まっていた民衆の面前で悪神官をやっつけて、王様を無事救出。
国民から「ぜひ早く御婚姻を!」と言われて、それはちょっと早い話だわ、と3巻は終わります。


3巻を機に、リリアンは男スイッチが入って、世界のお助けマンと化します。
『エルンスター物語』って、主人公がリリアンで、ヒロインはユーリアだと思う。うん。
…リリアンとユーリア、今聞くと、「?!」とおもってしまう。リリアンと百合なだけに。



日野鏡子作品まとめ(エルンスター物語以降)-オレイカルコスの塔


イラスト/碧也ぴんく


1991年5月 講談社X文庫ホワイトハート





前巻『デーンの娘』で、初恋の人サイラスを悪徳王子レスターに殺されたリリアンが、少しずつ立ち直ろうとしているところから始まります。



シタのレスター王子との戦いで、伝家の秘剣アイリーンの剣を輝かせ、エルンスター王家伝来の創世の力を操れるということが発覚したため、エルンスターから「聖王妃に」というお誘いというか強制連行しようとする使者が来そうなので、それから逃れるためにも、エルモア女王の勧めで、ローリーとジャクシイとともに、南側にある商業国オレリーアナの学院へ留学することに。



2巻のタイトルは『オレイカルコスの塔』。



このオレリーアナで、リリアンはリカードという青年と出会います。

サイラスとは違って、ちょいワイルド系(多分)。


でも、どこかサイラスと似通ったところを発見したり、この人なら、自分の運命を壊してくれるんじゃないか…、と、惹かれあいます。


リカードは、オレリーアナを治めている大公の息子なんですね。んで、しっかり婚約者もいる。


それがユーリアという、彼の幼馴染で、オレリーアナ一の大商人のお嬢様で、清楚な美人で、病弱で、巫女をやっていて、ポニーテールで、肩マスコットまでいて、おまけにツンデレ、という怖いものなしのヒロインスペックの娘さん(笑)。


すげー。こんなキャラ、そうそういませんよ。


コレが少年サン○ーとかの連載まんがだったら、リカードの家と隣同士で、毎朝起こしに来てくれそうです。



しかし、これは『エルンスター物語』。そうはいかんざき!



まあ、それはおいといて。



彼女とリカードとはここ数年、どうもしっくりいかない仲に。


リカードによると、なんか澄ましてツンツンし始めて、つまんねー女になった、昔はこうじゃなかったのに、とかなんとか。


フフフ、それを21世紀では「ツンデレのツン期」というのだよ。


20世紀のライトノベルには分からぬことだろうがな…ククク(なにをえらそうに)。


大公の息子と大商人の娘が一緒になると、オレリーアナの商人達はオレによしお前によし皆によし、になりますが(商売的に)、ここへきてよその国のお姫はんと恋仲になって、将来的に一緒になられたら困るんですよね。


んで、リリアンは誘拐されてごろごろ死体にされそうになりますが、拉致現場を偶然見たリカードが助けに来てくれて一命をとりとめます。

これがきっかけで、リカードとユーリアの間は、ますます複雑に。



ユーリアは、身内の非礼を詫びるためにリリアンを自邸に招き、オレイカルコスの塔の話をします。


その塔は、数百年前にオレイカルコスという石工が造った塔で、内部は二重の螺旋階段になっており、その階段を上ると、自分の過去現在未来が見えるとかなんとか。


ユーリアは数年前、その塔に挑み、未来の自分を知ってしまうんですね。

その未来というのは、十八歳くらいの自分が吐血して死んでしまうというもの。
あと数年、という自分の死期を知ってしまった彼女は、婚約者のリカードを遠ざけるために、冷たく接するようになったとか。ひゃー、せつない。


んで、自分と仲のよくないリカードとリリアンが深い仲になるのが面白くないローリーと、彼のことが好きなジャクシイとの間で、なんだかややこしい恋かなんだかよく分からない揉め事が起きたり解決したり、行方不明だと思っていた妹クレメンティアと感動の再会をしたり、リリアンはオレリーアナでつかの間の青春を送ります。


もちろん、オレイカルコスの塔にも登ります。

登ったきっかけは、かなり衝動的なものだったんですが、リリアンは自分の過去現在を塔の中で見ます。そして、未来を見ることのできる最後の数段に足をかけて、そこから段を踏み外して下まで転げ落ちます。



結局未来だけは見られなかったリリアンの元に、突然ブロニジアからマホバ将軍が迎えに来ます。

なんでも、エルモア女王が危篤だとかなんとか。


でも、ブロニジアに行ってしまうと、多分、もうオレリーアナには帰って来れずリカードにも会えず、ブロニジアの宮殿で待機している使者によって、聖王妃になるためエルンスターへ連れて行かれるだろう、という運命というか不可抗力に逆らうため、リリアンとリカードは、「この下で誓いあった恋人達は、必ず結ばれる」というトーアの樹の下で、お互いの手首を切って(!)、誓い合います。


二人で逃げよう! と言ってくれるリカードですが、リカードと一緒になるには、まずは自分の血筋とヘンタイ王子レスターと戦って勝って、それからじゃないとどこまで逃げても同じだから…、とリリアンはブロニジアへ帰ります。


というような感じで2巻は終わりです。

次回、いよいよ塔っぽいとこに幽閉された婚約者を助けに行くんですが、2巻と3巻とでは、リリアンのオットコ前度の違いが(笑)。エッライたくましく。


こんなわけのワカラン紹介ですが、気になった方は古書店か電子出版でどうぞ。