イラスト/碧也ぴんく
1992年4月 講談社X文庫ホワイトハート
『エルンスター物語』もいよいよ最後の1冊となりました。
タイトルは『南を指す魚』。
素敵なタイトルだ…。
3つのお話が収録された短編集となっております。
まず一つ目は、ローリーが主人公の『シドの竪琴』。
今までほとんど説明していませんが、ローリーはブロニジアの王弟の息子で、本編では、リリアンと仲がいい人物として書かれています。
跡取り娘であるシャスールが亡くなったあと、彼がブロニジアの王位に一番近いのですが、自由を好む性分でして、ヒステリックで上昇主義の母親とはうまくいっていません。
竪琴の名手である彼は、前々から伝説の竪琴弾きシドが遺した竪琴を探す旅に出たいとフツフツ考えていたのですが、いよいよ出発する、そんなお話です。
途中、その腕を妬まれて因縁つけられたり、とある領主の娘のロリキャラとイチャイチャ(??)したり。
さて、彼は無事シドの竪琴を手に入れられるのか?!
ってな感じです。
二つ目は、リカードとユーリアの、日野さん曰く「筒井筒ドラマ」(笑)な、『美女と若獅子』。
オレイカルコスの塔に登る前の話で、13歳のユーリアがかわゆすぎる。
短編集としてのタイトル『南を指す魚』は、この話でリカードがユーリアにあげた「指南魚」というものが元になってます。
磁気を帯びた鉄で出来ている小さな魚で、それを水に浮かべると頭が南を指す、というなかなか素敵なものです。
三つ目は、サイラスのお話で『三分の一ほど北へ』。
『南を指す魚』なのに、北へ向かってどーする!!
というツッコミは不可です。
なぜなら、むしろそれを狙っていたかと思うくらい、幼馴染同士がキャッキャウフフな他の二編とは比べモンにならんくらい、魔女の釜の底のように熱くて息苦しい暗い話だからです。
母親が国王に半ば見殺しのようにされ、グレまくったサイラスは、ナイフみたいに尖っては触れるもの皆傷つけたり、いろいろあって人買いの手によってシタに売られます。
で、レスター王子の目に留まって小姓になります。
そして、創世の力を持つ娘を探しているというレスター王子の命により、サイラスはブロニジアに送り込まれ、その後、異母妹のシャスールを毒殺することになる、という話です。
最後の最後がこんな話で終わるんですよ、『エルンスター物語』って。
さて。
長々と続けてまいりました『エルンスター物語』の紹介も、今回をもって終わりになります。
まあ、なんと言うか…、報われない人が多いお話でした。
いんや、「生きることに不器用な人が多い」と言うべきか…。
日野さんの比較的最近の作品を読んでみましたが、それらも「どうにもならないもの」に縛られている人たちがいます。
でも彼らは最終的に、希望があるというか。
まあ、そんなこんなで。
「どうにもならないものをどうにかしようとする」人たちのお話が読みたいと思われた方は、電子出版や古書店などでどうぞ。




