329年。今年は白夜の年。
勇者の服は返還し、久しぶりに山岳兵の制服に袖を通した。

「エーヴちゃん。このあと二人で話せないかな」
「っ………」
「エーヴちゃんだってずっとこのままでいいだなんて思ってないだろ?」
「……うん。子供達がいるから外に出ましょう」

外へ出ると雨が降っていた。まるで俺達の心を表わすように。
「っお父ちゃんどこ行くの?ねぇ、お母ちゃんも!(どこか遠くへ行っちゃう気がする!)」
「じいちゃんっ、ばあちゃんっ!」
「ラヴ、ティモシー。エーヴちゃんと大切な話があるからお留守番を頼むよ」
「っボクもいくっ!」
「大丈夫。お留守してて。ちゃんと帰ってくるよ」
「……わかったわ。ティモシー、お家に帰ろ」
「じいちゃん、ばあちゃん……」
「ありがとう、ラヴ」
「……………」
その間もエーヴちゃんは目を伏せていた。
いつどんな時もニコニコ笑っていたエーヴちゃん。もうずっと笑顔を見てない気がする。

「覚えてる?最初にプロポーズしてくれたのはエーヴちゃんだったよね」
「……忘れるはずないわ。ルイルイからお話聞いていて、ずっとエリーくんに会いたかったんだもの」
「ルイルイ…懐かしいな。元気かな」

『っわたしをエリーさんのおヨメさんにしてくだちゃいっ!』
突然現れた小さな女の子。あの時から、俺達は始まった。
「エーヴちゃんには言ってなかったけど、俺には結婚したい人がいた」
「えっ……」
「って言っても、俺が勝手に思ってただけで…俺が子供だったんだ」
「エリーくん……」
「あの頃の俺は、こんなに人を好きになるだなんて思ってもいなかったよ。エーヴちゃんは、ルイルイが俺に贈ってくれたプレゼントなんだ。エーヴちゃんとの出会いは運命なんだと思った」
失恋をしたあとすぐにルイルイを亡くして、なんの巡り合わせかエーヴちゃんが現れた。
「俺、エーヴちゃんのおじいちゃんに1度だけ会ったことあるよ」
「えっ?おじいちゃまに??」
「エーヴちゃんと出会う前、ルイルイが危篤の時にお見舞いに来てくれてね。少しだけ話したことある」

「あの時はまさかエルナンドさんがエーヴちゃんのおじいちゃんだったなんて全然知らなかったよ。不思議なもんだなぁ…」
「…私もまさか、本当にエリーくんと結婚出来るなんて思ってなかったわ」
「エーヴちゃんのおじいちゃんと俺のおじいちゃんが親友で、その孫である俺達がこうして一緒になって…うれしいよね。ご先祖様達の繋がりが、俺達を出会わせてくれた」
「うんっ…」
エーヴちゃんの声が震える。
「エーヴちゃん。俺と出会ってくれてありがとう。あの時、俺に会いに来てくれてありがとう」
今まで、いろんなことがあったよね。二人でたくさんの思い出をつくってきた。

「自分がもう長くはないことを知った時、正直最初は怖かった。でも悩んで一日を過ごすより、いつもと変わらない生活をして、いつも通りみんなと笑い合える幸せな一日を過ごしたいんだ。俺は残された時間を一分一秒だって無駄にしたくないよ、これからもエーヴちゃんと一緒に笑い合っていたい!」
目を閉じる最期の時まで、後悔の無い人生を。俺はやりきったって思える、胸を張れる人生を。
「っエリーくんごめんなさいっ…!頭ではわかってるのにっ、気持ちが追いつかなくてっ……」
エーヴちゃんを抱き寄せる。震える体を優しく包み込んだ。
「うん…わかってる。俺の方こそ悲しませてごめんね。でももう一人で泣いちゃだめだよ。俺の前で泣いて…」
「うんっエリーくんっ…エーヴはずっとエリーくんのそばにいるわっ」

久しぶりに見るエーヴちゃんの笑顔だった。
いつだってエーヴちゃんの涙は笑顔と共にあった。これからも、エーヴちゃんを悲しませやしない。
「ダンジョンで倒れちゃイヤよ?絶対にお家に帰ってきてね!」
「うん。俺の帰る場所はエーヴちゃんだから」
「エリーくんの帰りを待ってるからね、ずーっと♡♡」
俺、自信があるんだ。残された最後の一瞬まで、エーヴちゃんのことを愛しているよ。

「明日は収穫祭〜♪ラララ〜♪」
「ご機嫌だな、ラヴ♡」

「あれもこれも、ぜーんぶやりたい!!収穫祭も、白夜の日みたいにずーっと朝だったらいいのに!!」
「ハハ、いっぱい楽しんでおいで」
子供の頃、一番好きなイベントは収穫祭だった。前の日からケリーと二人で騒いで、みんなで宝探しして、マトラランチについているオマケのプリンをボリスじいちゃんにおみやげに持って帰った。
(大人になってから全然参加してなかったな…明日は探索が終わったあとにでも久しぶりに参加しようかな)
さあ、もうひと踏ん張り。出来るところまで頑張るんだ。

苦手だった薬師の森も克服。もうケリーに頼らずに済むぞ。
「頼ってくれていいんだぜ〜兄貴〜♪」
なんてケリーの声が聞こえてきそうだけど。

よし!夢だったレベルアップも残りあとちょっとだな!
カンストまであと少し。エリー、よく頑張った(´;ㅿ;`)

ティモシーと宝探しをした後、釣り大会に参戦。
まだまだ子供達にいいところを見せたいぞ!

20歳にして初めての釣り名人!どれだけ俺が探索ばっかりしてたかよくわかるな…
「1位は山岳兵、エリー・ベドフォードさん!」
「やったー!♪」
「ふふ。龍騎士ともあろう方が、子供みたいに喜ばれるんですね」
「根っからの負けず嫌いですから」
「あなたには勝利が一番似合っていますよ。きっと勝利の女神があなたのそばにいてくれるからですね」
「ええ、飛びっきりの勝利の女神が」
神官さんの帽子から微笑んでいる口元が覗く。神官さんにも試合でたくさんお世話になったなぁ…今までありがとうございました。

「エリーくん!釣り名人おめでとう!♡」
「エーヴちゃん!来てくれたんだ」
「当たり前でしょ♪エリーくんの勇姿を見逃す訳にはいかないもの♡」
「ふふふ」
「どうしたのエリーくん?」
「いや?俺にはやっぱり勝利の女神がついていてくれてるんだなぁって」
「私?私のことねっ!♡♪」
かわいいかわいいエーヴちゃん。ここで愛を誓い合ったあの日から、気持ちは何一つ変わっていない。

「エリーくん、もうちょっとそっち行ってもいい?」
「うん。おいで」
「♡♪」
エーヴちゃん。俺、一つだけ心残りがあるよ。エーヴちゃんを残してこの世を去ること。
どうか、許してほしい…ごめんね。

「お父ちゃんっ、これ食べて探索頑張ってね!」
「おーっありがとうラヴ!」
「ふふふ」
「どうしたのエリーくん?」
「いや?俺にはやっぱり勝利の女神がついていてくれてるんだなぁって」
「私?私のことねっ!♡♪」
かわいいかわいいエーヴちゃん。ここで愛を誓い合ったあの日から、気持ちは何一つ変わっていない。

「エリーくん、もうちょっとそっち行ってもいい?」
「うん。おいで」
「♡♪」
エーヴちゃん。俺、一つだけ心残りがあるよ。エーヴちゃんを残してこの世を去ること。
どうか、許してほしい…ごめんね。

「お父ちゃんっ、これ食べて探索頑張ってね!」
「おーっありがとうラヴ!」
「ラヴね、探索を頑張ってるお父ちゃんが一番好き!かっこいいの!」
「ありがとう♡お父ちゃんもそう思う。自分が自分らしくいられるんだ!」
「ふふふっ!♪いってらっしゃい、お父ちゃん!♡」
「いってきます!」
「ありがとう♡お父ちゃんもそう思う。自分が自分らしくいられるんだ!」
「ふふふっ!♪いってらっしゃい、お父ちゃん!♡」
「いってきます!」
変わらない当たり前の毎日を過ごす。それが一番の幸せなんだ。
俺はもう死から恐れない。
☆☆☆
エーヴちゃんと仲直り出来てよかった( ;o;)でもエーヴちゃんもつらいよね…
エリー20歳、エーヴちゃん17歳。ほんとならばまだまだ一緒に過ごせた時間はあったはず。
次回、エリー編最終回です。