昔、父さんが言っていた。
『女の子は大好きな人と結婚して家を出て、大好きな人の子を生むことが幸せなんだ』と。
なんでも、ミリおばあちゃんの言葉なんだそう。いつかアタシにもそんな日が来るのかなーなんて軽く考えてた。そんなの、ずっと先のことだと思ってた。
だって、アタシの生まれた家は、ここしかないから・・・・

『──────』
『────ンチャ、今日からよろしくね☆それにしても大きい家だな〜!』
『アンタを見てると不安になるわ。山岳兵としてちゃんとやってけるの?そんなお気楽さんで』
『ふふ!だいじょーぶ!楽しみだな〜山岳兵の生活!♪』
『まったくもう。そういうところがお気楽だって言ってるのよ…ふふ!』
誰…??アナタ達は誰なの?
山岳兵の制服を着てる……なんとなく、見覚えがあるような……
『イェニー!鉱石集めは終わったのー!?』
『もう終わらせたよ母さん。他に手伝うことある?』
『まぁ仕事が早い!お前は優秀な山岳兵になるわ!なんてったってアタシの息子だもの!ボリスに似なくてよかったわ〜』
『アハハ…(口ではああ言ってるけど父さんのこと大好きなんだよなぁ)』
また新しい人が出てきた……待って、イェニーって…イェニーおじいちゃん!??写真でしか見たことないけど、あの眉毛は父さんと一緒だもの!

『そろそろ山岳リーグに出場させてもいいと思ってるの。跡継ぎも欲しいし嫁探しもしないとね〜!とりあえずおめでう!イェニー!』
『ありがと。母さん…』
『ボソッ(アランチャはああ言ってるけど、あんまり気負っちゃっダメだよ、イェニー)』
コクッ。(この家は僕にかかっているんだって思うと、自信がなくなってくる。一人の女性を幸せに出来ない奴が、家族を守っていけるのか…?みんなは僕に期待しているけど、僕にそんな資格なんてないんだ)
(あにき、元気ない…この間恋人に振られたばかりだもの。無理ないわ)
イェニーおじいちゃん、悩んでいたの…??そうよね、跡取りだといってもまだ若い青年。不安があってもおかしくないわ。

『ミリのお名前はね、ミリってゆーの!♡♪』
『知ってる。さっきから自分でミリミリ言ってるもの』
『ええ!?なんでわかるのー!?コーネリアちゃんってもしかしてエスパー!?☆すごーい!♪』
(年上のくせに人の話全然聞かないわ…)
ミリって…このちっちゃい子、もしかしてミリおばあちゃん!??おばあちゃんなのにかわいいー!!
ミリおばあちゃんは、小さい頃からこの家に出入りしてたのね。

『ミリ、お願い!アニキを助けて!』
『わ、わかったわコーネリアちゃん!ミリがイェニーさんの凍った心を溶かしてあげる!イェニーさんのお嫁さんになるのは絶対ミリだもん!』
ミリおばあちゃん、すごい自信…。でも、イェニーおじいちゃん、楽しそうに笑ってる。ミリおばあちゃんはイェニーおじいちゃんを救ってあげたのね。
『ミリちゃん、僕と結婚してください!ミリちゃんのいない人生は考えられないんだ!』
『イェニーさん…!!』
(ずっとずっと欲しかった言葉。私だってイェニーさんのいない人生なんて考えられないんだから!)
ぐすっ……二人が幸せになれてよかった、本当によかった。

『アタシ、パスタ嫌いなのよね』
『ガーーーン!!』
こ、こわい…これがいわゆる嫁姑の関係??山岳兵の家同居しないといけないから、こういうことは今までたくさんあったんだろうな。あ、でも……
『ミリも自分の意見を下げるつもりありませんっ。お義母さまには気を遣いたくないの。これからもいっぱいケンカしましょう!」
ふふっ!ミリおばあちゃん、ひいおばあちゃんに全然負けてないわ。
『ミリさんが娘になってくれてよかったわ、ありがとう』
『お義母さま〜♡♡』
二人とも幸せそう。色々口喧嘩してたけど、それだけ二人の間には絆があったのね…。

『イェニーさんっ、私達の、赤ちゃんだよっ…』
『うん、うんっ……』
『うん、うんっ……』
くりくりお目目に凛々しい眉毛…この男の子は父さん!??父さんにもこんな時代があったんだ!
『あうー』
こっち見て笑った!??かわいいっ!!♡

『こらエリー!びしょびしょのまま家を走り回らなーい!!』
『わーい!レインスプラッシュー!♪』
父さんたらヤンチャすぎ!!(笑)さすがのミリおばあちゃんもクタクタになってるわ。

あ!こっちの男の子はケリーおじちゃんだわ!二人ともかわいー!!
『でしょう?寝てる時は二人とも天使みたいに可愛いんだけどねぇー』
うんうん……って、え??
『え??私、今誰かと会話してたような……ブルッ!気のせいよね、うん気のせい!』
気のせい!気のせい!

ひいおばあちゃん、あんなに元気そうだったのに…こうやって、別れはやってくるのね。
『エリー、これからのべドフォード家はエリーにかかってる。あとは頼んだからね』
『うんっ…任せてよ、べドフォード家は俺が守るからっ…』
『うんっ…任せてよ、べドフォード家は俺が守るからっ…』
父さんっ……。今のアタシと同じくらいの年なのに、父さんには責任や覚悟がたくさんあったのね。

『ここに座ってると、色んなことを思い出すんだ。祖父と祖母が生きていた頃、父さんと母さんが生きていた頃…。生きているうちに見せてあげたかったなぁ……』
『…きっとみんな、天国から父さんのことを見てるよ。大丈夫、父さんの今までの頑張りは絶対伝わってる』
(俺も早く父さんの抱えているものを背負えるようになれたらいいのに…いや、なるんだ)
『…きっとみんな、天国から父さんのことを見てるよ。大丈夫、父さんの今までの頑張りは絶対伝わってる』
(俺も早く父さんの抱えているものを背負えるようになれたらいいのに…いや、なるんだ)
イェニーおじいちゃんから父さんへ、こうやってバトンは繋がれていったんだ……。

『エリーくん、赤ちゃんが出来たの♡』
『ほんとっ!??やったーー!!ありがとう!エーヴちゃん!!♡』
『うれしいね~♡♡』
『うれしいね~♡♡』
(守るものがまた増えた。俺はもっと強くならなくちゃいけない)
若く希望に満ち溢れた父さんと母さんを見てるだけで涙が出てくるわ。父さん…どうか無理だけはしないで。

『これは、我がベドフォード家にずっと引き継がれてきた儀式だ。エリー、お前はきっと強い山岳兵になる』
すごい…話でしか聞いたことなかったけど、これがあの家督継承の儀…初めて見たわ。
『エリー・べドフォード、この家の代表として恥ずかしくないよう、誇り高き山岳兵として生きていくことを誓います!』
『エリー・べドフォード、この家の代表として恥ずかしくないよう、誇り高き山岳兵として生きていくことを誓います!』
(もっともっと強くなるんだ!俺は龍騎士になる!)
一歩一歩、確実に前へ進んでいく。父さんは眩しいくらいすごい人だったんだね。
『兄貴、べドフォード家のことは頼んだよ。俺もこっちで頑張るから。兄貴は絶対勇者になって、最後はバグウェル倒してよね!』
『おう、任せろ』
(俺にはみんなの思いが託されてる…みんなの分まで俺はエルネア国1の戦士にならなくてはいけない。見ていてくれ、ケリー。 俺達、たった2人の兄弟─── )
(みんな、安心してくれ。ベドフォード家は、俺が守っていく)
☆☆☆
ベドフォード家スペシャル。大好きなベドフォード家を書けるのもあと少し・・・

