新聞解説よりわかる!2014年税制改正大綱「簡易課税制度の引き下げ」の解説 | 歌う税金教室  税理士冨永英里のオフィシャルブログ

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こんにちは、こんにちは、商工会議所、出版社・テレビなどメディアからオファーのある税理士ーの冨永英里です。



2014年与党による税制改正大綱、
今日のテーマは「簡易課税制度の引き下げ」です。

☆改正内容

 簡易課税制度の「みなし仕入率」が改正されます。
みなし仕入率を、以下の6つの区分にし、みなし仕入れ率の引き下げをしています。
金融業及び保険業を第5種事業とし、
そのみなし仕入率を50%(現行60%)とすること、
不動産業を第6種事業とし、
そのみなし仕入率を40%(現行50%)とすること
※平成27 年4月1日以後に開始する課税期間について適用


以下、会話形式で解説します。

記者
「今日は簡易課税の改正について教えてください」

エリ
「はい、今回の大綱では簡易課税制度のみなし仕入率の引き下げられています」

記者
「そもそも簡易課税制度ってどんな制度ですか?簡易じゃないフツーの制度との
違いについてもあわせて教えてください」

エリ
「わかりました。
会社が行う原則的な消費税の計算は、
売り上げるときにもらった消費税と、
仕入代金や家賃など経費を支払ったときにあわせて支払う消費税の
差額を納税するんです、

そのため法人税のように利益が出たら支払う法人税など
とは根本的に仕組みがちがうのです」

記者
「というと?」

エリ
「消費税は会社をスルーしていくものなんです。
消費税をもらうというのは自分のものになるわけではなく、
消費者が納税するための税金を一時的に会社が預かったものなんです。
自分のお金ではありません。

 で、預かったお金は
いずれ消費者に代わって納税をしなければならないのですが、
納税をする際、
会社が今まで支払った消費税は差し引いて納税していいですよ
という仕組みになっているのです。
だから本来消費税の納税自体、会社はソンもトク
もしないものなのです」

記者
「なるほど・・・」

エリ
「だから消費税の納税は
赤字だから払わなくてもいい
というわけにはならないんですよ~。
起業したばかりの社長さんで勘違いしている人が多いのですがね」

記者
「消費税の原則的な計算はわかりました。それに対して簡易課税というのは?」

エリ
「実はこの預かった消費税から支払った消費税を計算するのがとても手間がかか
るものなんです。とくに支払った消費税のほうが・・・・」

記者
「それはなぜですか?」

エリ
「預かった消費税は、ほとんどの場合が、売上です。
売り上げはほとんどの場合決算書の売上と同じです
(輸出入や非課税などを集まっている場合は別ですが)。

ですから売上を把握していれば預かった消費税は計算できます。
 ところが支払った消費税は多岐にわたります。
商品の仕入代金はもちろんですが、
電車代、電気代、電話代、家賃、外注費などなど。
中には
ひとつの科目の中に
消費税の計算するものと
消費税を計算しないものとかがあって
勘違いやケアレスミスが多発するんです。
ひとつひとつの取引全部をチェックして集計するのは
会計ソフトを使っていたとしても
チェックがとても大変なんです」

記者
「たしかに。。大変そうです。とくに小さな会社には」

エリ
「そうなんです。
それで
小規模な会社
(現在は課税売上高が5000万以下)
には、あらかじめ業種ごとに
「みなし仕入率」
という率をもうけて、
実際に支払った消費税の計算の代わりに
概算計算をしてもいいですよという制度、
それが簡易課税制度なんです」


記者
「それは便利ですね、だから「簡易」っていうんですね」

エリ
「ただこの簡易課税制度には難点があります」

記者
「どんな難点ですか?」

エリ
「みなし仕入れ率を使って計算した概算の支払った消費税と、
実際に支払った消費税は
一致しないため差額が生じる、
これがいわゆる益税を発生させる要因になっているのです」


記者
「ああ、これが新聞報道などでよく言われている益税っていうやつですね」

エリ
「はい、そうなんです。
たとえば預かった消費税が100万円だったとします。
そしてみなし仕入れ率で計算した数字が80万だったとします。
で、実際に支払った消費税が50万だった場合を計算してみましょう。

簡易課税制度で計算すると、100万円ー80万=20万円。
原則で計算すると100万ー50万=50万
会社が簡易課税制度を採用していたとすると
(※簡易課税制度は税務署への届け出が必要となります)
納税額は20万円、
原則計算では50万納税しなければならないのに
簡易課税だったら20万なんですから
会社に30万円分が残されることになります。
この30万円が益税となります。


記者
「なるほど。。。。」

エリ
「この場合、実際に計算したら90万だったとしたらどうなりますか?

記者
「ええっと、100万円ー90万円で10万円の納税となります」

エリ
「会社にとってはトク?ソン?」

記者
「あれっ?この場合は会社は原則計算をしたほうがトク、簡易のほうがソンとなります」

エリ
「そうですね。簡易課税制度ではケースによってはトクになったりソンになったりします。
でも過去の経緯からするとソンをするよりもトクをする場合、
すなわち益税が発生するケースが多く、
これはゆゆしき問題だといわれてきたんです」

記者
「たしかに・・・・ゆゆしき問題です!
消費者からしてみれば自分が支払った消費税が
ちゃんと納税されずに会社のものになるなんて許せません」

エリ
「ではどうすれば益税を防ぐことができると思いますか?」

記者
「そもそも簡易課税制度をなくす!とか」

エリ
「そうですね、
確かに簡易課税制度をなくせば益税の発生する余地はなくなりますね、
でもそうすると小規模な会社にとっては事務負担が増え、
経理スタッフが残業するとかあるいはスタッフを増員しなければならないなど
それはそれで大変なことになります」

記者
「う~ん、それもちょっとかわいそうだ。。」

エリ
「将来的には簡易課税制度は将来的にはなくなっていくかもしれません。
でも現在では廃止というところまではきていません。

そこで小規模事業者の事務負担も考えて、
簡易課税制度は存続をする。
でも、一方でなんとか益税も減らすことはできないか?

両方の状況を考えてバランスを図ろうとした結果
考えられた改正のひとつが
今回の
みなし仕入率を引き下げよう
というものなんです。

まあ、
過去からの改正の履歴をみてみると
簡易課税制度は
その適用範囲(課税売上高の引き下げ)の引き下げと共に、
みなし仕入れ率の引き下げが何度か行われてきています。

記者
「なるほど。。。ちなみに、このみなし仕入れ率というのはどうやってきまっているのです
か?」

エリ
「いい質問です(笑)。
みなし仕入れ率とは、
業種によって仕入れ率は売り上げのどれくらいか
というのをあらかじめ見積もって作っています。
大体過去の業種のいろんなデータから作っています。
一番高いみなし仕入れ率で
卸業(第1種事業)の90%、
次に小売業(第2種事業) 80%、
製造業等(第3種事業)70%、
その他の事業(第4種事業)が60%、
サービス業(第5種事業)が50%と
5つに区分されています・

記者
「で、今回はどんなふうにみなし仕入れ率が改正されるのでしょうか?」

エリ
「みなし仕入率を、以下の6つの区分にし、みなし仕入れ率の引き下げをしています。

金融業及び保険業を第5種事業とし、
そのみなし仕入率を50%(現行60%)とすること、

不動産業を第6種事業とし、
そのみなし仕入率を40%(現行50%)とすること


が盛り込まれています」

記者
「なるほど。。。
これで少しでも益税が発生しなくなればいいですよね?

今日は消費税のしくみからはじまって簡易課税制度でなぜ益税が発生するのか、
そして今回の引き下げの内容など消費税全体がよくわかりました」

エリ
「大綱がそのまま国会を通れば、
この改正は、
平成27 年4月1日以後に開始する
課税期間について適用されることになります。」


 どうでしたか?
簡易課税制度は
これからも益税を少しでもなくす方向で
改正がすすむと思われます。