ここで
ブローチのものがたりを
書いておりました。
ワタシのつくるブローチには
其々ものがたりがあって
名前があります。
ご存知の方もおられましょうが
一時期、ワタシはブログからも
インスタグラムからも
長いこと離れておりました。
コロナ渦の中のおうち時間。
そおっと飛ばしてみた、
「今更ながら」の御礼の蝶々。
父の病で長い間、日々色んな感情と
やらなければならないことで
精一杯だったワタシへ届いた
温かなこころへの。
ワタシは時に大胆で、
それでいて、ものすごーく
小心者なのです。
こちらに時々戻ってくるキモチに
なってからも
モイさんに何か御礼、できたらな。と、
ずっと思いながらも
ワタシが作っているものを
勝手に送ったりしても
どうなのよ……要らないだろうしなあ。
などと、
つまらないことで勝手に悩み。
挙句の果てに
本人も、何のことかわからないほど
時間が経過してから
飛ばしてみた、青い蝶々。
ほんとうに、失礼しました。
そんなワタシにまたもや届いた
モイさんからのサプライズ。
まわる、まわる。
ここにも、「ぐるぐる」がありました。
今日のものがたりは
ワタシの作りかけの猫とそれらで
遊んでいるうちに
繋がったおはなしです。
銀のヒゲの黒猫たちを
手招きします。
(ちょっと、来て来て。)
どうしたの?
(あのねえ。これを、とある紳士に
届けて欲しいのよ)
誰に?何を?
兄弟たちは尋ねます。
バニラは猫たちよりも
すごく大きいので、
できるだけ丸くなって
小さくなって囁くように。
(海を渡ってね。でも、濡れないように。
橋があるから、大丈夫)
うんうん。と、
ノワールとニュイの兄弟は
何度もうなずきます。
このこたちは
本当は3兄弟なのです。
あ、話をしていたら
ソンブルが欠伸をしながら
歩いてきました。
あれ、何しているの?
何処かにいくの?
(そうなのよ。ちょっと、
大事なお使いなのよ。
あなたたちにはちょっと、
大きいかもしれないけれど)
この青い蝶々をね、
届けて欲しいヒトがいるの。)
いいよ、いいよ、と
黒猫たちは口々に。
ソンブルは寝坊さんなので、
眩しそうに窓をみたけれど
やはり「いいよ」と言ってくれます。
2人で持って、ぼくが先導だよ。
うんうん。
途中で疲れたら、
そしたら今度は僕が持つよ。
交代しながら行こうねえ。
そうしよう、そうしよう。
喧嘩も時にするけれど。
大きいねえ。うん。大きいよね。
ちょっと、こわいねえ。
背中の箱に入れようか。
三兄弟は口々にお喋りしながら。
蝶々の翅が破れないようにしてよ。
ちょっと斜めになってるよ。
ノワールは心配家。
バニラにしかられるよ。
そんなことを呟きながら。
そうして海の橋を渡ってゆきました。
時々、金色ツバメと
銀色ツバメの上に乗って
楽ちんだよ、と風切りながら。
調子に乗って
途中で寄り道していたら
わからなくなってしまいました。
どうしよう。どうしよう。
涙がでてきそうです。
そんなところに
通りがかったレディが居ました。
その人は
綺麗な鞄をもっています。
(あら、もしかして…。)
小さな声で呟いて、
そのひとは近寄ってきます。
バニラのおともだちなの?
(うちにもいるのよ、可愛い子が。
モカというのよ)
ニコッと笑ったそのレディは
三兄弟をそっと掌に載せて
わかる場所まで連れて行ってくれました。
三兄弟のお母さんはいないけど、
その人はお母さんみたいに
温かい手でした。
ここだよ、ここかな。
黙ってポストにいれとこう。
そうしよう、そうし…
「あ!!!」
大きな影ができました。
そのひとは「じじいに何か?」と
三兄弟に尋ねます。
ソンブルは笑ってしまいます。
ニュイにちょっと小突かれました。
初めて会うのに
この人が好ましく見えたので
三兄弟は纏わりつきます。
ねえねえ。ここはなあに?
銀色の花が咲いてるよ。
鳥籠を覗いたり
バスケットをベッドにしたり。
そうしているうちに
薄い紙にさらさらと、
きれいな文字が並んでゆきます。
その人からの手紙と包みを
預かって三兄弟は
寂しいままに
さようならを言いました。
***********
得意げに話をします。
ぼくたちねえ、あのひとが
とてもすきだったんだよ。
じじいって、言ったの。
面白かったんだよ。
ベッドがあってね。
みんなで入ったよ。
(あれはバスケットなのよ)
銀色のお花が咲いてた。
丸いものにも咲いてたよ。
ぼくたちよりも、大きいの。
(それはそうでしょうね)
(こんなに素敵なものまで
また頂いて帰ってしまったね)
お母さんみたいなひとにも
会ったんだよ。
(えー?!すごいねえ。会えたのね)
徐に
バニラが後ろの棚から
何かを取ってきて。
三兄弟を乗せました。
(月のお皿よ。
今からもう、寝る時間だけれど。
それからこれは、
あのヒトの作ったものよ。)
そうして1人づつに
バニラが貸してあげました。
ノワールにはバスケット。
ニュイには枯れ葉の傘を。
ソンブルにはスプーンを。
(眠ったら、森へ行けるよ。
どこの森へも行けるからね。
きっと、そのうち
いい香りがしてくるかも。
あなたたちみたいな、
兄弟の野ネズミさんが
大きなカステラを焼いているよ。)
(あなたたちにも
分けてもらえるかもしれないから。
優しくするのよ、みんなにね。)
(あのヒトもカステラほしいな、って
言っていたから)
あのヒトって、「じじい」のこと?
(こら!)
ソンブルはまた小突かれました。
バニラにも叱られました。
あのヒトと
バニラと一緒に
小さく、丸くなって
指を差し出してみようかな。
乗せてくれるかな。
魔法が使えたらいいのにね。と、
あのヒトは言いましたので
眠った間はそうなるようにと
あと少しでまるになる月を
眺めてから眠りました。
そんな三兄弟と、
バニラとあのヒトのものがたり。
このものがたりを、
親愛なる
モイズムさんと、mowさんへ。
そして
これらのモノもこころも全て
バニラの中の「宝物」だと
改めて思った次第です。
ーー#星の夜の宝箱ーーー
はちみつバードさま。
では。