
『日々の泡』(原題) ポリス・ヴィアン
『日々の泡』は、フランスの作家、ポリス・ヴィアン(1920~1956)の小説です。
出版されて60年以上経っていますが「恋愛小説のなかでもっとも悲痛な小説」と評され現在も尚、
読み継がれています。
数年前になりますが『うたかたの日々』という邦題で岡崎京子さん(漫画家)が原作をもとに描いた
コミック版を読みました。
その時は、岡崎さんの作品の印象が強すぎてヴィアンの小説を読むところまで至らなかったのですが、昨年『ムード・インディゴ』というタイトルで『日々の泡』が映画化され、先日、その事を知らずにDVDを観て、記憶が蘇りました。(笑)
ついに、原作を読むところまでいきついたのです。^^
舞台は、1927年の巴里。
(と言いましても虚構の巴里です。^^)
資産家で優雅な暮らしをしていた青年コランは、ある日、パーティで美しい少女クロエと出会い
恋におちます。
やがて二人は結婚し、何不自由なく暮らしていましたが、幸せはそう長くは続きませんでした。
クロエは、肺にスイセンの花が咲く奇病にかかってしまったのです。
コランは治療費のために全ての家財を売り払い、さらに過酷な労働を強いられることになります。。。
物語はここからトーンが一変し、クロエの病状が悪化するのに合わせ、コランも友人たちも周辺も
少しずつ死の気配に支配されてゆきます。
前半はコミカルでキラキラしていて快楽的ですが、後半はダークで混沌とし、残酷な一面を露にします。
読後は、やるせなく沈鬱ですが、コランの痛々しくもクロエへの一途な愛情だけが煌きを発していて、
心にさし入りました。
追記として。。
ヴィアンの小説は、とても映像的です。
特に登場する物体たちは奇抜さと愛らしさに満ちています。
(コランはハツカネズミを飼っていて、そのネズミくんも可愛いのですよ。)
蛇口からうなぎが顔を出したり、演奏に合わせてカクテルを調合する「カクテルピアノ」があったり、
テコの原理で心臓をくり抜いてしまう「心臓抜き」など、時に武器として怖いものもありますが、
何かコミカルでユニークなのです。
このように現実では有り得ないものが色々と登場しますが、その輪郭は鮮やかで言葉の世界に
存在しています。
「二人は、すぐそこの歩道に沿って歩いていった。
バラ色の小さな雲が降りてきて彼らに近づいた。
「行こうか?」と雲が声をかけた。
「頼むよ!」とコランが言うと、雲が二人を包んだ。
「行こうか?」と雲が声をかけた。
「頼むよ!」とコランが言うと、雲が二人を包んだ。
その中は暖かくて、シナモンシュガーの匂いがした。」
コランとクロエが初デートするシーンです。
とてもキュートですよね。
この文章から悲劇的な結末が宿命づけられているなんて誰が予想するでしょう。。
映画は、殆ど原作通りです。
逆に映像化することによって見事に輝き(?)を増してました。
(原作を超えるほどに?!)
大きな違いと言えば、ラストです。
映画の方が原作より救いがあり、印象が良かったと思います。^^