
森岡久元氏の新刊『深夜音楽』読了致しました。^^
本書には、
「小石の由来」
本書には、
「小石の由来」
「冬のこうもり」
「ハナトラノオ」
「鳥森の幽霊」
「にらむ女」
「別荘橋のできごと」
「深夜音楽」の7つの物語が収められています。
どの短編も物語のための虚構ではなく、現実の中に潜む、虚構の衣を着た事実を
物語化したように感じました。
冒頭の『小石の由来』は、再読ですが(以前、同人誌『酩酊船』で)にも関わらず、やはりラストで
八ッとしてしまいました。
この物語は少年と祖父、そして念力のお話だと思っていたのですが、今回、読み返してみると、
父と娘のお話のように感じてなりませんでした。
父と娘のお話のように感じてなりませんでした。
ある日、千賀子は小学生の息子の机の引き出しから碁石のような小石を見つけます。
訝しげに思ったものの、勝手に捨てるわけにもいかず、そのまま元の場所に戻しておきます。
訝しげに思ったものの、勝手に捨てるわけにもいかず、そのまま元の場所に戻しておきます。
それからしばらくして千賀子が小石の正体を知ったのは、父親が亡くなってからの事でした。
千賀子は、破天荒な人生歩んだ父を許す事が出来なかったものの、その小石を手にした時、
思わぬ行動をおこします。
それはもしかしたら、父への愛情の表れだったのでしょうか。。
人は永遠というものに触れることはできませんが一瞬と永遠の境目にあるドアに念力を
かける事は出来るのかもしれませんね。。
『深夜音楽』の中で一番好きな作品は『別荘橋のできごと』です。
ある年の1月、72歳の男性は友人とお酒を飲んだ帰りに転倒し頭に怪我をして帰宅します。
その後、一時的に記憶喪失となり、不思議な体験をします。
例年に比べて寒い3月のことでした。
彼は、川面を被う花筏を見て、ふと、視線を上げた眼に、いままで花びらとみえていた白いものが
浴槽を埋め尽くす泡だと気が付きます。
其処からは沈丁花の香りがして、女が泡を作っていたのです。。
ウォーキングの途中で男性は記憶を失い、別荘橋で黒いワンピースを着た見知らぬ女に声を
かけられます。
彼は直感で、その女が、沈丁花の香のする浴槽で泡を作っていた女だ、、と感じます。。
ある哀しみを沁み込ませていたその女は、同じ場所に居た男性をそうとは気がつかない
うちに、こちら側と死との境目に誘っていたのです。
けれど、季節は巡ります。
さきほどまで男性が立っていた場所は、うすぼんやりと揺らめき出し何かが変わりはじめていました。。
この物語を読んでいると、季節のノスタルジーを強く呼び起こさせられます。。^^
表題作の『深夜音楽』。。
60代の男性が深夜、目が覚め、眠りに戻ろうとして妙な音に気が付きます。
実は、それは耳鳴りだったのです。
耳鳴りからなんとか逃れたい男性と次第に音が変化していく耳鳴り、、
その耳鳴りはあらゆる回路を巡り、なまはんかではない喪失感を通り越して男性を
恍惚とさせてしまうのです。
小説を読んでいる間中、「耳鳴り」を意識し、文中に登場する甲殻類を食べる時の
「ばり、ばり」という音が、耳からずっと消えませんでした。
その他の作品も、一篇、一篇読み終えるたびに、読んだ感触は消え去ることなく、
物語は終わっているというのにどんどん連れ込まれていくようでした。
そして、私がこれから直面していくであろうその世界は深い意味をたたえている、
ということを証明してくれているようにも思えるのです。
本の帯にも書かれていますが、「円熟の森岡文学、まだまだ枯れてはいない、
心の底にうずくものがあるかぎり人生は面白い!!」のです。^^