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『センセイの鞄』川上弘美 
 
以前から、何となく気になっていた本です。
 
まず、題名が好み。(笑)
 
さて、読み始めてみますと、なんとなく、しっくりとしません。
 
30代後半の女性と、60代後半と思われる男性との純愛物語。
それも二人は、もと高校の先生とその生徒という関係です。
物語は、もと生徒である女性、ツキコさんの淡々とした口調で、進行します。
 
それがとても淡く、ツキコさんの生活全体が茫洋としています。
多分、著者の川上弘美さんの意識的手法なのかもしれませんね。^^

二人の出会いは、ツキコさんがちょくちょく往来するようになった駅前の一杯飲み屋さん。
そこで、センセイは背筋を反らせてカウンターに座っていました。
「ツキコさんではありませんか」と、最初に声をかけてきたのはセンセイです。
 
その後、二人は、ちょくちょく居酒屋で顔を合わせるようになり、徐々に会話も交します。
 
ツキコさんは、30歳年上のセンセイに恋心を抱き、そこから、ほんわかとした二人の関係が
成り立ってきます。
本当のところ、センセイもツキコさんの事がとても気になっているのですが、その気持ちを
あからさまにはしません。ただただ、淡々としたお酒のつき合いを楽しんでいるのです。
 
その結果、ツキコさんの切ない恋心は切羽詰まってきます。
この辺りから、読者は、ぐっと二人の恋の行方に惹き寄せられるのですが、
残り数ページという所で
リアリティーを避けて、淡い物語に終始します。。。
 
 「。。センセイの鞄を開けて、中を覗いてみる。鞄の中には、からっぽの、何もない空間が、
広がっている。ただ、儚々とした空間ばかりが、広がっているのである」
 
そう、この物語はこの言葉で結ばれています。
 
謹厳実直なセンセイのイメージは、その言葉の使い方や仕草が、まるで向田邦子の小説や
小津安二郎の映画に出てくる父親像と重なり、実は、私はすっかりセンセイに好感を持って
しまいました。(笑)
たまには、このような恋物語も読んでみると良いかもしれませんね。^^