
とにかく、「ヤドカリ」というモチーフが、私には馴染みがありませんので、
やり場のない心を抱えた少年たちがヤドカリを神様に見立て、儀式をするのですが、
その場面が何度も何度も繰り返し出てくるので、正直に言いますと、少々辟易しました。
こんな酷いことをするの?
そう思うような儀式。
主人公の少年の父親は病気で亡くなり、母と二人で祖父の家に身を寄せて暮らしていました。
都会から転校してきた主人公の孤独は、父を失った悲しみとある事故が原因でした。
その事故というのは、祖父が漁船の操船ミスで、船に乗っていた女性を死なせてしまい、
祖父自身も海に落ち、スクリューで片足えを失くしました。
その亡くなった女性の娘が主人公のクラスメイトで、
祖父は、今のこの姿は、自分が小学生の頃に神が住むと言われた山に登り、
その時に谷に落ちた友人を助けず逃げかえったことの罰で、自分が犯した罪は、
いつか必ず自分に返ってくるのだ、、といいます。
その頃、彼らは願いが叶うという儀式、、、ヤドカリをライターであぶり殺し「ヤドカミさま」と
いって祀る。
母親を亡くした娘と父親から家庭内暴力を受ける少年と、、三人とも孤独でした。
次第に少女に惹かれる少年たち。
そして、主人公はある事実を知ってしまう。。
それは自分の母親と、娘の父親が恋仲であるということを。
ヤがドカリがなぜ神様のように崇めるようになったのでしょう。
それはある時、遊びでヤドカリをあぶっていたときに何気なくお金持ちになりたいと願います。
その時に500円玉を拾うのです。
そのことから、ふいに、もしかしたらヤドカリの死の瞬間にお祈りをするとその願いが
叶うのではないかと思い込んでしまいます。
そこには、心理、演出があった訳ですが、それは本文後半に判明します。
そして、祖父は、転倒による頭部打撲が原因で、脳内出血をおこし、お見舞いにきた主人公に
「月夜の蟹は、駄目なんだ。食っても、ぜんぜん美味くねえんだ。
月の光がな、上から射して海の底に蟹の形が映ってな。
その自分の影が、あんまり酷いもんだから蟹は、おっかなくて身を縮こませちまう
だからな、月夜の蟹はな。。全然美味くないんだ。。」
と、正気なのか夢うつつだったのか、、そんなことをつぶやくのです。
脳の中でじわじわ広がっていく出血のイメージがうまれます。
。。。。とことん暗~い設定です。でもなぜか先が読みたくなる。
この3人が、それぞれどんな思いで付き合っていたのか。
そして、一体ヤドカミ様にどんな願をかけたのか。
願いは果たしてかなうのか。
もしかなったら、3人はどうなってしまうのか。
ドキドキしながら読みました。
狭い、閉ざされた水たまりの中で主人公たちに飼われているヤドカリたちは、
実はこの3人の立場を表しているようです。
ヤドカリたちは何の落ち度もないのに、理不尽にも少年たちに火炙りにされる。
そして少年たちも・・・。
この世の理不尽さと闘いながら、それでも必死に大人になろうとする彼らを、
はたして「月」は明るく照らしてくれるのでしょうか。。。