
『神楽坂百草会』
100万本のタバコを吸うことを目的とした愛煙家の会、『百草会』(もぐさかい)。
その風変わりな会に関わった男達のお話(綺談)です。
『百草会』その会の主催者は、58歳の助川という出版業の会社社長だった。 その会の結成動悸というのは、ちょっと、シャレをきかせたもので、 「出版業を簡単には潰さない。せめて吸ったタバコが100万本を 越えるまでは。」というものだった。 そこへ入社した主人公、北山。 当然、百草会にも入会することになった。 丁度、その頃、助川は、32歳から、一日100本のタバコを吸い続け、 目的達成まで後、数ヶ月というところだった。 会には、助川の会社創業に参画した友人もいた。 北山が助川の会社に面接に行ったのは、平成バブル崩壊後の二年間を失業していた頃だった。 助川の会社は、タウン誌の編集と営業部員を募集していたが、実は、風俗嬢の 宣伝パンフレットの発行が主だった。 以前は、教材の印刷製本業が順調だったので、社員も多数いたが納入先の会社が倒産し、 不良債権が大きな負担となった為、大幅に社員も業務も縮小したのだった。 。。。取引先が風俗店なのだから、たちまち北山の勤務は過酷を要した。 辞めれば、明日にも家賃を滞納するような状況だった北山である、仕方なしに 転職先を探しながらもこの会社に残っていた。 集金も、経営者を回って次号の営業をかねて未集金を回収して回らなければ ならないのだから、社長である助川の毎日も深夜1,2時過ぎになる。 神楽坂にある自宅に歩いて帰宅していた。。 そんなある日、北山は70代の女性経営者に気に入られ、その日も集金に行くと、 北原白秋の「赤い鳥小鳥」という童謡を聴いた事があるかと突然、聞かれた。 ひとり娘が10年前に突然行方知らずになりその残していったCDを整理していたら その中にこの童謡が入っており、それを何度も繰り返して聞いているうちに 涙がでてきて止まらなくなったという。。 ♪赤い鳥小鳥 なぜなぜ赤い 赤い実をたべた♪ その単純すぎる問答に感動して泣けてしまうのだと言うのだ。 ただ、センチになって泣いたんじゃない。。なにか、泣かされる秘密が あるのだと。。それを考えてほしいと北山は、その曲が入っているMDを 女社長から渡された。 北山は、気の進まぬ宿題を出されてしまった。。と思った。 。。。5月になると、助川の100万本達成の日がやってきた。 百草会のメンバーが見守る中、、異変は突然起きた。 助川の鼻から耳から、、そして、頭から。。何かが出てきたのだ。。 肉体から100万本のタバコを抜き取った証だったのか。。 。。。その後、助川は、検査入院をして癌がみつかった。 しかし、癌とその正体の関係は、不明のままとなった。 入院中の助川を見舞いに行くと彼は眠ってばかりいて、話しをしていても 途中で眠ってしまう。 結局、助川の会社は休業することになり、北山も失業した。 退院してからも神楽坂の助川の自宅へ訪ねてみたがインターフォンに応答がなかった。 しかし、こうして神楽坂に足が向いてしまうのは、助川や百草会のメンバーが いい人で好きだったからだろう。 北山は神楽坂を下から見上げはしても坂を下がっていくでもなく佇んだ。 そんなことをしているうちに8月となり、北山の妻がクリーニングに出そうとした コートのポケットの中からMDを見つけた。 女社長から渡された宿題のMDだった。 早速、聴いてみた。 なんて優しさに満ちた嘘だろう。。 そう思うと北山は涙が止まらなくなった。。。。
読みはじめて、、
私の興味の先は、「タバコを100万本吸うとどんなことが起こるのだろう」
と、いうことでした。
「比叡山で天台宗の行者が、千日回峰という命がけの荒行すると、神通力を体得すると
言われているというから、タバコでも一万日かけて100万本の荒行を続ければ、
何かが起きる。。。」
と、『百草会』のメンバーのひとり砂田さんがそう言う台詞があります。
すでに、私は『百草会』のメンバーとなっていました。(私は喫煙者ではありませんが。^^)
そして、いよいよ助川さんが、100万本のタバコに火をつける。。
その達成の日、読者は立ち会っているわけですが、もう、、ハラハラドキドキです。
そして、助川さんの身にどんな現象が起こったのか。。。
それは、本を読んだ方のみ知るところとなりますが、(ごめんなさい)
しかし、個々に思い描いたその想像がそこで起こっても、少しもおかしくないようなことなのです。
ただ、ここで、もし、助川さんが、なにか神がかり的な人になってしまったら、、
なんとも、胡散臭い男達の妖怪話になってしまいそうですが、(それは、それで面白い。笑)
実は、そこから悲哀に満ちた、男の人生が語られます。。。
ものごとは予想通りにはいかないものですよね。
日々、思いがけないことが起こります。
なぜ、こうなったのか、なぜ、そうしたんだろう。。
何故?何故?と思うことが多々あるものです。
人の一生という長い物差しで考えてみても、あり得ないと思うようなことだって
起こるのですから、その答えを求めなくても、泣きたい時は泣けば良いんです。^^
赤い鳥は、なぜ赤いの?
赤い実をたべたからだよ。。って。^^
~追記~
森岡氏は、ストーリーの中に、それにまつわる文献をさらりと載せ、織り込んでしまう。。
その巧みさに唸ってしまうんです。^^本篇もそうなのですが。。
そして、この綺談、とても堪能しました。