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~チャンミンside~
─────フォークダンスが始まった。
2、3年生は慣れたようにちょっとふざけて、1年生はこっぱずかしそうに。
だって振付なんて覚えてない、はっきり言って小学生以来だし。
特に整列したわけじゃないから、学年もバラバラで何となく手足を動かしてそれでもみんな楽しそう。
昼間のお祭り気分そのままに誰もがテンション高く、普段ほとんど喋らないクラスメートともまるで昔からの親友のように。
「・・あ。」
目の前のパートナーがクルッと代わって、─────ソヨンさん。
ちょっとだけ動揺してしまい、視線が無意味に泳ぐ。
「ねぇ。あなたのどこがそんなにいいのか、私には全然分かんないけど。」
急に近づいて話すソヨンさんにピクリと肩がはねた。
「誰かを好きになるのは理屈じゃない、って嫌って程知ってるから。」
「え?///」
なんの話だろう?
最近告白してきた3年女子がソヨンさんの友達だったのか?
「好きだから諦めるの。
でも誤解しないで。応援してるわけじゃないから。」
ますます分からない話に、下手な事は言えないほど真剣なソヨンさんの表情。
ソヨンさんも僕に何かを聞きたいわけじゃなくて、ただ一方的に話したいだけのよう。
「え、と。///ソヨンさん?」
遠慮がちに声をかけたら、挑戦的な目で真っ直ぐこちらを見て、にっこりと笑った。
「いつでもリベンジの準備万端だから!」
それだけ言って次のパートナーへとチェンジしていった。
斜め前で楽しそうにしている人の言葉のひとつひとつが気になって、チラチラと何度も見てしまうけど、それから彼女と目が合うことはなかった。
「ちょっと休憩~。」
3曲目くらいになるとさすがに疲れてきて、ぽつりぽつりと輪の外で談笑するグループが増えてくる。
僕もキュヒョンに腕をひかれ、グランド脇に座りこんだ。
「意外に結構楽しいな?」って言うのはキュヒョン。
「後から狙い目つけて入りこもう!」なんて意気込んでいて。
気になった子でもいたのかもしれない。
こいつの好みは結構分かりやすくて。
「2年の先輩達の塊が、ほら?あそこ、・・だろ?」
言ったらボッと頬を染めて睨んでくる。
「な、なんだよ?///」
「だってさ、応援団の2年の先輩に気になってる人いるんだろ?よく眺めてるじゃん。」
からかうように笑ったら、
「お、おまえこそっ///!」
そう言いかけて、────あ、と言葉をつまらせた。
距離は離れてるけど真っ正面にユノヒョンとソヨンさん。
さっきの彼女とはまるで違う、花が綻んだような笑顔。
ユノヒョンも楽しそうだ。
ヒョンの腕に重ねた手を離したくないのか、ほぼ違うダンスになってる。
ここは回転するんだよ?ってヒョンがゼスチャーで教えてて、それでも上目遣いの甘えた仕草。
カップルが相手を代えずにずっと踊るらしい、って聞いた時からこの光景は覚悟していたけど。
実際に見ちゃうとやっぱり辛い。
こんな状況でラストの曲に僕を呼び出すなんてどんな根性だよ!
曲が変わっても当然のように2人はペアで。
無性に腹が立ってきた。
振り回される自分がひどく滑稽に思えて。
「トイレ!」
苛々を吐き捨てるように言って、立ちあがる。
「あ、・・ちょっ、なに?ユノヒョン。」
キュヒョンが思わず漏らした声にふとそちらを見たら。
驚いたように両手で口を押さえ、直立不動のソヨンさんと。
その真ん前で。
腰を直角に折り曲げ、深々と頭を垂れる人。
少し輪から離れた場所で踊っていたから、周囲はほとんど気づいていないようだ。
バカ騒ぎをしているグループ。
踊りの輪を物色しながら、こそこそと噂話に花を咲かせる女子達。
自分たちだけの世界をつくっているカップル。
そこだけ時間が止まったように動かない2人。
頭を下げたままピクリともしないヒョン。
やがて口元を押さえていた両手が徐々に上がり、顔全体を覆って深く首を垂れたソヨンさん。
「・・チャンミナ?あれ、どういう事?」
見てはいけないものを見てしまったような居心地の悪さに、ボソッとつぶやくキュヒョン。
「僕が知るわけないだろ?」
でも目が離せない。
やがてゆっくりと顔をあげたユノヒョンが、数秒真っ直ぐにソヨンさんを見つめて。
もう一度軽く頭を下げたあと、サッと身体を翻し、静まり返った体育館の方へと歩いていった。
─────一度も振りかえることなく。
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チャンミンが見ているであろう前で、ソヨンさんと恋人のふりをするのさえ辛くなっちゃったんでしょうねぇ、ヒョンは。
momokoさん《cheering20》前記事コメント欄より♪
ぜひ《cheering》を聴きながら!
────もう一度覚めない夢を
君と見たいよ 覚悟を決めて────