~チャンミンside~
─────大歓声が、ぼぉっとした頭に響きわたる。
こんなに全力で何かをしたのは初めてだし、終わったあとの充足感をこんなに感じたのも初めて。
興奮と疲れで震える両腕をギュッと抱きしめるように。
魂が半分抜けたような気分のまま、ふらりと視線をユノヒョンにうつした。
アクロバティックな振りを多く取りいれた演技。
迫力はあるけどひとつのミスが大きく左右するその内容で、少しも揺るがず、ぐいぐいとチーム全体を引っ張ったのは他でもないユノヒョンその人で。
そりゃモテるよな?
完敗だった。
女子だけにとどまらず、男の僕までこんなに夢中にさせて、・・なんて罪な人だろう。
仲間内でワイワイとじゃれるように成功の喜びを分かち合っていたヒョンが、スーッと抜けて僕にちかづいてくる。
「楽しかっただろ?やって良かっただろ?」
そう言って満足げに笑う。
僕も興奮気味に頬を紅潮させたまま、
「はいっ!///」
って、大きく頷いた。
途端、細めた瞳が緩やかに綻び。
「チャンミン。・・後夜祭が終わったら、・・俺の話を聞いて?」
「俺、リレーも1位取るから。おまえの最初で、俺の最後の体育祭を優勝で飾ってやるよ。」
「・・ヒョン?」
「だから、・・ラストの曲になったら、さっきの場所で待ってて。」
そんな強気の宣言を事もなげに達成したヒョン。
応援合戦も晴れて1位で、もちろん総合優勝だ。
喜びと興奮でヒョンを中心に3年生の先輩達がお祭り騒ぎ。
その周りを囲んだ1、2年生が手を叩いて喜びながらその様子を見守っていた。
時々チラチラと目が合う以外はヒョンへ近づくことも出来ないまま。
───この特別な日に、僕もサラッと言ってしまおう。
もう本当に今日を最後に接触のなくなるヒョンだから。
ありがとうと一緒に言ってしまおう。
────ヒョンが好きです。と一言。
すぐさまキャンプファイヤーの準備が始められた。
生徒会が主体となって、どんどん積まれていく廃材。
あらかじめ布を巻いて用意されたトーチ。
控え席の椅子はすべて教室へ戻し、広くなったグランドはいやでも全員参加の様相を呈していた。
「トワリングは格好いいだろうけどさぁ、フォークダンスってどうなの?」
面倒くさそうに準備するキュヒョンに、それが結構盛り上がるらしいよ、と教えてやる。
ふん、と鼻をならし、
「最初の曲だけ普通に踊るらしいけど、次からはカップルになっちゃって、そいつらだけパートナー替えなしでいつまでも踊ってんだって。見せつけられるだけじゃんか。」
「でもさ、彼氏なしの子がすぐ分かってチャンスかもよ?」
彼女なしの淋しいキュヒョンに教えてやったら、
「・・おまえもな?」とかって目配せしてきた。
お互い目を合わせて、くくっと笑う。
そんな友達関係が居心地良すぎて彼女をつくろうなんて当分思えそうにないよ。
さっきまで真っ昼間のように太陽が照りつけていたのに、日が暮れ始めた秋の夜は早い。
あっという間に薄暗くなり、生徒会長の始まりの合図。
ふっと静まり返って、軽快な曲が流れる。
入場門のあった場所から60個ほどの火の玉。
一列になって廃材を組んだ中央で円をつくる。
曲に合わせてぐるんぐるんと回されるトーチ。
炎が闇にとけて線のように輪のように、幻想的な風景を象っていた。
ふふ、不思議だな。
こんなに真っ暗闇なのにどれがユノヒョンかすぐに分かってしまう。
ヒョンの小さな顔も、身体の輪郭も、僕の中でコピーされたように一瞬で答えにたどりついてしまうんだ。
やがて曲も終わりに近づき、両手に持ったトーチを頭上に掲げた。
全員が合わせたように点火。
今日という特別な日。
みるみるうちに燃えさかる炎に、まるで夢の中にいるような高揚感を感じて。
─────後夜祭のラストの曲になったらあの場所で待ってて。
その言葉が胸の内で期待へと変わりそうになるのを何度も何度も打ち消した。
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みんなと何かをする、とか。
まるで興味のなかった内気な高校生が、ぐいぐい腕をひかれて、無理やり押し上げられて。
でもそれが、特別。になった、って事を書きたかったのです(*^^*)
momokoさん《cheering19》が35話のコメント欄よりご覧いただけます!
───「おかしいのは、俺のほうかもな?
なんで、お前の事、諦めちゃったんだろう?」────
ほら?もう止まらないでしょ?( ´艸`)