~ユノside~
モテるかモテないか、と聞かれたら、多分モテるんだと思う。
どうしても女子の方がませていて、こちらは友達だと思っていてもすぐに好きとかつき合うとかに発展するのが、とにかく嫌だった少年時代。
告白されて断って、・・泣かれちゃったりしたら最悪。
俺が悪いのか?
そんなことを何度も繰り返すうちに見つけた解決法。
───とにかく彼女をつくればいい。
それだけで無意味な告白から解放されることを知った。
でも嘘はつけないし。
───好きになれるかどうか分からないけど、・・いい?
お約束のように。
彼女が代わるたびに。
「ユノ、───好き。」
そう言われて、───俺も、とは返せなくて。
うん、と頷くだけ。
そのうち痺れを切らした彼女に振られるのがいつもの事で。
結局やってることはそう大差ないな、と虚しく思う日もあった。
それでも男だから性欲は人並み。
彼女の家によばれて身体を開かれれば、若さに任せて心ゆくまで堪能する日々。
それでも好きだとは返せない、ズルい俺。
高2の終わり。
───つき合う前の方が幸せだった、と朝一番で振られた午後。
どういう仕組みなのか?
あっという間に広がる噂。
順番待ちしてた?って疑いたくなるほどの素早い行動。
何人かの告白。
いつも綿菓子のようなふわふわした様子が可愛いと思っていたソヨン。
───今度こそ、好きになれたらいい。
それが叶わないまま、───出逢ってしまった。
まったく媚びないのに、
目が離せないくるくる変わる表情に思わず頬が緩む仕草。
昼飯代として充分すぎるくらいの金だけ渡される俺に、あの特大おにぎりは温かすぎて。
今まで頑なに断ってきた彼女からの弁当。
だって、なんだか重い。
それがさ、こんなにおにぎりが欲しいとか?
そう、きっとそれがすべての答え。
あの日部活の後輩が連れてきた、人見知りを絵に描いたようなちょっとふてくされたヤツに、
もう止められないほど、
────こんなにも惹かれてる。
性別を超えたこの想いを、口にすることは許される?
頼りなさげに泣く震える身体を、俺は突き放せる?
今まで一度も口にしたことのない別れの言葉、・・俺はきっと偽善者だ。
「ユノ、・・好き。後輩の男の子に嫉妬するなんて、どうかしてるよね?でも、それくらい好きなの。」
俺のTシャツをギュッと掴む小さな手。
胸の中にストンとおさまる細い身体。
その肩に緩く置いた手を、背中にまわすことも安心させるように力を入れることも出来ない。
俺はただ、───うん。とだけ頷いた。