AI wo Motto(14) | えりんぎのブログ





~チャンミンside~








─────ユノに似ている。


それが僕の第一印象。




そろそろ出席日数も気にしなきゃいけない時期になって。


ちょこちょこ通うようになったけど、…やっぱりつまらない。


親の会社に入ることを義務づけられてるから、出来るだけ引き延ばしたくて大学院に入ったものの、……僕は何をしたいんだろう。


世間体ばかり気にして、跳ねっ返りの僕を檻の中に囲みたい両親と、僕のことを恥だといって憚らない兄たち。


うんざりする事から逃げるように家を出ても、やっぱりうんざりする事だらけ。


幼い頃はいつもひとりで、いつもどこかに閉じこめられてた。


近所の子どもと遊ぶな、と、おもちゃだらけの部屋だったり、…小中高エスカレーター式の学校だったり、その送り迎えの車だったり。


そんな僕にいろいろ教えてくれたのはユノだった。


本人は、多分、何も気づいてないけど。


ユノの後についてくだけで、明るい世界が目の前にあったんだ。





その日はゼミの飲み会らしく。


まったく参加するつもりなんてなかったのに、ゼミの教室でたまたま隣になった、やたら愛想のいい奴に無理やり連れていかれて。


「お?…初めて見る顔だな。」


ひとつ先輩になるけど、…って、ニッコリ笑った顔が。


やっぱり、…ユノに似てる?


人付き合いの苦手な僕に、スルッと入ってくる人なつこさ。


恥ずかしくて生意気になる態度にも、余裕たっぷりに、よしよし、…とかしてきて。


飲み会が始まってから、ずっーと僕から離れないのは、…たぶん、初顔の僕に気を使ってくれてるからで。


────きっと、それだけで。









「…ユノ!…好きな人が出来た!」


「…は?」


実は僕はまだユノのマンションにいた。


明日出よう、…明日、って、気づいたら一週間も泊まっていて。


ポロッと口からポテトをおとすユノ。


「なんだよ?…きったないなぁ。」


「あ、…ああ。…で、なに?」


「だから、今日から自分ちに帰るからさ。」


ユノんちに置きっぱなしにしてた服も参考書も、すべて旅行用のバッグにばたばたとつめはじめた。


「…おまえんち、…で、一緒に住むの?」


「…まさか!…あそこは誰も入れないよ。」


「……それに、つき合ってるわけじゃないし。」


「……勝手に僕が好きなだけだし。」



呆気にとられて動かないユノ。

僕もすごく居心地が悪くなってきた。

なんか、べつの話題、…って考えながら。



「あ、そうそう。モデルの彼女さぁ、ユノと連絡とれない、って、すっげ僕んとこ電話してくるんだけど?」


「…まったくさ、あり得ないよな?一応元カレにそんな事相談するか?」


ハハ、…って、笑ってユノを見るけど、ユノはまったく笑っていない。


なんだよ?

そんな顔で僕を見るなよ。



~♪♪~♪♪~~♪~~


重い沈黙を破った着信音は、噂の彼女。


「あー、ちょっと、待って。ちょうどユノいるから。…ん、替わるよ。」


無理やり押しつけたスマホ。 


「ん。…ごめんな?…そう。今日?…ああ、いいよ。」


聞くつもりなんてまったくないのに。

嫌でも耳に入ってきてしまう。




「よかったら、…俺んち、…来る?」


「…イテッ!!」


「あ、…ごめっ。」


無意識にユノの腕に爪をたててしまったみたいで。


パッ、と離した先には、小さなひっかき傷。


────俺んちくる?…なんて、…だって、ここ?


この一週間、何度も何度も身体を重ねたこの部屋に、…つき合ってもいない女を呼んじゃうわけ?


それで…その女を、抱いちゃうの?

毎日一緒に寝た、…あのベッドで?