~ドンジュside~
チャンミンがすごい勢いで医務室に走っていった、って聞いたから。
「…ったく、大したことないって言ったのに。」
今、警察が来てて。
エアガンなんて、オモチャだよ。──なんて、ユノは言うけど、当たり所によっては大変な事になっていたかもしれないし。
幸い弾が見つかったから、それを元に何か手がかりになるものはないか、…とにかく、相手は常識を逸してるからこちらも気が気じゃないのに。
「…ユノが怪我した、って言っただけで、すっげー動揺してたよな。チャンミン。」
それにしてもさ、…勝手に動くなよ、って言った先からこれだもんな。
ユノが怪我したから、…なのか。
怪我したのがユノだから、…なのか。
─────コン、コン
医務室のドアをノックしたら…。
──ドタッ、バタンッ!!
なんだ?
部屋からすごい音。
急いでドアを開けた。
「……えっ?」
────目の前に繰り広げられた光景。
「…っ、…痛ってぇ、…!」
どうも椅子に座ってたユノが、前のめりに滑ってひっくり返ったのか?
じゃあ、なんでチャンミンは尻餅ついてその下敷きになってんだ?
「…ちょ、…っ、…おも、…。」
そして、…なんで2人とも、顔が赤いんだ?
「……なに、…してんの?」
意識して、ことさら冷静に尋ねる。
だって、普通に考えたら、…どうなの?この状況……/////////
けど、変にからかったらチャンミンが後から怖いしな。
「…あ、…えっ、と、…この人が、…椅子から、…落ちて。」
しどろもどろのチャンミン。
何事もなかったように立ち上がり、チャンミンの手を引いてやるユノ。
一見、対照的に見える2人の態度。
──でもさ、何か、…おかしい。
「…うっ。」
これ以上詮索するなよ、って顔のユノに、…まぁ、いいか。って、無理やり納得した。
「……え?」
────予想もしてなかった、って顔。
「だから、チャンミンの誕生日までは俺も宿舎に寝泊まりするから。」
その日の帰り、ユノの運転する車に俺も乗り込み、そう告げた。
誕生日が近づくにつれて、大胆な行動に出始めたストーカー。
実はメッセージは2日と置かず事務所のポストに届いていて。
《一緒に泡となり弾けて消える日も近い。》とか。
《あなたを抱きしめたまま血の海を漂う》とか。
意味不明だけど、…こんなの見せられる訳ない。
ユノにまで敵意を向けた以上、しばらく俺もチャンミンに張りつく必要性があると判断しただけだ。
そんな俺の真意を知ってか知らずか、あからさまに肩をおとすチャンミン。
「…なに?…何か、問題でも?」
そう言えば、──いいえ、…って、首を振るけど。
隣で運転するユノも、普段なら俺とチャンミンの会話に入ってくることなど全くなかったのに。
「ドンジュさん、家族いるんだろ?」
「…なんだよ?俺、そんなに信用ない?何があってもコイツだけは守るからさ、心配すんなよ。」
なんて、めずらしくチャンミンと同意見か?
「…うるせぇよ!…もう決めたの。…そういう事だから。」
俺も意地になって、歓迎ムードからは程遠い2人を睨みつけた。