紅-クレナイ-の人(11) | えりんぎのブログ






~チャンミンside~





重ねた唇は、熱く、深く…眩暈がするほどの時を刻む。


────どうして、僕が、この人と、こんな事を?


浮かんだ疑問は、スゥ、と彼方に消えて、目の前の感触に溺れるように夢中になった。


──ガタッ、


ぐいぐい迫られて、よろけた足先がテーブルを蹴飛ばして。



「…っうわぁ//////!!!!」



夢から醒めたように驚いた目の前の人。


口を片手で押さえ、…顔は真っ赤だ。


「…わ、わるいっ!!…そんなつもりじゃなかった!」


何も言えず、…ただ惚けたようにあなたを見つめる僕に。


「…本当に、……ごめん。」


何度も謝るあなた、…らしくないよ?

たった今のことが、…ただの過ちだったと、何度も念をおされているようにしか思えなくて。



「……大丈夫です。僕は忘れますから、…あなたも忘れてください。」


それだけ言って、部屋にこもり、…声を殺して、……泣いた。


ただ、自分が情けなくて。


あの楽屋に押しかける女性達のように扱われた?

いや、…もっと最悪だ。

なぜか熱に浮かされ、気づいたら相手は僕で、…驚きと後悔を目の当たりに見せられた。


身体を売ろうとした、って告白したから、…遊べると思った?

節操がないって責めたから、わざと誰でもいい、って、意地悪した?


ううん、…一番悲しいのは、…受け入れてしまっていた自分。


ふわっと、高揚した気持ち。

ドキドキと高鳴る鼓動。


それを全て否定されて、…こんなにも悲しい自分が情けなかった。





翌朝はさすがに顔を合わせづらくて、お互い目も合わせなかったけど。


実は、…あなたと僕の関係が少しだけ変わった。


────ほんの些細なことだけど。


今までまったく重なることのなかった視線が、ふとした時にたびたび重なったりとか。


そんな時、…片方の口角だけあげて、優しく笑うあなたがいたりとか。


────もう、本当に忘れよう、…あの日のことは。


後悔してるんだろうけど、…でも、嫌悪感はなかった、って思えるから。




今日は新曲の音合わせ。

愛おしい人を想って愛を囁く唄は、心が温かくなるから好きだ。

───どうして、そんなに一生懸命で、…って、あなたが言った言葉。


違うよ?

今日、初めてあなたの前で歌うだろ?

───僕の一生懸命は、…ここにある。




久しぶりの歌に高揚した気分のまま、楽屋に戻ったら、誰もいなくて。


マネージャーか、あの人がいると思ったのに。


いつものように差し入れがテーブルの上に並んでて。


本当はマネージャーに確認してもらってからしか開けちゃいけないんだろうけど。


いつになくハイテンションで、空腹だった僕。


まぁ、いっか。
どうせ、お菓子とかだろ?


一番きれいな包みから開けてみた。


ガサガサと包みを開いてくのは何歳になっても楽しい。


ファンの子達はちゃんと僕の好みを知っていて、いつもタイムリーな物をプレゼントしてくれる。


包装紙を開いてあらわれた真っ白な箱の上蓋を、ソッと持ち上げた。



─────「…っうわぁ!!!」



首に巻かれたロープ。

服は前回の衣装。

胸に、何本もの太い針。

……それが、…ペンキ?

真っ赤に染まって。


─────この人形は、……僕?