~チャンミンside~
重ねた唇は、熱く、深く…眩暈がするほどの時を刻む。
────どうして、僕が、この人と、こんな事を?
浮かんだ疑問は、スゥ、と彼方に消えて、目の前の感触に溺れるように夢中になった。
──ガタッ、
ぐいぐい迫られて、よろけた足先がテーブルを蹴飛ばして。
「…っうわぁ//////!!!!」
夢から醒めたように驚いた目の前の人。
口を片手で押さえ、…顔は真っ赤だ。
「…わ、わるいっ!!…そんなつもりじゃなかった!」
何も言えず、…ただ惚けたようにあなたを見つめる僕に。
「…本当に、……ごめん。」
何度も謝るあなた、…らしくないよ?
たった今のことが、…ただの過ちだったと、何度も念をおされているようにしか思えなくて。
「……大丈夫です。僕は忘れますから、…あなたも忘れてください。」
それだけ言って、部屋にこもり、…声を殺して、……泣いた。
ただ、自分が情けなくて。
あの楽屋に押しかける女性達のように扱われた?
いや、…もっと最悪だ。
なぜか熱に浮かされ、気づいたら相手は僕で、…驚きと後悔を目の当たりに見せられた。
身体を売ろうとした、って告白したから、…遊べると思った?
節操がないって責めたから、わざと誰でもいい、って、意地悪した?
ううん、…一番悲しいのは、…受け入れてしまっていた自分。
ふわっと、高揚した気持ち。
ドキドキと高鳴る鼓動。
それを全て否定されて、…こんなにも悲しい自分が情けなかった。
翌朝はさすがに顔を合わせづらくて、お互い目も合わせなかったけど。
実は、…あなたと僕の関係が少しだけ変わった。
────ほんの些細なことだけど。
今までまったく重なることのなかった視線が、ふとした時にたびたび重なったりとか。
そんな時、…片方の口角だけあげて、優しく笑うあなたがいたりとか。
────もう、本当に忘れよう、…あの日のことは。
後悔してるんだろうけど、…でも、嫌悪感はなかった、って思えるから。
今日は新曲の音合わせ。
愛おしい人を想って愛を囁く唄は、心が温かくなるから好きだ。
───どうして、そんなに一生懸命で、…って、あなたが言った言葉。
違うよ?
今日、初めてあなたの前で歌うだろ?
───僕の一生懸命は、…ここにある。
久しぶりの歌に高揚した気分のまま、楽屋に戻ったら、誰もいなくて。
マネージャーか、あの人がいると思ったのに。
いつものように差し入れがテーブルの上に並んでて。
本当はマネージャーに確認してもらってからしか開けちゃいけないんだろうけど。
いつになくハイテンションで、空腹だった僕。
まぁ、いっか。
どうせ、お菓子とかだろ?
一番きれいな包みから開けてみた。
ガサガサと包みを開いてくのは何歳になっても楽しい。
ファンの子達はちゃんと僕の好みを知っていて、いつもタイムリーな物をプレゼントしてくれる。
包装紙を開いてあらわれた真っ白な箱の上蓋を、ソッと持ち上げた。
─────「…っうわぁ!!!」
首に巻かれたロープ。
服は前回の衣装。
胸に、何本もの太い針。
……それが、…ペンキ?
真っ赤に染まって。
─────この人形は、……僕?