紅-クレナイ-の人(10) | えりんぎのブログ




~チャンミンside~






「…なぁ、…おまえ、……なんなの?」



突然、腰に回された手に、ピクッと身体が跳ねた。


掴まれた右腕は痛いほどで。


「…っな、/////、…なんですか?」


「……おまえ、なに?…どうして、すぐ出てくんの?」


「……は?」


─────意味が、分かんない。


「…俺。節操ないよ?…誰でもいいからさ。────おまえは溜まんねぇの?」


ニヤッと笑って覗きこんでくる。

カァッ、ってまた頬に朱がさして。


「あ、あなたと一緒にするなっ。…僕は特別な人しかいらない。」


「…ふん。…マジかよ?…さすが天使ちゃんだな?」


皮肉っぽく歪んだ唇に、イラッとした。

抑えこんでいた感情がどんどん溢れてきて。


「…なんですか?…いつも天使ちゃん、天使ちゃんって!…僕は、…そんなんじゃない。」


「……僕は、…汚い。」


「……偶然、…身体を売ろうとした相手が、…事務所の社長だったんだ。」


「……え?」


掴まれた腕が驚きと動揺で緩む隙に、グッと振りほどいて背中を向けた。


「…あなたが僕にどんな印象を持ってるか知らないけど。…僕は、施設の玄関先に置いていかれた、ただの捨て子で。」


「………生きるために、…身体を売ろうとした、…汚い男です。」


─────ほら?…軽蔑して言葉もない?

僕はずっと嫌だった。

あなたが事あるごとに、──さすが、天使ちゃん。とか、からかうように言ってくるのが…いたたまれなかったんだ。

……これで更に僕とは関わろうとはしないであろう、その人をフッと見やる。


「……ユノ、…さん?」


僕をじっと見つめる、真剣な顔。

いつもどこか投げやりだったり、ふざけているこの人のこんな顔は初めてだ。


「……なぁ、…それなのに、…どうしてそんなに、キレイ…なんだ?」


「……は?」

────だからっ、…汚い、って。


「…!!///////」


突然、背中から抱きしめられて、これ以上ないくらい心臓が跳ねた。


「…だからっ、…どうしてそんなに、…一生懸命で、キレイな心のままなんだ?」


「………それは、あなたが勝手にっ!」


背中から首筋に埋めたあなたの息が熱い。


微かに震える腕の中で。


もう、昼間の嫌な香りは消えていて、…ただあなたの匂いだけ。


「……僕は、…キレイじゃない。…天使なんかじゃ、…ないんです。」


真っ白な天井を仰ぎ見る。

こうしていないと滲んだ雫が溢れてきてしまいそうだったから。



ふいに離れたあなた。

僕の両肩を掴んで、スッと身体をひっくり返した。

目線の位置が一緒だから、…そんな瞳で見られたら、……どうしたらいいのか。


真っすぐな視線を避けるように瞳を伏せた。


ポロッと、一筋、…零れた涙。


急いで拭おうとした手を掴まれて。


近づいてきたあなたの気配に。


スッとあげた視線。


──────重なった唇。