~Y~
───銀行には組合があって、執行委員とよばれる全店から選りすぐられた行員によって運営されてるんだけど…
執行委員になるには、現委員の推薦の他に支店長と本店の課長以上の役職からの推薦が必要らしく、その難関を突破するだけあって、そうそうたるメンバー……
組合行事の企画、運営以外にも、株主総会や人事にも関わりを持ち、執行委員は通常、若手のうちに人事部へ異動、何年か内部での仕事に関わった後、大店へ課長として異動という、いわゆるエリート路線?らしい…………
ただ、休日返上で働くのが普通で、休日返上にも、約束されたエリート路線にも興味のない俺は何度かの誘いを断り続け、結局、同期からはシウォンが任命される事になった
次長以上になると、非組合員になるので、
空いた委員のポストを若手の組合員でうめるのだけど、
……どうもシウォンがかなり熱心に俺のチャンミンを誘っているらしい…!!
………なんとか、阻止しねーとな、
あいつ、意外とお人好しというか、……強引な奴に弱いところ、あるし
って、強引にチャンミンを同居に追い込んだ俺が言うのもなんだけど……
「ゆの……!!!おそ~~~~~い!」
ジュリはカウンターで1人……結構できあがってる?
「………わるいな……!」
その店は、入って右手に大小各々の個室があって、左手にカウンターと小さなテーブル席
個室の出入り口とカウンターは衝立で仕切られていて、よほどじゃないと気付かないな
おしぼりを受け取りながら、
「ん~……じゃあ、…ビールで…」
「ちょっと、あんたが遅いから、そろそろお開きになっちゃいそうじゃん!!」
「……いんだよ…!二次会を阻止しに来ただけだから…」
───二次会なんて自由参加なんだから、
チャンミンは連れて帰らせてもらうぞ………シウォン…!
「……それにしても……シウォン、あいつ、なに??
何度かこっそり覗きに行ったけど……すっごいチャンミナにベッタリ………!!!」
苛々するのを、なんとかビールを煽ってごまかす
「さっきなんて…チャンミナがトイレに行ったのを、後、追いかけちゃってさ~
なかなか帰って来ないし、2人揃って帰って来たと思ったらチャンミナの顔が真っ赤だし…」
ーーードンッ!!!!!!!!!
思わず、カウンターを握った拳で叩きつけてしまい、……やばっ、って隣りを伺うと………ニカッと悪戯な笑顔のジュリ
「………おまえ……わざと?」
ふんっ…!と鼻を鳴らして
「今までさんざん彼女にも無関心だったのに、なに熱くなってんの?」
「……変なユノ~~!!」
「………いいだろ!かわいい後輩なんだよ…」
「ふぅ~~ん?」って俺の顔を覗き込み、
「……だって……すっげぇ、好きな奴…って、………チャンミナ…でしょ?」
なんて、言ってくるから、…普段は表情を隠すの、結構、得意なはずなのに
……チャンミンに関してだけは駄目みたいで………
「あ~~あ!!もしかして……メロメロ??」
呆れたようにため息をついて、ニヤッと笑うジュリ
一度崩れた表情はなかなか立て直せなくて……片手で口を覆い、
「……うっせぇよ……!!」って言うのがやっと……で。
「……ふふっ……!!
まぁ、嘘は言ってないけどね……シウォンがチャンミナを気に入ってて、執行委員にしたがってるって、…本当だわ!」
「……でもさ、…その話を受けるかどうか決めるのは、チャンミナで………
あんたが口だす事じゃないでしょ?」
──思いっきり口だすつもりだったんだけど……?
「格好悪いよ…!!……ユノ!!」
「……無関心なのと、信用して見守るのとは違うんだからね!
ほんと、真剣な恋愛経験、皆無の人は困るな~」
程よく酔いの回っているジュリはさらに饒舌に説教しだして………
「……私なんて…片思い歴、長すぎてさ、相手を見守ることしかしてないんだけど…ね…」
淋しそうに笑うジュリの向こうで、
お開きになったらしいシウォン達がわいわいと店の外に出て行ったーーーー