モデル並のスタイルのその人が、本人は意識してるのかどうか───何ともいえない男の色気を振りまきながら混み合うカフェのテーブルの間をしなやかな豹のようにスイスイとトレー片手に歩いていく。
ジニョンさんに言われた事は大袈裟でなく、本当に彼を目当てに来る客でいつも満席状態だ。
「チャンミナー。仕事はもう慣れた?」
──そんな熱い視線を全く気にする素振りもなく、にっこり、僕に話しかけてきて……
「……えーっと、ユノさん……」
「……ユノさん、じゃないだろ?
ユノ、って呼べよ……。」
僕の頬を指先で、ツツーっとなぞるから……
周りの視線が完全に僕たちに集中していて……
この人のスキンシップは僕だけにじゃないけど……そう思いたいけど……
思わずドキドキしてしまう自分がおかしいだろ?って、…自分に突っ込みながらも心臓がうるさくて………
───その日は突然やってきた
ザアザア降りの窓ガラスを叩きつけるような雨。
台風が接近しているらしく、どうやら電車も止まってるみたいだ。
「他の奴ら、早めにあがらせて正解だったな………。」
って、店の外にあるかんばんやプランターを中に入れながら、それだけで全身びしょ濡れのユノ
前髪からポタポタ垂れる雫を飛ばそうと頭をぶんぶん振っていてまるで猫みたい。
「ユノ……風邪引きますよ。」ってタオルを渡す。
ユノはニコッと笑って
「じゃあ、拭いてくれる?」って頭を差し出してくるから、
「……ばかじゃないですか?」
って、タオルをユノの顔に投げつけてやった。
今日は前からの予定でジニョンさんは休みを取っていて、店を閉めるのを任されていたユノと、近所の僕は帰るに帰れなくて。
「こんな台風じゃ客も来ねーし、ちょっと早いけど閉めるか?」
って、早々に閉店準備をしていく。
実は、僕は夕方からずっと気になっていて、……でも聞けないでいる事があって
───ユノは今夜、どうするつもりなんだろ?
だって、帰れないよな?
電車止まってるし………
やっぱこのまま店で泊まるのかな?
……でも知らんぷりして僕だけ帰るのも悪いかな?
一応、口だけでも僕んちに来るか誘うべき?
………そんな事言ったら、絶対来ちゃいそう!
悩みに悩んで……
「ユノ……休憩室ってちゃんと毛布とか用意してあるんですか?」
って、店に泊まること前提に聞いてみる。
「は……?……なんで?」
「……だって、さすがに夜は冷えるし、大丈夫かな?って……」
「……だから、なんで休憩室?」
「……へ?」
極上の爽やかな笑顔を浮かべ、
「俺……おまえんち、泊まるよ。……いいだろ?」って。
あぁ……やっぱりね……
ジニョンさんの言葉が頭の中でぐるぐる回っていた───