「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」
と言われています。今もう一度シミュレーションすれば、もっと数字は上がるかもしれません。
半分以上の職業が現在存在しない状況で、キャリアをどう考えていけばいいのか。
当事者はどう考えているのか、16歳の長男に聞いてみました。
彼は保育園の頃からレゴブロックや工作など物を作るのが好きで、
小学校に上がる前に「卒業試験」と称して渡したけっこう複雑なレゴの「家」を
それは楽しげに作り上げてみせました。
部品を探すのも設計図を見るのも苦行でしかない私は、心から「すごいね!こういうの得意なんだね!」と称賛したところ、まんざらでもない様子。
また、パパに任されてカラーボックスだの本箱だの、ちょっとした家具の組み立ても
電動ネジを器用に使ってキレイに完成させてくれたこともしばしば。
「俺はモノを作るのが得意なんだ」
という自己認識が芽生えたのはこのころ。
その後も技術や美術の授業で作ってきた立体物は市内の展示会に出品されたり、
先生から褒められたり、複雑なプラモデルを完成させたりと、手先の器用さや
立体的にモノを見られるセンスをもっと伸ばしたい!と思える機会に恵まれました。
このころの彼の将来の夢は「大工」。
大きなものを作りたいな、というイメージだったようです。
そして今から5年前。
中古の古家つき物件にそのまま住んでいた我が家が、ついに家の建て替えに
踏み切ることに。
さらに思い切って注文住宅に挑戦することにしたんです(!!!)。
凝り性かつ準備120%で臨みたい夫が、鬼の監督になった瞬間でした(笑)。
間取り、素材、外構、内装・・・それぞれ5~10冊ずつ本を買い、仕事の傍ら勉強し、
住宅情報誌で発注先を探しては比較検討リスト(自作)にアップし・・・と、よく仕事と
両立できたなあ・・・と思うくらい勉強に勉強。
このネタだけで5本は書ける大変さだったのですが、その様子を見ていた長男は
「家づくりって面白い!」と興味を持ち、バージョン35ぐらいまで何度も修正に修正を
重ねた間取り図をのぞき込んでは、あれこれ口を出してきました。
その後、いざ着工すると図面でしかなかった家が、基礎を固め、骨組みをし・・・
と形になっていくのが面白くてたまらなかったようで、
このころ彼の夢は「建築士」と確定しました(当時中1)。
そこから建築士という夢はブレることなく、「建築士になりたいから理系」
「建築展を見に行って知識を増やしておきたい」
「物理はやっておかないとな、建築士になるなら」
とすべての基準が建築士になること。
「ブレずにまっすぐ夢に向かっていていいね」
と言われることもあるのですが、進路が専門の母としては、
狭い範囲で選んでいないか、
もっと模索して「知らないだけで魅力的な世界」がないのか、
比較検討したうえでの決定なのか・・・
というところはとっても心配。
「もう決まっているから、他は見なくていい」と思いこむと、他の選択肢の情報に対して
脳にアンテナが立たなくなるからです。
では、高2になった今、彼はどう考えているのか。
改めて聞いてみたところ、
「技術も科学も進化していて、今までなかったテクノロジーがたくさんあるから、建築の世界の中でもそういった新しい技術や世の中の変化に対応できるような環境で仕事をしたい」
とのこと。
例えば5GやIotやAIなどが建築業界にどんな影響があるのか、
どんな可能性が広がるのか、彼なりに考えているようです。
つまり「AかBか」じゃなくて、「Aにどんな要素を掛け合わせるか」という視点。
これを聞いて、これはこれでアリかな、と思います。
この自粛期間で、彼なりに課題意識を持ってYoutubeの番組を見たり
(今は落合陽一さんの番組をよく見ているのだとか)、本を読んだり、
ニュースを見て自分なりの見解を持ってみたり、
インターネットで気になったキーワードを調べたりしているみたいです。
そして同時に「竜馬がゆく」などの歴史小説も読みながら、「何を志として
生きていくか」ということもぼんやり考えている様子。
まだまだ「気が向いた方向」ばかり深めているようですが、
わが子ながら悪くない動きをしているな、と思っています。
どんな世界が待っているのかわからない中では、
常に情報をアップデートし、
確からしい情報を見極め、
仮説を持って学び続けるしかない。
そして変化していくとしても、
その中でも不変のこだわりたいテーマがあると、ブレたり迷ったりしにくい。
(息子の場合、「家づくり」ですね)
そして子供がキャリアを考える時に保護者が気を付けなければならないのは、
「保護者が子供の進む道を決めない」
ということ。
親が、自分の経験してきたことや職業観は間違いなく子供の代には変わっています。
それでもなお、
「女の子だから短大出て保育士にでもなれば食っていける」
「薬剤師を目指したらどう?資格はあった方がつぶしがきくから」
など、聞きかじった知識で子供に進路を押し付ける保護者はまだまだ多いようです。
進路の選択は、大きな人生の選択。
一度道を選んでしまったらもうそこから変えられないというわけではないけれど、
まだ頭も心も柔らかい時期に過ごす大学の4年間という貴重な時期に何をインプット
するか、どんな環境でどんな人と過ごすのは、とても大きな経験です。
大きな選択ほど、最終的な答えは自分で決めるべき。
後悔しないためには、自分で決めるしかないんです。
大切な、かわいい我が子だからこそ、心配だし先回りしてついアドバイス
したくなったり、出来るだけリスクの少なそうな道に進んでほしいと願う親心は
痛いほどわかりますが、それでもぐっとガマンして、本人に選ばせること。
それが、親が子供のために出来る愛情表現なんじゃないかな、と思います。
トラストコーチングスクール認定コーチ
マザーズコーチングスクール認定マザーズティーチャー
中原絵里子