昨晩と今さっき、赤ちゃんが生まれました。
5人目の彼女は7年ぶりのお産。破水してやってきたら、骨盤位です。
搬送できる時間はおそらく足りない。無理にでも運ぶか?どうする?
搬送車はあるにしてもドライバーがお休み。トライシクルになると、進んで来た時にとっても危険です。
骨盤位と知らなかった産婦が一時軽いパニックになりましたが、車じゃなきゃ嫌!とベッドから動きません。
 
勢いがあって早くに生まれるかと思っていた陣痛がかなりゆっくりになりました。
子供はおちんちんだけが外に見えています。
体位が上を向いているので、陥入は正しくありません。
産婦が動けない以上、覚悟を決める以外にない、
この8月からどこか流れが悪いし、もしこの子に何かがあったら、明日から診療を止めよう。
ここが開いているから私の手に負えない人も頼りにして来てしまうのだから。
 
トラウベなので心音が拾えません。母体音しか私に耳には拾えない・・・。
お腹の中が静か・・・・
緊張で手の先がジンジン冷たくなります。羊水は濁っていないので、もし胎児仮死になっているなら今、何か圧迫していると考えます。早く良い陣痛が来てほしいのに、陣痛は緩慢。
 
暖かった赤ちゃんの陰嚢が冷たくなってくるし、赤ちゃんに何かあったかもしれない…そんな不安が消せない。
骨盤位の基本は無理に気張らせない事。お臍のレベルまで娩出するまではひたすら待ちです。
待つ間に、周囲も心配で車のドライバーの手配に走ったり、ばたばた。
産婦は何度も「どうなっているの?」と尋ね、
こちらは「もうすぐだよ、男の子だよ、まだ気張らないでね」の繰り返し。
 
側臥位の姿勢でかなりの時間待ちました。母体音だと思っていたのが胎児の心音なら、もうかなり仮死が進んでいるか、胎内死亡している可能性だってあります。陣痛が緩慢なのが、思考を胎児仮死へと結びつけます。
 
この子が助けられなかったら、本当に止めよう。
もうクリニックを開かないでおこう。なんども自分に言い聞かせていると不思議と落ち着いてきて、
手に温度が戻ってきました。頭の中で何度も胎児の姿勢の様子を浮かべます。手を出して、下に引っ張る、そうだ、大丈夫。
 
産婦も落ち着いて来た時にいい陣痛が続きました。
単殿位で上肢が出た時に赤ちゃんの皮膚の色が良好で、手を動かしているのが見えました。
生きてる!!!!
引っかかるなよ!姿勢を下に持ち、少し牽引すると頭がつるん・・・!
 
しばらく呆然として、何も考えられませんでした。ただ手だけは忙しく赤ちゃんの羊水を拭き取り
母親に抱かせ、といつもどうりの処置をしています。イメージ 1
赤ちゃんは予想より大幅に元気で、クリニック閉鎖はとりあえず無くなりました。
 
トラウベだから拾えなかった心音にも意味があったのかもな・・・。
もう少し頑張ろう、
陰嚢が圧迫で腫れていますが、これは明日には引くでしょう。
 
イメージ 2
赤ちゃんに何か教えられたかもしれません。でもまだ変な緊張が残っています。
 
元気で生まれてくれて本当に良かった・・・。
 
横の写真が服を着た後の赤ちゃん。こちらの心配をよそに、全然苦しくなかったという表情で母親を見つめています。
 
 
もう一人は3人目のお産。
きれいなお産イメージ 3
 
 
親子元気なことが何よりの喜びです。
どうか元気に育ってほしい、
そう祈りながら、書いています、
 
ご支援に感謝しております!!