血中脂肪酸分画について思いの丈を述べる | えりっき脳内議事録(えり丸)

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Diary and memo written by a pathologist.

本日は久々に医学っぽい話題について書いてみようと思います。医師として立場からではなく、ω-3脂肪酸の有用性を信じてやまない一般人として記事を執筆しておりますので、その点をご了承ください。(とは言いつつも、ω-3脂肪酸の有用性については、科学的な根拠が多く蓄積されつつあり、現在注目を集めています。)

1 脂肪酸とは 種類・特徴など

脂肪酸は下表のように分類されます。ヒトでは、ω-6/ω-3不飽和脂肪酸を体内で合成できないため、食事により摂取する必要があります。そのため、ω-6/ω-3不飽和脂肪酸を必須脂肪酸と呼びます。

脂肪酸の種類

2 疾患との関連性

多価不飽和脂肪酸からは、下図のようにエイコサノイドなどの様々な生理活性物質が作られます。特に、AAから派生するものは炎症を惹起する作用を持つものが多く、EPAやDHAから派生するものは抗炎症作用を持つものが多いのが特徴です。

不飽和脂肪酸とエイコサノイド

EPA/AA比が低くなると、炎症を起こす方向に働き、下記の様な疾患リスクが高まります。

1. 動脈硬化:EPA/AA比が高いと、冠動脈疾患や脳血管疾患のリスクが上昇するとの報告あり。
2. リウマチなど炎症性疾患の悪化:関節リウマチ患者において、EPA/DHA製剤を内服すると、ロキソニン(鎮痛剤)の使用量が減少したとの報告あり。
3. 月経困難症(子宮腺筋症、子宮内膜症):子宮腺筋症では対照群と比較してAAが優位に高く、(182±40.0ug/ml, 157.3±31.3ug/ml, P=0.02)、EPA/AA比は有意に低かった(0.25±0.1, 0.36±0.17, P=0.02)との報告あり。

EPA・AA・DGLA単独の絶対値は個人差が大きいため評価が難しいようで、専らEPA/AA比を指標にするのが良いようですが、現在のところ明確な基準値は設定されていません。参考に、EPA/AA比は、欧米人で0.1-0.2、日本人で0.5-0.6、イヌイットで7.0-8.0と報告されています。欧米人並に極端に数値が低い場合は、食生活の改善や投薬の必要があるだろうと言われています。

上図からはえごま油などでALAを摂取するだけでも効果があると推測されますが、実際には、摂取したALAの10~15%しかEPA・DPAに代謝されず、 EPA・DHA直接摂取と比較すると効果が弱いと言われています。

3 脂肪酸分画を改善するには?

まずは、食生活の改善。肉食を魚中心の生活に。また、えごま油やしそ油によりALAを摂取するのも良いと推測されます。厚生労働省は成人においてEPAとDHAを合わせて1g/日の摂取を推奨しており、サバであれば100gで必要量が摂取できます。

食事療法が面倒という人は、サプリメントを利用するのも手。各メーカーからEPA製剤やEPA/DHA製剤が多く市場に出回っています。ω-3脂肪酸の含有量とEPA/DHA比は様々ですので、十分量のEPA/DHAを含んでいるかを確認するとよいと思います。

中性脂肪が高い人や、既に動脈硬化性疾患がある方は、処方薬を使用するのが手っ取り早いかと思います。2015年1月現在で、EPA製剤としてエパデールが、また、EPA/DHA製剤としてロトリガが使用できます(たぶん)。これに低用量アスピリンを併用するのが理論的にはベストではないかと思います。ただし、若い人は保険の関係で処方薬は使用しないほうが良いと思います。例) ロトリガ® 2gにEPA-E 930mg、DHA-E 750mgを含有

ちなみに、私はEPA/AA比が0.31と低めでしたので、早速サプリメント内服を開始しました(汗) サラダ油もえごま油に変えた方が良いのかなぁ…。うーむむ。食生活の乱れを矯正するのは難しいです。

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ヒトでは進化の過程で失活した代謝酵素が沢山あります。本日話題にあげた必須脂肪酸だけでなく、ビタミンCも合成できません。また、プリン体は分解できません。これらの酵素を遺伝子組み換え技術で導入し、さらに葉緑体も導入して、日光を浴びるだけで自活できるような超人類を作ってみたいですな。薬に頼ることなく健康に暮らすことが出来るのはもちろん、食事の手間も省けるので良いのではないでしょうか(笑)