位相差顕微鏡 | えりっき脳内議事録(えり丸)

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Diary and memo written by a pathologist.

AVATARの3D技術で、3Dメガネなるものをかけるらしいということで、
3Dメガネとはなんぞや、という疑問を抱き、ちょこっと調べてみた。
どうやら偏光メガネらしい。

光の性質をうまく利用した技術なんだろね。

そういえば、我々も光の性質を利用した簡単な装置を使っております。その名は位相差顕微鏡
この顕微鏡にも「光の性質」の概念が必要なのですと。
3D技術云々はAVATARを見てから記事にしようと思うので、
今回は位相差顕微鏡の原理について自分なりの理解に至った思考経路をご紹介。

言っときますが、ド素人の勝手な興味・うんちくなので間違いはあるはずですので
注意してくださいな。高校物理レベルの知識で、あーだこーだ考えてみました。
逆に言うと、高校レベルの知識で理解できるので、読んでみてくださいな。

まず、位相差顕微鏡についてですが、普通の光学顕微鏡に比べて何が違うのかというと、
透明な試料のコントラストを強くする」ことができる顕微鏡なのです。
過去に理科の実験で細胞1個を光学顕微鏡で観察したとき、
透明で分かりにくいという経験をされた方は多いのではないでしょうか?

これは、下図のように、透過光と試料の散乱光が重なり合って(光学顕微鏡の合成光)、
その合成光の強さ(図でいうベクトルの絶対値)がほぼ同じ大きさなのです。
しかし、図からわかるように、散乱光は、 強さ(ベクトルの絶対値)・位相(ベクトルの向き)が
多種多様なのだそうです。(薄膜での光の屈折で説明可能です)

染色により光学顕微鏡で見やすくするというのも手ですが、
染色という工程はとても煩雑であり、生きた細胞には毒性があることが多いのです。
何かいい方法はないか!?

その昔、実際に透明に見えていても、散乱光の位相には違いがあるという事に着目した人がいました。
彼は、位相の違いを利用して画像にコントラストをつけようじゃまいか、と思いつきました。
彼は、そのアイディアにより、位相差顕微鏡を発明したのです!(1950年代にノーベル賞受賞)

原理は、背景透過光と試料の散乱光の位相を相対的にずらしてやろうというもの。
今回は、背景透過光を1/4波長だけずらしています(緑ベクトル)。
位相をずらした背景透過光と試料の散乱光を足し合わせると(紫ベクトル)、
得られる光の強さに強弱がつく=コントラストの強い画像が得られるというわけ。

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次に、実際の位相差顕微鏡の大まかな構造を見てみましょう。

基本的に透明な試料を対象としていますので、
原則、試料からの散乱光に比べて、透過光が圧倒的に強いのです。
また、背景透過光の位相だけを変化させなければならないので、
光を透過光と散乱光に分解する必要があります。
まず、リング絞りによって、試料に照射する光の方向を特定の方向に絞ります。

絞りをいれることで、透過光(赤色)は、
レンズを通した後に、ある一点で光の経路が合流することがわかります。
逆に、散乱光(緑)は、この一点は通過しません。
つ・ま・り。透過光と散乱光の光路の違いを利用して2者を分解するのです!

ここまで出来れば後は簡単。
透過光は散乱光に比べて圧倒的に強いので、光の振幅(強度)を弱め、
さらに位相板(要するに、薄膜)で位相を1/4波長分だけ変えてやればOK。

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