34.④

守「母さん、きたよ」

病室に入り、ベッドの近くに腰掛ける守


母親「守、なんか…明るいわね」


(俺ってそんなに顔に出てるのか…?)

守「母さんまで…フッ」


母親「さっきまでね、智樹くんが来てくれてたのよ

不思議ね、私も智樹くんが来てくれた日には調子がいいわ…ふふふ」

守「いい加減、母さんも素直になればいいのに」

母親「この歳になると、中々ね…

それに申し訳ないのよ…こんな病弱で」

守「智さんがいいって言うなら良いじゃん」


母親「そうよね…守が結婚したら考えるわ」

クスクスと笑う母親


守「なんだよ、それ…プレッシャー掛けるなよ」

口角をあげる守


母親「早く連れてきてよね」

ニヤッと守と同じように口角をあげる母親

守「はいはい」


2人は他愛もない話を終えると

母親は検査があると言って出て行き

守も病院を出てスーパーへ向かった


食材を選びながら夕飯を考える守

(パスタでいいか…)


帰り道、美乃里のことを考えていた守

(美乃里の過去は…本当に…どん底だ…

何年も抱えて、耐えてきた苦しみを

俺がどうこう出来る訳では無いけど…

真実を知った今、俺は美乃里にどう接するのが正解なんだろうか…

美乃里は何を求めてるんだろうか…

俺は美乃里を求めてしまってもいいんだろうか…)


自問自答しながら自宅へと帰る守


ガチャ


守は部屋に入るとテーブルの前で

ぼーっとしている美乃里を見つける


守「美乃里?」


ビクッと肩を揺らし

美乃里「あっ、守さんおかえりなさい」

ニコッと笑う美乃里に心配そうな顔の守


守「なんかあった?考え事?」

守は美乃里の顔を覗き込む


美乃里「んーん、今ちょっとうたた寝しちゃってて

起きたらスッキリして…

いつもは夢を見て気持ちが重くて…はぁ…ってなるの。

なのに夢も見ないし…不思議な感覚で…」


守「うん、うん、良かった」

守はにっこりと笑いながら美乃里の頭を撫でた

美乃里「悪夢…見なかった…凄いな…守さんって」

守「え?俺?」

拍子抜けした声で返す守


美乃里「守さんのおかげ」

ニコッと笑う美乃里に照れながら顔を隠す守


(可愛いなぁ…)

守「よし、ご飯作るか」


美乃里「んっ」


2人はキッチンで仲良く夕食作りを始める

出来た料理をテーブルに並べ仲良く食べる


守は母親や智樹の話しを

美乃里は祖父母や節子さんの話しをした


美乃里の心はどんどん軽くなっていく

守の存在が美乃里の鎖を解いていく…