27.③

美乃里 「ここ…かな…?」

携帯の画面を見ながら何度も確認する美乃里


美乃里が自宅を離れた日

美乃里は新幹線に乗り込み、2時間程かけて

知らない土地に来ていた

ホテル泊まりを続け、仕事もテレワークでこなして

5日目、美乃里はとある人に会いにホテルを出た


マップを見ながら角のマンションの前で立ち止まる

美乃里は迷いながらもエントランスに入っていく

携帯画面で確認しながら部屋番号を押す

ピンポーンと機械音が鳴る

「はい、柏木です」

美乃里 「あ、おはようございます、荒木美乃里です」

「今開けるわね」


オートロックが解除され、自動ドアが開く

美乃里は部屋番号の階まで行くと

柏木の表札を見て自宅前のインターホンを押す


押した瞬間、玄関のドアが開く


「美乃里ちゃん、久しぶりね

来てくれてありがとう、会いたかったわ」

優しい笑顔で迎えてくれたのは

柏木 節子さん、前に美乃里に助けられたと言って

警察署で出会った年配の女性だ


(柏木さんが私に会いたいと言ってなかったら

守さんと出会うこともなかったのかなぁ…)

美乃里も優しく微笑み挨拶をする

美乃里 「節子さん、お久しぶりです

今日はお時間を作って頂きありがとうございます」


節子 「もう、そんな固い挨拶はいいから

入ってちょうだい」

節子はおいで、おいでと手招きする


美乃里 「お邪魔します」


節子 「はぁーい、今お茶出すわね、

そこに座って待っててちょうだい」


美乃里は言われた通りテーブル椅子に腰掛ける

美乃里 「あ、節子さん本当にお構いなく」

申し訳なさそうに言う美乃里


節子 「私がしたいの

もう、会えて嬉しいんだから〜

こっちに引っ越して来ちゃったじゃない?

会えるのはまだまだ先になっちゃうかしらって思ってたんだけど美乃里ちゃんから連絡貰えて

本当に嬉しくて、出会いはあんな形だったけれど

美乃里ちゃんとの縁は大事にしたいって思ってるの」

節子はとても優しい顔で美乃里を見る


美乃里 「そんな…こと言って頂けて私も嬉しいです

節子さんから連絡頂いた時、とても嬉しくて

あの時のまたいつか…を覚えていてくれて、こんな小娘にまた会いたいと言って頂けて…

私、節子さんにお会いしてから人生がガラッと変わった気がしていて…節子さんとの出会いは自分の中で何か意味があるんじゃないかな…って…

図々しくすみません」

美乃里は申し訳なさそうに節子を見つめる


節子 「もうっ、美乃里ちゃんったら

そんなかしこまらないでちょうだい

親戚の、貴方を大好きなおばさんくらいに思ってちょうだい」

節子は嬉しそうに、入れたお茶を出しながら

美乃里の前の席に腰掛けた


節子 「私もね、あれから人生がガラッと変わったわ

主人は今、治療を頑張ってるのよ

主人が小さい頃ここの土地に暮らしていてね…

戻ってきたの

今は凄く毎日が楽しいし、主人ともとても仲良しなのよ

全部、美乃里ちゃん、貴方のおかげだわ」

節子は美乃里に優しい笑顔を見せる


美乃里 「私は何も…」


節子 「美乃里ちゃんは謙虚過ぎるわ

自分にもっと自信を持って、貴方はとても素敵よ」

ニコニコと笑う節子


美乃里 「ありがとうございます」


節子 「美乃里ちゃんのお話し、聞かせてくれる?」

節子は美乃里が何かに悩んでいること

わざわざ自分に会いに来てくれていることに

何か理由があるんだと思っていた