33.⑤

「私、いつも裸になってね、お父さんがいいよって言うまで裸で立たされるの

ねぇ、お母さん、おかしいよね?

普通じゃないよね?私、嫌なのそれが…

お父さんが何考えてるのか分かんなくて怖いの」

私は少し怒ったように、むしゃくしゃしてた今までの感情を伝えた

「なんでそんなことしなきゃいけないの?」

私は涙を溜めながらお母さんに訴えていた


「美乃里、美乃里、ごめんね、気付いてあげられなくて

美乃里…ごめんなさいね…嫌だったよね…」

お母さんは私を抱きしめながら泣いてくれた

「大丈夫よ、美乃里、お母さんがなんとかするわ」


(ああ、お母さんに言えた…良かった…もう終わる…)

そう思ってた


お母さんはリビングにいるお父さんの元へ向かった

「あなた、美乃里に何してるの?」

「どうゆうつもりなの?」

「美乃里に変なことさせて…っ」

お母さんは涙を溜めて怒っていた


「美乃里か?言ったのは…

あいつが悪いことしたからだろ?罰だ罰」


「だからって…なんの意味があるのよ…裸に…っぅ…うぅ」

お母さんは嗚咽をもらし泣いていた


「あいつがそうゆう目で俺を見るからだよ

バカにしたような目でな」

バンッ

お父さんは怒ってテーブルを叩いた

昴もお父さんとお母さんの喧嘩を目の当たりにして

泣き出した


その時だった…

お父さんが持っていた焼酎瓶を振りかざし…

「うるせぇっ」

と叫びながら投げつけた


「昴」

私の叫ぶ声が聞こえた

私は昴の傍に急いで駆け寄った

頭に当たった瓶は粉々になって私の裸足の足に食い込む

「昴、す、ばる…」

意識がない昴を抱っこし、ゆさゆさと揺さぶり、何度も声を掛ける


「昴、昴?すば…る?」

お母さんもゆっくり近づいてきてぐったりする昴を見て

「救急車…」

と言って携帯を取り出す


その直後だった

お父さんが包丁を持ってリビングに入ってきた


「美乃里、俺に刺されたいか?それとも脱ぐか?」

お父さんが聞いてきた


「お母さん、早く救急車」

私はお父さんの声を無視してお母さんに叫ぶ


「美乃里」

お父さんの低い声が聞こえる


近づいてきたお父さんは抱き抱えている昴に包丁を向けた

「やめて、やめてあな…た」

泣きながらお母さんが叫ぶ


私は睨みつけていた…昴を抱きしめながら

「ん…」

その時、腕の中の昴が顔を顰めながら意識を取り戻した

「昴、すばる、すば、る」

お母さんと私の声が響く

「おね、ぇちゃん…?お姉ちゃん…お姉ちゃん」

昴が私の名前を何度も呼んだ、次の瞬間


私の手には包丁があって…血が…昴の血が着いて…

私の手を強く上から握る手に、昴を刺す感触に吐き気が止まらなかった


一瞬の出来事がスローモーションのように脳裏に焼き付いていて

どうして止められなかった?どうして振り払えなかった?私、どうして?

抱いていた昴を私の手から剥がしとったお父さんは

私に包丁を握らせ、私の後ろから私の手を強く握り締めて昴、目掛けて包丁を突き刺した…

なんの躊躇いもなく…


後ろにいるこいつの笑い声が耳元で、鼓膜で響く

私の体ごとお母さんの方に向き、包丁をかまえる


私はブンブンと首を振りながら暴れる

5年生の女の子が大人の男の人の力に敵うはずもなく

あいつの腕の中で暴れる私

「お母さんお母さん、お、母さん…昴が…す…」


お母さんもまた…昴と私を交互に見ながら…

あれはどんな表情なんだろう…怒り…悲しみ…憎しみ…

「昴…すばる…」

お母さんは昴を抱き締めた…震える手で昴の顔を撫でるお母さん

お母さんの淡いグリーンのワンピースが真っ赤に染まっていく…


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