33.①

守「黙秘…か」


守は休憩中、あの事件について少し調べていた

小学5年生の女の子が家族全員を殺害

(狂気は包丁、弟、母親、父親の順で殺害

母親が回した動画で大体の状況は把握出来たが

真実を知っている少女は黙秘を続け、少女が事件について話すことは1度もなかった…

結果、母親の動画だけが証拠となり

少女は父方の祖父母が引き取ることとなった…か

この街の事件じゃないからな…詳しくは…)


守「はぁ…ダメもとで聞いてみるか…」

RRRRRR

守は電話を掛けた

智樹「はい」

守「智さん…今、資料室にいて…あの、あの事件のこと知りたくて

でも、その…興味本位で知りたいとかじゃなくて

彼女の力になりたくて…」


智樹「はぁ…だから前にも言っただろ?

こっちから力になれる事はないんだよ、守

お前が待てねぇのも分かる

あの子の背負ってるもん、背負ってあげたいのも分かる

俺があの時のことを言ったっていい

知りたきゃいくらでも教えてやる

だけど、その資料が全てで、俺が教えてやれることもその資料と同じだ

真実は本人しか知らねぇ…

ただ、俺はあの時、人生で初めて無力だと感じた

何も出来ない…助けられない…かける言葉もない…


いいか?守…

お前は確かにあの日、俺に救われたかもしれねぇ…

だけどお前は震えてただろ?

怖かっただろ?死ぬのが、本当は怖かっただろ?

だから救えたんだよ、だから助けられたんだよ

生きたい、本当は死にたくねぇってお前の底の気持ちがそうやって思ってたからこそ

お前を助けた俺に、救われたって思えただけだ

俺は…正直、怖かったよ…彼女が…

生きてるのに死んでるみたいだった…

かける言葉もなかった…というよりも、怖くて声すら掛けてやれなかった

あの時、俺は本当は…大丈夫だって言ってやりたかった

大丈夫だから…辛かったな…って苦しかったな…って

そう…声を掛けてやれる大人がいたら

もっとあの子の未来は変わっていたのかもしれないって…あの事件を俺は忘れたことはないし

正直、今も後悔し続けてる…

だから守…真実だけを聞け、そんな資料見たって

あの子を取り巻いてた大人と同じだ

あの子の口から聞いた事だけ受け止めろ…

そろそろ仕事、戻れよ」


そう言って智樹は電話を切った


守「智さん…」

(声、震えてたな…俺、バカだなあ…

何も見えてねぇ

俺が焦ってどうすんだよ…

急いだってまた傷付けるだけだ)


守は深いため息をつくと資料室を後にして仕事に戻る

仕事をこなしながらも考える…


(分かってた…分かってるのに…

美乃里さんのことが知りたくて焦る

あー俺ってこんなに独占欲強かったか?)


守「はぁ…だせぇ…」