24.①


「はぁはぁはぁっ…はぁ…」

いつもの目覚めに少しの安心と恐怖感を覚えながら

キッチンに立つ

そしていつものようにトレーニングウェアを着て家を出る


風邪で落ちてしまった体力は直ぐに疲れて息が上がる

その息苦しささえも今は心地良い

いつもの夢とあの時の苦しさに比べたら

この息苦しさが美乃里のモヤッとしたものを消しさってくれる


AM5:58 ピコン 携帯が鳴る


《おはよう、起きてる?》

守からだ


昨夜お礼を伝えて何度か他愛もない連絡をとった

(守さん早いなぁ…)

《おはようございます、起きてます》


《美乃里さんはいつも早起きですね

少し話せますか?》


(話し?なんだろ…)

《はい、大丈夫です》


RRRRRR 返信後すぐに電話が鳴る


美乃里 「はい」

守 「あ、美乃里さんおはよっ、っとっと…ごめんね」

何かにぶつかった音がした

美乃里 「おはようございます、大丈夫ですか?」

守 「少し躓いただけ〜あれ?今外?」

美乃里 「あ、はい」

守 「こんな早くから…何か欲しいものあった?」

美乃里 「あ、いや…いつも起きたら少し運動を」

守 「いつも?」

守は少し大きい声が出る

守 「え?1人で?まだ薄暗いのに?

にしても病み上がりで?もうっ、言ってください

一緒に行くので」

美乃里 「え?いや…あの大丈夫です」

守 「えっ…」

電話口でも分かるほど守は悲しそうな声を出した


美乃里 「あ、いやあの…大丈夫って言うのはその病み上がりでっていうのに対してで

守さんと一緒にってのが嫌って訳じゃなくて

嫌って訳じゃないですよ?

ただ、いつも目が覚めて直ぐに走りに出ちゃうので

髪もボサボサでスッピンですし…

結構しっかりめに走るので…」

美乃里は少し早口で話す

守 「そうですよね、ごめんなさい…少し調子に乗ってしまいました…」

美乃里 「いや、あの嬉しいです

もし今度時間が合うような日があれば是非一緒に走ってくれたら嬉しいです

あ、電話…何か用事でもありましたか?」

美乃里は優しく微笑みながら話す

守 「ありがとう…ううん、美乃里ちゃんの声が聞きたかっただけ…まだ走る?」

守の声はとても優しかった

美乃里 「…///

いや、あ、後は自宅に戻るだけです」

(嬉しいなぁ…)


守 「嫌じゃなかったら電話…繋げててもいい?」

美乃里 「私は大丈夫ですけど…」

守 「じゃあそうしてくれる?」

美乃里 「はい」


美乃里は電話を繋げたまま走る

守は携帯をスピーカーにするとテーブルの上に置いた

そして身支度を整えて仕事に向かう


10分程で美乃里は自宅についた

美乃里 「はぁはぁはぁ…守さん?」

守 「美乃里ちゃん、ついた?」

美乃里 「はぁはぁっ…はい、つきました」

美乃里は荒い息を整える


守 「ありがとう、安心した

もう今日から出社?」

美乃里 「はい、もう随分と体調も良いので」

守 「無理はしないでね」

美乃里 「ありがとうございます

守さんも無理せずお仕事、頑張ってください」


守 「美乃里ちゃん、俺…

あー今日さ仕事終わりに少し会える?

俺は夕方くらいかな…」

美乃里 「大丈夫ですよ」

(なんだろ…大事な用事かな?)


守 「ありがとう、仕事終わったらまた連絡するね」

美乃里 「はい」

守 「じゃぁね」

..