22.③

(涼介…涼介…逢いに来たよ…

お花がいっぱい…写真も…あ、私との写真も飾ってくれてるんだ…私からのプレゼントも…

私と涼介でいっぱい…懐かしいな…これ)

美乃里は目に涙を溜めながら写真を覗き込む

付き合いたての若い頃の写真だ


美乃里は静かに仏壇の前へ座り手を合わせる

その姿はとても綺麗で涼介への愛が伝わるようだった

美乃里の目からは静かに涙がこぼれ落ちる

守と母親はそんな美乃里の姿を静かに見守っていた


美乃里はじっくりと涼介に手を合わせ、

母親のところへ行くと

美乃里 「涼介さんに会わせて頂きありがとうございます」

と声を震わせながら深く頭を下げてお礼を伝える

母親 「美乃里ちゃん、顔を上げてちょうだい

こちらこそ逢いに来てくれてありがとう

ずっと待ってたわよ

涼介が刺されて意識不明って聞いた時は

なんで…どうして…って思いで病院に向かったの…

だけど、涼介の想いがね沢山伝わってきたわ

貴方への

だからね、涼介が亡くなった時、きっと今の涼介や私たちに会ったら美乃里さんは自分を責めるんじゃないかって…

涼介も私たちもそんな事は望んでなかったから

亡くなった時も葬儀にも呼ばなかったの

それは美乃里さんにとっても私たちにとっても

良い判断だったのかな…って考える時があるの

あの時、会わせてあげれなくてごめんなさい」


美乃里は涙を流しながら首を横に振る

美乃里「謝らないでください

お母様達の判断は間違えてなかったと思います

私はあの時…涼介に会っていたら

取り乱していたと思います…

こうして私の気持ちの整理ができて、涼介に会いに来れて、とても幸せです

涼介さんとも沢山お話し出来ました」

美乃里は優しく微笑む


母親 「またいつでも来てちょうだい」

美乃里 「ありがとうございます」


守 「私も失礼致します」

守は母親に断りを入れて仏壇に手を合わせる


母親 「美乃里ちゃん、これ」

母親は細長い箱を美乃里に渡す

美乃里 「これは…」

母親 「涼介の部屋にあったの、美乃里ちゃんもうすぐで誕生日?それとももう過ぎちゃったかしら…

この手紙も一緒にあってね、ごめんなさい誰宛か分からなかったから中を見ちゃったの

お誕生日おめでとうって書いてあったから…

久しぶりにこんなに丁寧な涼介の字を見たわ

美乃里ちゃんを大事に思っていたんだなって凄い伝わってね、美乃里ちゃんが重く受け取ってしまわないか…

って考えたんだけど迷惑じゃなかったら貰ってくれる?」


美乃里 「迷惑なんて…嬉しいです

ありがとうございます」

美乃里は目に涙を溜めて優しく微笑む


細長い箱を手に取り開けると素敵なネックレスが入っていた

美乃里は静かに涙を流しながら

ネックレスを手に取り自分の首へ付ける

美乃里 「本当にありがとうございます」


母親 「とても似合うわね、受け取ってくれてこちらこそありがとう…

美乃里ちゃん、約束して欲しいことが1つだけあるの…」


美乃里 「はい」

美乃里は姿勢を正し、母親の顔を真剣な表情で見つめる


母親 「これから先、涼介の事は忘れてとは言わないけど

涼介を思って美乃里ちゃんが前に進めなくなるのは嫌なの…

美乃里ちゃんを責める人は誰もいないの

本当よ?誰1人と貴方が悪いなんて思ってないの

だからね、自分を絶対に責めないで

そして沢山の人と出会って、恋愛もして

美乃里ちゃんが幸せになれる選択をして欲しい…

その日々の中でたまに涼介を思い出して元気かな?と思ったらいつでも会いに来て?いい?」


美乃里 「はぃ…」

美乃里は涙を流しながら何度も頷いた


少しお茶を飲み、守と美乃里は身支度を整える


守 「この度は私たちが居ながら本当に申し訳ありませんでした。涼介さんにご挨拶できる機会を頂きありがとうございます。」

母親 「あらあら、貴方も毎回いいわよ、もう何回謝るのよ…

こんなしつこい刑事さんもいるのね」

母親は美乃里に向かって意地悪に笑ってみせた

美乃里 「ふふふ」

母親と美乃里は控えめに笑い合う

母親 「刑事さんも美乃里さんをここまで連れてきてくれてありがとうね

貴方は本当に優しいわね、なんか伝わるわ…

あなたの思いはいつも真っ直ぐだから、嘘がなくて

私は好きよ、ふふふ」

母親に褒められ、照れる守を見て笑う美乃里


守 「では、失礼致します」

美乃里 「お父様にもよろしくお伝えください

本当にありがとうございます」

母親 「美乃里ちゃんいつでも遊びに来てね」

母親は優しく美乃里に問いかける

美乃里 「はいっ」

美乃里は笑顔で返す

守と母親は美乃里の笑顔を見て微笑んだ


2人は車に乗りこみ、涼介の家を出る


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