20.④

美乃里が見る方向には涙目でこちらを見ている

皐月の姿があった

美乃里 「さ…つきおばさん?皐月おばさん?」

美乃里は皐月の元へと駆け寄る

皐月 「ごめんなさい、美乃里ちゃん、さっきお墓で見かけてね、会いたくないとは思ったんだけど

どうしても近くで美乃里ちゃんを見たくて…」

美乃里 「会いたくないなんて…そんな…

皐月おばさん泣かないで

会いに来てくれてありがとう…」

美乃里は皐月の顔を見て優しく微笑んだ


皐月 「美乃里ちゃん、ごめんね?

良く来てくれたね、千佳子さんと昴くんのところに

頑張ったね…ほんと…辛かったでしょ」

皐月は美乃里を優しく抱きしめる

美乃里 「ありがとう、ありがとう皐月おばさん」


皐月 「少し話してもいい?」

美乃里 「うん」

2人はバス停のベンチに座った


皐月 「お墓、初めて来てくれたわよね?

お父さんは足が悪くなっちゃってね、毎日は行けて無いけど私とお母さんで毎日行ってるから…

誰か来たら直ぐに分かるんだけどね…」

美乃里 「はい、初めて来ました…

実はこの間、私の大事な人が亡くなってしまって…

その時お母さんが夢に出てきて、その人を連れ行ってくれたんです…だから…

ああ、お母さんと昴に伝えなきゃなって思って…

ずっと来ないで、お墓のお掃除も、お参りも私がするべきなのに…挨拶もろくにせず本当にごめんなさい」


皐月 「何言ってるのよ、ごめんなさいなんて…

言わないで、美乃里ちゃんがこんなに立派に育ってくれて…もう、それだけで本当に十分なんだから」


美乃里 「皐月おばさん…」

皐月 「美乃里ちゃんを大事な家族と思っているのはお母さんもお父さんもずっと変わらないからね

私達に何か出来ることがあるなら何でも言ってね

お母さんもお父さんも美乃里ちゃんに会える日をずっと…ずっと待ち望んでてね…

美乃里ちゃんさえ良ければまたここに遊びに来て?」


美乃里 「はい…またお母さんと昴にも会いにくると約束したので…

おばあちゃん、おじいちゃんは迷惑じゃないですか?」

皐月 「もうっ!何言ってるの」

皐月は溢れそうな涙を拭いながら美乃里の手を取り、強く、強く握りしめる


皐月 「美乃里ちゃん、お願いだから

貴方は自分を責めないで…貴方は悪くないのよ

もう、いい加減自分を責めるのは止めなさい」


強く、とても強い眼差しで美乃里を見つめる皐月


美乃里 「皐月おばさん…ありがとう

私、こんなんで本当にごめんなさい…

まだまだ弱くて…もっと強くならなきゃいけないのに」

美乃里は涙を溜めながら優しく微笑む


皐月 「貴方は十分すぎるくらい強いわ」


遠くからバスが来るのが見える


美乃里 「皐月おばさん、また必ず会いに来ます

その時はおばあちゃんとおじいちゃんに会いに行ってもいいかな?」

皐月 「もちろん、2人とも喜び過ぎて

お父さんなんて足が治っちゃうかもしれないわ」

皐月は冗談交じりでアハハと笑っていた

それにつられて美乃里もくすくす笑う


バスが到着して乗り込む美乃里


美乃里 「皐月おばさん、またね

会いきてくれてありがとう

私、とても嬉しかった…本当にありがとう」


美乃里は手を振り、皐月は美乃里の言葉に大きく何度も頷き手を振っていた

皐月 「美乃里ちゃん、また必ず来てね」


2人は見えなくなるまで手を振りあっていた


皐月 「良かった…良かったわ本当に…

会いに来て良かった…」

皐月は美乃里が見えなくなると急いで帰路に着く


皐月 「お母さん、お父さん!」

お母さん 「今日は大忙しね、また何かあったの?」


皐月 「実はね、美乃里ちゃんに会いに行ったの…」


お父さん 「何だって?会ったのか?美乃里に…」

お母さん 「あら、買い物じゃなかったの?」

皐月 「買い物には行ったわよ?

でも…やっぱり一目会いたくて…

もし、まだバス停にいたら…と思って覗いて見たら

美乃里ちゃんがバス停のベンチに座ってて

私、話したくて…美乃里ちゃんが気付いてくれて…」


お父さん 「美乃里は嫌がって無かったか?ワシらのこと顔も見たくないって言って無かったか?」

お父さんは悲しそうに、不安な面持ちで聞く


皐月 「ううん、全然

本当に千佳子さんに似て、優しくて綺麗で思いやりのある昔の美乃里ちゃんのままだったよ

ずっと来なくてごめんなさい…なんて私に言ってね…

ごめんなさいなんて美乃里ちゃんが言うことじゃないのに…」


お母さん 「うん、うん、そうね」

お母さんは涙ぐみながら皐月の話しを聞く


皐月は美乃里との事を話し、今度 来た時は会いに来てくれると言うと

2人はとても喜び、今からワクワクとドキドキが

止まらないと美乃里に会えるのを楽しみにしていた


この家族もきっと、あの日のどん底の柵からまだまだ抜け出せていないのだろう…


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