20.②

美乃里 「ふぅ…お母さん、昴…きたよ

私は元気にしてるよ…


ダメだよね…私ばっかり生きて…

本当にごめんなさい」


初めて来るお母さん達のお墓を目の前に

美乃里の気持ちは前向きではなかった


美乃里 「ずっと来れなくて…来てもいいのかなって…

分からなくて本当にごめんなさい

最低な娘で本当にごめんなさい…


うう…ひっ…」


美乃里は溢れる涙を止めることは出来なかった


美乃里 「あの…ね

今日はどうしても伝えたくて…


私の大事な人が亡くなってしまったの

また、私のせいで…

夢でね…お母さんと涼介が出てきて

お母さんが涼介を迎えに来てくれていて…

一緒に居てくれてるのかな…

お母さん…昴、涼介…本当にごめんなさい」


(本当はありがとうって言わなきゃいけないのに…) 


美乃里は大粒の涙を流しながら空を見上げる

美乃里 「ふぅ…お母さん、また来てもいい?」

(来てもいいのかな…今度はちゃんと…)


美乃里は電車の中で書いた手紙を置いて

少しお墓の周りを綺麗にし、お水を上げて

1時間くらいすると「帰るね」と伝え、お墓を後にした


..


「美乃里…ちゃん?」

美乃里の姿を見て涙を流す女性がいた


美乃里は気付かずに帰路に着く…

女性は急いで美乃里とは逆方向へ戻って行く


ガラッ

「お父さん、お母さん!!大変!」

お父さん 「どうした、皐月(さつき)そんなに慌てて」


女性の名前は皐月(さつき)

年齢は40代後半くらいだ


皐月 「今、い、ま美乃里ちゃんがお墓に…」

お母さん 「美乃里ちゃんが?本当に美乃里ちゃんだったの?」

お父さん 「美乃里…来たのか」

皐月 「どうする?追いかける?まだ遠くには行ってないんじゃない?」

お母さん 「お父さん…」

お父さん 「今日は止めておこう…」

お母さん 「…美乃里ちゃん元気に暮らしてるのかね

会いたいわねぇ」

お父さん 「とりあえずお墓に行くぞ」

お母さん 「お父さんは足が悪いんですから待っててください…ね?」

お父さん 「そんなん知らん、バカ息子に言わないかん

美乃里が来たって

やっと母親と弟に会いに来てくれた…って…

うぅ…美乃里が…ようやく…頑張って来てくれたんだな…」

涙を流す父親につられて母親も皐月も涙を流す


お母さん 「とりあえず…ね、お父さん

お家の仏壇に報告しましょう」


3人は仏壇の部屋へ行くと手を合わせた

そこには

美乃里の母、千佳子(ちかこ)と弟、昴の写真と

その隣の離れた位置に男性の写真が飾ってあった

この老夫婦の息子で、皐月の兄であり、

そして美乃里の父親の圭介(けいすけ)だ


お父さん 「圭介、美乃里が千佳子さんと昴に会いに来てくれたんだってよ

お前、ちゃんと美乃里のこと見てるんか?

お前が美乃里の幸せ奪って…美乃里がどんな思いで…」

また涙を流す父親

お母さん 「お父さん…」

父親の背中を摩る母親


皐月 「私、お墓行ってくるね

お母さん、美乃里ちゃんに兄さんのお墓は教えてないよね?」

お母さん 「教えてないわよ、圭介のお墓は反対側だし、高橋は沢山あるから気付かないと思うわよ」

皐月 「分かった」


皐月は家を出て、荒川家之墓へ向かう

(お花買ってきてくれたのね…飾っておかなきゃ)


パラッ


皐月 「ん?手紙?」

下に落ちた手紙を拾う皐月


宛名には

お母さん、昴へと書かれていた


皐月は風で飛ばされないようにして

「ありがとう」と呟いた


..