19.①

警察署に着き、美乃里の聴取が始まる

守 「美乃里さん、大丈夫ですか?

詳細を色々聞くことになりますので

体調が良くなかったり、何かありましたら教えてください」

美乃里 「すみません、お気遣いばかりさせて…

大丈夫です

よろしくお願いします」


美乃里は出会った日からのことを少しづつ話していく



智樹 「守は聴取取れたか?」

悟 「今から荒川 美乃里の聴取です」

智樹 「そうか」

悟 「中根雅紀と父親も今からですか?」

智樹 「ああ、父親はもう部屋で待機中だ

俺が連絡したら中根 雅紀を連れて来てくれ」

悟 「分かりました」


コンコン

智樹 「こんにちは、中根和弘さんですね?」

和弘 「はい、この度は息子が…本当に申し訳ございません…」

和弘は智樹の姿を見ると席を立ち、頭を下げる


智樹 「起きてしまったことです

これからどうしていくかが大事です…

頭を上げてください」

和弘 「ありがとうございます

本当にすみません」

智樹 「座って話しましょう」

和弘 「はい」

智樹 「だいたいの話しは伺っています」

和弘 「はい、あの…

雅紀が刑務所を出た後は私のもとへ帰ってきて欲しいと思っておりまして…

その為に今は仕事もして、家もしっかりあります」

智樹 「そうですね…そこら辺の事も色々 調べさせて頂いていますが

雅紀さんが刑を終えた後、2人とも薬物への前科がある状態です

今、貴方にその意思が無いとしても

息子さんがもし目の前で再び薬物に手を出してしまう可能性もあります

ましてや、貴方に恨みがあったとするなら

尚更、可能性は高いのではないでしょうか?

貴方への当てつけで、もし、刑が終えても同じ事を繰り返してしまっては

今回の事件で失われた命を我々は

無駄にしてしまうのではないかと思っています

無駄にしない為にも

この先は別々の道を歩むのが最善ではないでしょうか?」

和弘 「はい…あの、その通りだと思います」

智樹 「では、雅紀さんに会うのは」

和弘 「それでも、すみません…あの、はい…

本当にすみません

大事な人を亡くす悲しみはとても分かります

亡くなった方へどんな償いをしたらいいのか

私も一生の課題だと思っております

私がっ…私が…私の罪がこのような事に繋がってしまった…

あの2人が私を憎むあまり、私への復讐の為に

このような罪を犯してしまった…

私は刑務所で毎日、自分の過ちと向き合いました

自分が犯した罪を頭に叩き込みました

妻を殺した記憶がない私は…警察の方から聞いた事を全て紙に記し、毎日毎日読みました

それでも信じられませんでした…

妻は優しくて…誰よりも家族想いで自分の事より周りを大事にする妻を私が殺したなんて…そんな事っ…

私は…何が正解なのか未だに分かっていません

刑務所で何度も自分を殺めたいと思いました

ですが、その度に妻の夢を見るんです

雅紀をお願いします…って…自分を許しなさいって…」

和弘は泣き崩れる


智樹 「中根さん、我々も正解は分かりません

今回の事件での犠牲者は亡くなった方だけではありません

一般の方、全く関係の無い人達がたくさん巻き込まれているんです

たくさんの若い、これから未来のある子たちが

大きな犯罪に手を貸し続けているんです

その大元だったのはあの2人ですよ

貴方への復讐の為にこれだけ大きな組織を2人で作り上げ、貴方への復讐の為に薬に手を染めて

そして…勇気を出して行動した人達が犠牲になった

この悔しさが貴方に分かりますか?中根さん

誰も貴方を責めやしません

罪を犯したのは本人達であって、被害にあった女性もご家族も…復讐の為とは知らないからです

ですが、我々は知っています

ですが貴方を責めてる訳ではありません

少しでも同じ過ちが繰り返される事を防ぎたいだけなんです

だから中根さん…

貴方は雅紀さんに会うべきではないです」

智樹は怒気を強めながらもなるべく柔らかな口調で思いを伝えた


ズズ…ズズズッ…

和弘の鼻を啜る音が響く


和弘 「その通りです…本当に申し訳ない…

自分勝手で…本当に申し訳ないです」

和弘は頭を下げ、涙を零す


智樹 「少しお待ちください」

智樹は席を立ち、部屋を出る

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