18.①

はぁ…ハァハァはぁっ…

ドンッ

「お母さん逃げて…お願い逃げて」


美乃里 「はあ…やっぱり見るか…

はぁ…涼介…会いたい」

美乃里はいつもの夢で目が覚める

走りたい衝動を抑え、窓際に立ち外を眺める


時刻は0時を過ぎたところだった

美乃里 「私…何時に寝たんだろう…20時過ぎだっけ」

ぼーっとする頭で考える美乃里

テーブルに置いていた携帯を手に取る


美乃里 「ん?」(何これ)

テーブルに置いてある見覚えのない袋を手に取る

ゴソゴソ…

中を覗くと小さな紙に

“良かったら使ってください”

“冷蔵庫に甘いもの入れておきました”守

シンプルなワンピースが2着程入っていた

冷蔵庫にはプリンとケーキが入っていた


(部屋着でも外でも使えそうだな…

後で有難く頂こう

守さんわざわざ持ってきてくれたんだ…)


美乃里 「ありがとうございます」

美乃里の顔はとっても優しい表情だった

いつもの悪夢を忘れるかのように穏やかな気持ちになっていた

美乃里はベッドに座り、手紙の続きを書く


私の命の恩人、涼介へ

涼介、とてもとても会いたいです

涼介が見てる景色はどんな景色かな…

寒くない?寂しくない?

私は涼介を失ってとても寂しいです

私は涼介の愛に答えることはなかったけど

貴方を特別に感じていたことは本当だよ

特別だったの

私の人生の中で涼介の存在は大きくて、

いてくれる事が当たり前だったのに

もう声も聞けないんだよね

美乃里、みのちゃんって…

貴方はいつも暖かくて沢山の愛を与えてくれて

真っ直ぐで素直で優しくてヤンチャで…

私はこれでいいのかな?

ねぇ、涼介

戻ってきて


美乃里 「はぁ…ダメだな」

美乃里は溢れる涙を拭うが、

目の前の便箋は涙で文字が滲んでいく


(戻ってきてなんて無理なのに

いないのに…また私は涼介に心配かけて…

はぁ、涼介、なんでいなくなっちゃうの)


美乃里はどれだけ涙を流しただろう…

何度も何度も思っても、願っても

届かないものはある

届かないと分かっているけど

遺された人達は自分を保つすべを吐き出すしかない


美乃里は何度も書き直す

涼介が心配にならないように

大丈夫だよ、ありがとう…と


(よし、書けた!涼介、大丈夫だよ、私

私…大丈夫だよね)

美乃里は何度も言い聞かせた


真っ直ぐで素直で優しくてヤンチャで…

涼介と過ごした彼女としての時間も

今までの時間も全部全部、絶対に忘れないよ

涼介、貴方は私のヒーローだよ

どんなときも…

私に沢山の特別な時間をありがとう

私を救ってくれてありがとう

私は大丈夫だよ、涼介

たまに貴方を思って涙する時もあると思うけど

涼介が助けてくれた私を、大事にするね

きっと私のお母さんにも会えたよね?

弟とも遊んであげてね

いつか、また会える時まで待っててね

少しだけバイバイだね、またね涼介


美乃里は手紙を書き終え、携帯を見る

時刻はAM4:38

(もうすぐで朝か…寝たらまた夢見ちゃうかな…

どうしよう…)


..