17.④

守は待っていた同僚の車に乗り込む

悟 「お前、何か顔がニヤけてないか?」

守 「そんなことない」

(あー不自然じゃなかったかな…

涼介さんの事もあったし、弱ってるところを…

嫌な奴って思われなかったかな…

いや、本当に深い意味はなかったし…

ご家族も確認出来なかったから

頼れる人いるのかな?って心配になっただけで…

別に大丈夫だよな…)

悟 「いっ」 「おーいっ」

守 「え?」

悟 「なにビックリしてるんだよ、話し聞いてるか?」


守 「え?ごめんな、何か話してた?」

悟 「おい、おいどこから聞いてねえ?」

守 「悪い、何も聞いてねえ」


悟 「嘘だろ!

服部洋平は薬のせいでまだまともに話しが出来てない

中根雅紀は体内から薬物は確認出来たが

話しは出来る状態だ智樹さんが中根を担当してる

俺は服部に話しを聞いてるが治療を優先した方がいい気はする

後、昨日この情報を匿名で送った奴が来て

それが中根雅紀の父親だった

父親はどうにか息子と話しをさせてくれって言ってる

聞けば父親も薬物と殺人で捕まっていて最近出所したばかりだったみたいで

この父親に復讐したくて服部も中根も薬に手を出したとか何とか…まぁ、まだ色々調査中だが

お前はどうする?このまま荒川美乃里の聴取でいいか?」


守 「まだ居るか?その父親」

悟 「ああ、いる」

守 「俺、少しその父親と話せるか?」

悟 「分かった」

守 「荒川美乃里さんは明日迎えに来てそのまま聴取にはいる」

悟 「分かった」


警察署に着くと守は父親の元へと行く

守 「こんにちは、近藤守と申します

お話し聞いても宜しいでしょうか?」

和弘 「はい、宜しくお願い致します」

和弘は今までの自分が陥ってしまった薬物のこと、

それで妻を殺したこと、2ヶ月程前に出所し、

服部洋平と息子の雅紀と会って運び屋を頼まれたこと

そして拒否し、その後 記者の健太に会い、

カフェを調べて欲しいと頼み、健太が動き出すと同時に警察に匿名でカフェの情報を流したこと


和弘の話しは2時間ほど続いた


守 「分かりました。ですが貴方が雅紀さんにお会いしても今の雅紀さんには憎しみしかないのでは?

どうしてそんなにお会いしたいのですか?」


和弘 「私は…私は凄い過ちを犯してしまいました

ですが、それは過去であって

今はその過ちを胸に前に進んでいます

忘れてしまった訳ではなく、僕だけは僕自身を許してあげなければ僕の過ちは誰からも許して貰えません。

誰かがどん底から救ってあげなければ

人は本当の意味で這い上がってこれません

私は全て失い、気付きました。

憎まれても恨まれても僕が真っ当に前を向くには

自分自身が自分を許してあげることだと…

雅紀は…息子はきっとまだまだあの日のどん底にいたままで…きっと救えるのは本人か、父親である私しかいません。僕は息子を救ってやりたいんです

どん底から…」


守 「分かりました。

和弘さんの気持ち良く分かります…

私もどん底というものを経験をした事があります

そして、私も自分のことを自分で許しました。

1番難しいですよね、自分を認めて、許してあげるということは…

和弘さんの想い、雅紀さんに届くといいですね

上司に掛け合って来ますね」


守は席を立ち、部屋を出て行った


和弘 「ありがとうございます!」

その背中に頭を下げる和弘の目には涙が溜まっていた