13.③

その翌日から親父は風邪を引いて3日ほど寝込んでいた

母親は毎日パートへ行き、俺は冬休みに入り勉強に明け暮れていた


雅紀 「腹減ったな…」

雅紀は朝ごはんも食べずに朝から勉強していたため

お昼前にお腹を空かしてリビングへ行き

朝、母親が作って行ったチャーハンを食べていた


「うわぁあああ」

突然叫び声がした


雅紀はビックリして寝室で寝ているはずの父親の元へ走った

雅紀 「親父、どうした?」

ドアを開け雅紀は父親に声を掛けたが父親は

雅紀に見向きもせずに自分の腕を一生懸命に払っていた

雅紀 「親父!親父!どうした?」

雅紀は父親の手首を握り、大声で話し掛けた

それでも父親は暴れ、雅紀は蹴飛ばされ床に尻もちを着いた

父親 「うわぁぁあ取って、取ってくれぇえ」

父親の顔は恐怖で引き攣っていた


(何もねぇのに腕を払いながら暴れて頭おかしくなったのか?意味分かんねぇ)

雅紀の事など眼中にない父親に

雅紀 「風邪で頭やれたか、変な夢でも見てんだろ」

そう言って雅紀は部屋を出た

雅紀は何度か叫び声を聞いたが5分程経つ頃には静かになり、部屋を覗くと再び眠っていた


雅紀「あ〜眠っ」

雅紀も自室に戻り少しお昼寝を始めた


「ドンッ」 「ドンッ」

すごい物音と共に雅紀は目を覚ます


雅紀 「なんだ?」

直ぐに部屋から出てリビングへ向かうと

父親が壁を殴り大暴れしていた

雅紀 「おい、親父!」

雅紀は父親に向かって叫ぶ

父親 「あぁ?薬くれ、薬…薬…」

父親は覇気のない声と表情で雅紀に返事をしたが目の焦点は合っていなくて玄関にヨタヨタと向かって行く

雅紀 「おい、親父!何してんだよ!」

雅紀が大声を上げると今度は先程とは違い

父親 「ごめんなさい、ごめんなさい本当にごめんなさい」

と何度も土下座を始めた

雅紀は父親の言動、行動を不審に思いつつも

とりあえず冷静になる

壁には穴が開き、タンスの引き出しがたくさん開いて物が無造作に掻き出されている

まるで泥棒でも入ったみたいな部屋だ

そして冬の時期だと言うのに父親はグレーのスウェットが汗でびっしょりになっているのが見て分かる


雅紀 「親父、大丈夫か?なんか欲しいものあるなら俺買ってくるよ?」

雅紀は自分を落ち着かせ、優しい声色で話しかける

土下座を続けていた父親は雅紀の声で頭を上げた

父親 「いっ、い、いんですか?あっ、あのいくらですか?直ぐにならこれ…」

と父親は握りしめていた1000円札を2枚差し出す

ぐちゃぐちゃの1000円札を雅紀は手に取り

雅紀 「親父?俺だよ?雅紀」

父親 「はいっ!」

父親は雅紀に向かって大きな返事をする

雅紀 「親父、何が欲しいか言って?」

父親 「あ、あのいつもの薬を頂けたら…」

雅紀 「薬が欲しいってこと?」

父親 「はい!」

首を縦に大きく振る父親

雅紀 「分かった、買ってくるから寝室で寝てな」

雅紀は玄関へ向かう

父親 「あ、ありがとうございます」

父親は雅紀に向かって深々と頭を下げた


時刻はPM2:46

もうすぐでパートが終わる母に頼もうと思ったが

(あの部屋片付けるくらいなら俺が買いに行こっ)

雅紀は家を出て、薬局へ向かう最中に母親にメールを打った


親父が風邪で頭おかしくなったから風邪薬買いに薬局行ってくる

親父が部屋も散らかしたから部屋の片付けお願い


薬局は歩いて15分程の距離にあった

雅紀 「風邪で寝込むとバカになるんだな…」

そんな思いを吐き出しながら薬を選ぶ

雅紀 「風邪薬…風邪薬…これでいいか」

薬を購入し、自宅へ戻る最中に雅紀の電話が鳴る


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