13.①

母親 「雅紀〜ご飯の準備して」

雅紀 「はい、はい」


俺の家はごく普通の家庭で、サラリーマンの父親と

パート務めの母親、そして俺の3人暮らしだ

俺が中学3年生の頃、一軒家からアパートに引越した

理由は父親の働く会社が倒産したからだ

母親はパートに行き、父親は仕事探しに行っては

いつも落ち込んだ様子で帰ってくる

母親のパート代と貯金を崩しながら生計を立てていた

父親が仕事探しを始めて半年程たった頃だった


母親 「ここに入れてた封筒知らない?」

雅紀 「知らない」

母親はタンスの引き出しを開け、何かを一生懸命に探していた

雅紀 「なんか大事なものでも入ってたの?」

母親 「もうすぐ高校生でしょ?

その入学資金とかを貯めてここに入れてたはずなんだけど…」

母親は話しながらも探す手を止めない

雅紀 「俺も一緒に探すよ」


ガチャ

父親 「よぉ〜!ただいま!」

元気過ぎるくらいの声が響き渡る


雅紀 「なんだ、あのテンション」

母親 「あらあら、仕事でも決まったのかしら」

雅紀は父親の奇妙なテンションを不思議に思いながらも

父に駆け寄る母について行く


母親 「おかえりなさい、仕事でも決まったの?」

父親 「まぁまぁいい仕事が決まったぜ

今日は最高の気分だ、飲むぞ

つまみを作ってくれ」

母親 「あら!それはお祝いね!おめでとう

はいはい、つまみ出しますからお風呂でも入ってきたら?」

父親 「ああ」


雅紀 「ねぇ、親父なんか変な匂いしなかった?」

母親 「そぉ?煙草でも変えたんじゃない?

今日の夕食、もう1品くらい増やそうかな」

とても嬉しそうな母親は台所へ行き、雅紀に声を掛ける

母親 「ねぇ、雅紀ちょっとそこのタンスの引き出し探してみて〜」

雅紀 「どんな封筒に入れてたの?」

母親 「給料袋みたいな袋に10万円くらい入れてたんだけど」

雅紀 「絶対ここに入れたんだよね?」

母親 「入れたのよね〜」

雅紀はタンスを隅まで探す

(俺の入学資金だし、母さんがパートで一生懸命貯めてくれた金なんだよな…どこだ?)


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