12.②

雅紀は鞄を開けると美乃里の方に向けた

そこには沢山の小分けにされた白い粉や葉っぱのようなものが入っていた


雅紀 「これを吸ったり、打ったりすると

めちゃくちゃ気分が良くなるんだよ?」

美乃里 「く、くす…り?」

雅紀 「麻薬」

雅紀はウィンクとニカッとした笑い方で美乃里を見る


雅紀 「今から美乃里はこれを運ぶの!」

美乃里 「どこに?」

雅紀 「それは後で説明するね

それで〜その褒美なんだけど俺に惚れてる美乃里ちゃんは俺と寝るか〜

それともこれを1発打つか、どっちがいい?」

美乃里 「ごめん、言ってる意味が分かんない」

美乃里は少し強く言い返した

雅紀 「あ〜あ、怒っちゃった?

ちなみに美乃里ちゃんが見たあのおばさんも

これ欲しさに運んでくれてるんだよ〜」


美乃里 「ひどい…」


雅紀 「え?なんで?win-winじゃん

美乃里ちゃんくらいの子も

ここで働いてる若い女の子達もみんなしてるよ?

お金の方が良かったら褒美はお金でもいいよ?

ばばあなんて物足りなくて俺まで欲しくなっちゃって

さすがにばばあとは寝れないよね〜」

雅紀は大笑いしてる


(狂ってる…早く逃げなきゃ…携帯…)


雅紀 「なのにさ〜美乃里ちゃんたら

俺の事バカにした目で見てたもんな〜

ババアと付き合ってるんだ〜って目してた」

雅紀はニカッと笑う


美乃里 「そんなこと思ってないよ」

雅紀 「じゃぁ、なんで声掛けなかったの?」

雅紀は笑っていない目で笑う

美乃里 「別に理由はない」

雅紀 「絶対バカにしてさ、雅紀くん趣味悪い〜くらいに思ってたんじゃないの?

俺バカにされるの大嫌いだからさ〜

あの時、絶対に美乃里の事落としてみせるって思っちゃったもんな〜」

ケラケラと笑う雅紀に怒りを滲ませる美乃里

美乃里 「何それ、人の心もてあそんで楽しいの?」


雅紀 「じゃぁ、さ

人のことバカにして楽しいの?


み・の・り・ちゃんっ」


(何が正しい?こいつに怒ってもダメだ

とりあえず運ぶ?でも犯罪に手は貸したくない…

その前にこの狂ってる男を怒らせる方が怖い…)


美乃里 「バカにしてたから話し掛けなかった訳じゃない

そう思ってしまったのならごめんなさい」

雅紀 「お!さすが真面目ちゃんは頭の回転が早いね〜

俺を怒らせるとマズイとか思っちゃった?」

美乃里 「私はご褒美とかいらない

運ぶこともしない、もう帰らせて欲しい」


雅紀 「ダメだよ?それは無理だよ?」

ニカッと笑う雅紀

美乃里 「なっ…」

雅紀は美乃里の言葉を遮り、無理やりキスをする

美乃里 「やめて…」

美乃里は雅紀を押して離れる


雅紀 「とりあえず俺も美乃里が好きになっちゃってるから抱きたい」

美乃里 「無理」

雅紀 「好きな男に染まった方が楽しいし幸せじゃん

俺と寝たい子なんていっぱいいるんだから

美乃里は特別じゃ〜ん

中々いないよ?」

美乃里 「もう、やめて、お願いします」

美乃里は怖さで震える体を隠しながら、溢れそうな涙を堪えてお願いする


雅紀 「美乃里、おいで」

雅紀は美乃里に向かって手を広げる、その顔は優しさも悲しさも怒りも滲んでいた…


美乃里は首を横に振る


「はぁ…」

雅紀はため息をつくと目の前のケースから

袋と注射器を取り出す


美乃里 「雅紀くん…お願いもうやめよう?」

雅紀 「なんで?怖い?」

ニカッとと笑う雅紀

美乃里 「な、なんで…こんな事…」

美乃里は声をつまらせながら話す


雅紀 「だーかーら、美乃里が俺をバカにしたからでしょ?あの時

そもそも美乃里ちゃんはさ、真面目に生きてきて

こんな闇があるなんて知らなかったでしょ?

人生のどん底なんて味わった事ないでしょ?

人はね、辛い事とかさ、もう無理ってことも

悲しさも、怒りもたくさん経験しなきゃ強くなれないんだから

俺が美乃里に闇の中を教えてあげてるだけだろ?

SNSで相談なんか聞いて、お金貰ってさ

人救った気になって、どん底見てない奴に

人の本当の苦しみなんて分かんねぇだろ?

美乃里…俺と一緒に居てくれよ」


雅紀から哀しみが伝わる…

美乃里 「分かった」

美乃里は雅紀に歩み寄り、雅紀を抱きしめる


(私には分からなかった…

雅紀の気持ちも、雅紀がしていることも

闇から抜け出せない雅紀はきっとずっと同じ場所でもがいている…

私と一緒なんだ…と思ったら

この大きな体が弱々しく見えていつの間にか抱きしめていた)