8.①

年が変わった1月3日、まだまだ正月気分の抜けない日々

そんな日々も少しずつ動き出す、そして変わり出す

平凡な日々だと思っていた事でも一瞬で変わっていく

良い方にも、悪い方にも…



智貴 「守〜資料出来たか?」

守 「はい」

智貴 「ちょっと難しいよな

とりあえずまだ探りが必要だな

表向きの可能性もある」

守 「そうですよね…

記者も嗅ぎつけてるみたいで

変に動かれて逃げられたら困りますね」

智貴 「そうだな…守、今日の夜空いてるか?」

守 「大丈夫っす」

智貴 「俺はちょっとおじさんすぎるから…

お前、女友達とかいないのか?」

守 「女の子は…ちょっと、はい、すみません」

智貴 「じゃぁ、男2人だと怪しいから

友達何人か連れて行けるか?」

守 「分かりました」


守は早速友達にアポを取り、予定をつける

智貴 「守、頼むな

あくまでも自然体でただただ友達と楽しんで来いよ

過度な捜査はするな」

守 「はい、ありがとうございます」

智貴 「何かあったら直ぐに連絡しろ」

守 「はい」


あれから守は母親と2人で沢山のことを

乗り越えてきたと思う

母親が精神を病んでしまった時も

守は揺るがなかった、強かったな…

きっと1人でも沢山のことを乗り越えてきた

あの日から守をずっと見てきた

守が高校を卒業する時

「僕は智貴さんみたいな警察官になりたいです。

父さんは医者は人を救えるんだ

守れる、助けられるんだ。だから誇らしい

そんな事をよく話していました。

僕は医者だけが人を救えるとは思っていません

智貴さんみたいな警察官になって

僕が救われたように、僕も人を救いたいです、守りたいです。

父さんが望んだ僕ではないですが、僕は僕自身が決めた道を進むことで父さんが敷いたレールに囚われず進める気がするんです」


真っ直ぐにそんな事を話す守が一段と大人びて

まだまだ子どもでいいのにな…

そんな立派な言葉を並べずに、苦しいと言って泣く姿でも見せてくれれば

俺もお前に何か…父親とは言わないが

1人の大人として、人生の先輩として何か言ってやれるのに…お前からは学ぶことばかりだ。


「守、お前は今のままで十分だ。

お前の人生は素晴らしいものになる

お前が決めた道が正しいに決まってる

俺が大先輩になるな」

智貴は溢れ出しそうな涙を堪えて守の頭をぐしゃぐしゃと撫でた

そして守もまた、溢れ出しそうな涙を拭っていた


。。。