5.⑦

父親 「おい、守」

守は父親に目線を向ける


父親 「悪いのは誰だ?警察の方に説明しなさい」

守 「はい、全部僕の責任です

僕は父さんのような医者になる為、毎日勉強する事を父と約束しています。家族との約束は絶対だと近藤家のルールです。父は約束を必ず守ります。

今回、僕は母に秘密にしてもらい勉強をサボりました。

なので母は僕を庇うために父に嘘をつきました

全て僕が悪いです」


(この子はこの状況を見て直ぐに把握した

頭の回転の速さと、父親が求めている事が瞬時に理解出来ている…)


父親 「刑事さん、分かってくれましたか?」

智貴 「分かりました

守くん、こんな事は初めてなのかな?」


父親 「刑事さん、分かってくれましたよね?

家族間の揉め事みたいな感じなんですよ」

智貴 「分かりました」

(今、父親を問い詰めると何をするか分からない

ここはまず父親を冷静にさせて署に連れて行かなければ)


父親 「私を必要としている患者様達が大勢いる

今日中にでも病院に1度戻らなければならない

刑事さん、事情聴取は今取れました。

私はもう戻っても良いですよね?」

智貴 「そうですね、確かに守くんの証言がありましたので

それを踏まえて1度署に戻りお話しを伺いたいです」

父親 「警察署に行く必要は無いでしょう」

父親は嘲笑う


祐介 「あなたが今してる事は監禁です

人質をとり、立てこもっています。立派な犯罪です」


智貴 「祐介」

智貴は祐介に目配せする

だが、祐介は止まらない


祐介 「たった1度の過ちで守くんは自殺しようとしますか?奥様はこんなに怯えますか?

嘘をついているのはあなたの方じゃないんですか?」


父親 「ッッ!」

父親 「お、俺は嘘なんかついてねぇ、うるせえ」

父親はまた殺気立つ


智貴 「近藤さん、大丈夫です 大丈夫ですから

とりあえず包丁を置いて、私たちを解放して、

署でお話しだけしませんか?」


父親 「おい、なるみ、守

お前らは俺なしじゃまともに生きれないよな?」


「コツコツコツ」

父親はまた包丁を机に叩く


( やばい、やばい、どうする)


父親 「守、お前は医者になりたいんだよな?」

守は頷く

父親 「今のお前で私みたいな医者になれると思うか?

俺の教えがなければ立派な医者にはなれないよな?」

守 「はい…」


智貴 「近藤さん、なるみさんと守くんに貴方が必要なのはよく分かりました

もうすぐで約束の10分です

守くんはまだ体調が」


父親 「まーもーるー」


智貴の言葉を遮り父親は叫ぶ


父親 「お前は1人で死ぬことも出来なかった

惨めな奴だ

そもそもお前が自殺なんてしようとしなければ

今こんな事にはなってない

死ぬならお前1人で死ななきゃダメじゃないか

誰にも迷惑を掛けずに死ぬんだ

分かるか?なぁ、守」


( やばい、このままじゃまずい)


俺はフルに頭を回転させるが何を言ってもこの

父親を冷静にさせるのは難しい

もうすぐで約束の10分だ

10分経てば応援が突入するはずだ

それまでどうにか持ちこたえてくれ


。。。