こんな感じで回ってきたので一読しました。
原文はこちら
https://www.levyinstitute.org/pubs/wp_931.pdf
「MMT派のGND財源論は、ケインズの戦費調達論がベースです」というのはかなりミスリーディングで、「MMT派のこのGND財源論は」くらいでしょう。
ケインズの How to Pay for the War (いかにして戦費を賄うか)という小冊子(たとえばここで読めます)で考えた方法、つまり金額より先にリソースに注目する方法でグリーンニューディール施策を考えてみるというものですね。
ケインズの言葉。
an advance towards economic equality greater than any which we have made in recent times. There should be no paradox in this. The sacrifices required by war direct more urgent attention than before to sparing them where they can be least afforded.
こんな感じかなあ。
「経済的平等の実現に向けた前進は、近年のわれわれが近年に成し遂げたどのようなものよりも大きいものだ。ここに矛盾があってはならない。戦争のために必要な犠牲は、最も余裕のない人々の犠牲を最小にすることと直結しているということにかつてない喫緊の関心が向けられる。」
日独伊との戦争にせよ気候変動との闘いにせよ、それが経済的弱者を犠牲にするものであったら何もなりません。こうした「戦争」を思考するときにまず経済的最弱者たちのことを考えましょうよという思想がここにはあるわけです。
論文の注6を引用します。
What he describes is something like individual retirement accounts allowing early withdrawals for emergencies (loss of job, illness, support of dependents) that would amount to approximately 20 percent of wages, with the deferred rate progressive, such that lower-income workers receive a higher deferred payment in the future relative to wages. To reduce the burden on lower incomes, he would provide a progressive family allowance. He suggests it would work like the social insurance system. Below, we will recommend a proposal that would tie the deferred compensation to Social Security.
「彼(ケインズ)が書いたのは、緊急事態(失業、病気、家族の扶養)のための早期引き出しを可能にする、言わば個人退職年金口座のようなものだったということになる。賃金のうち約20%を積み立てさせ、将来的に低所得労働者ほどそれを高い”繰延べ率”を受け取るという累進的な形。併せてケインズは、制度が低所得者に与える負担を低減するためにと累進的(低所得者ほど高額)な家族手当を併せて提案していた。つまりケインズが提案していたのは社会保険制度のような仕組みだったのだ。我々(=著者たち)も以下で繰延賃金を社会保障と連動させる案を提言する。」
さて。
朴先生たちが志向するベーシックインカムのような思想とMMTとの明確な相違は、均等払いではなく、progressive (累進的)であるということなんです。
中立貨幣を前提とした保険制度、中立を装った金利政策。そうしたものこそが格差を生み出す当のものだというビューがあるからこそ、こういう提案になるという。
さて、当該翻訳はこちらです。
cargoさん、市井の人がここまで!と感動してしまうほどの熱量です。
でも、プロが運営する研究会が公式サイトで発表するなら、少しはまじめに添削したらどうよと思う。
たとえば上記の注6、これだと読者には伝わらないと思ったので書かずにはいられなかったという次第↓
彼の説明では、これは個人退職年金口座のようなものである。これは、緊急事態(失業、病気、家族の 扶養)においては早期引き出しを可能とする。賃金の約 20%を預けるものだが、消費先送りで得られる金利は、低所得労働者ほど高い累進的なものとする。つまり、低所得者ほど、消費の先送りに対して、賃金と比べて高額の支払いを受けるのである。また彼は、低所得者の負担を軽減するために、累進的な家族 手当を支給しようとも考えた。彼は、これを社会保険制度のような仕組みにすることを提案した。そこから先は、消費繰延べ分を社会保障制度と結び付ける案を示している。

