「貨幣のオントロジー」シリーズを続けます。

 

今回は「ケインズの戦費調達論」のタイトルについて思うところを。
なおこの小冊子については前回のエントリや、断章93 グリーン・ニューディールの財源調達論、の話 でも少し触れています。

 

表紙はこんな感じですよね。

 

How to pay for the War

 

How to pay。文字通り「どうやって支払うか」とか「支払い方法」という感じ。for the war が続くことによって「戦争の(ための)支払いをどうするか」という意味になる。

 

助動詞 for には等価交換を表すイメージがあります。

I paid 1,000 yen for the book.この例文の場合は「ある本」と「1000円」を交換した。おつりはなし!ということです。

さて

I exchanged 1,000 yen for the book.

だと1,000円と本を交換したということですね。

 

X exchangs A for B という交換形式で、もしAが貨幣だったらXさんは「買い手」でBが貨幣ならXさんは「売り手」であると言われます。というか私たちはそう言います。

AもBもモノだったら?売買というより「交換」に近い。

 

この話はまたいずれ。

 

さて、ケインズはいったいどうしてこの本を書いたのか?

 

読めばわかるのですが、第一次大戦後に各国は諸物価の上昇に苦しんだという共通の社会的了解があるんですね。ドイツとの戦争にいかにして勝利するかと同じように、いかにしてインフレ防ぐかが課題だったというわけです。ケインズはさらに、第一次大戦は貧富の拡大を招いてしまったので、今回は、逆に戦争を契機に格差を縮小する方法を探ろうとした。このことがこの冊子の意義だったということは間違いのないところだと思います。

 

戦争の代償、つまり、X for the war のX、戦争に見合うものとして「格差の縮小」を狙おうとした、というわけ。

 

ところで。

 

物価指数やGDPデフレータのような指数がまだ存在しない時代に「インフレ」という言葉は何を意味していたのでしょうか?

 

それは一般の人々の生活費が一般的な所得に対して上昇してしまった、ということのはずです。

 

結局のところケインズが論じているのは「戦争と見合う「X」をどうするか?」ということであって、それがそのままタイトルになっている。

そのXは、勝利であり、庶民の生活防衛であり、格差の縮小だというわけ。

 

こうしたことが How to pay for the War というタイトルから読み取れる。

 

それを「戦費調達論」という訳で済ませるのはどうにもわたくし気に入らない。

まあ仕方ないけれど。

 

さて、読者の皆さんはこの話のどこが「貨幣のオントロジー」なの?みたいに思われたかもしれません。

 

実は等価交換という現象や、上の for のニュアンスのようなものが貨幣(マネー)を”存在”させる当の物なんです。 次回にそれを論じてみましょう。