貨幣のオントロジーのシリーズ、第四回です。

 

前回わたくしはこう書きました。

 

対等な交換を成り立たせるもののことを私たちは貨幣(マネー)と言っているのではないか?、というわけ。

 

AさんとBさんが交換をしました。

 

A exchanged X for Y.

(AさんはXをYに交換)

B exchanged Y for X.

(BさんはYをXに交換)

 

これを交換の一般形式と呼ぶとしましょう。

意味は通じる、通じたと思います。

 

実は本シリーズは貨幣(マネー)を「交換」という形式から把握してみようという試みです。

 

これはもっと突っ込むと、社会を「関係」から把握しようとしているということでもあります。交換とはある種の関係だからです。

 

そのような立場を徹底するとき、上のAやBに代入されうる「存在(エンティティ)」とはどのようなものなのでしょうか。

 

前回、このようにも書きました。

貨幣、マネーとは何かというテーマに立ち戻ると、それは、ある何らかの存在(エンティティ)と別の存在(エンティティ)との間の貸借関係、つまり二者の関係に帰着されると言える、言うべきとワタクシは見ます。

 

あなたが持っている紙幣は、あなたという存在と日銀という存在の貸借関係の表現。

あなたの銀行預金は、あなたと銀行の貸借関係の表現。

モズラーの名刺は、親子の貸借関係の表現。

ペイペイは、あなたとPayPay株式会社との貸借関係の表現。

 

つまり、この文書を理解したなら、以下のこうしたものはエンティティとして扱うことができるようですね。

 

 あなた

 日銀

 銀行

 モズラー

 モズラーの子

 ペイペイ株式会社

 

これが「机」や「月」などの物体や「ミミズ」のような動物であったら、すごく違和感を感じるのではないでしょうか。

 

とりあえず、こうしたいと思います。

 

定義:

実体(エンティティ)とは、自己が「モノやサービスや文書を受け取ってもらえる」と認識する対象を指す。

 

もしかすると「なんでそんな回りくどいことをするの?」と思われるかもしれません。

 

早めにわたくしの戦略を明示しておいた方がよいでしょう。

 

おそらく常識的には、まず、「渡す」とか「受け取る」というやりとりの前に、何かを「所有している」実体を想定するものではないでしょうか?

この考えは、「所有する実体」を先に考えなければいけません。

 

しかし、いったい「所有」とは何でしょうか?

「AさんがXを所有している状態」は、BさんやCさんには簡単にはわかりません。なんならAさん自身にも判然としないことは多いと思うんですよ。第一回でも例に出したように、自分が持っている本や紙幣を忘れていることはしょっちゅうありませんか?

 

一方「交換」は「所有」よりもはっきりしています。

AさんとBさんがXとYを交換する場合、お互いがXとYを認識していないといことはほとんどあり得ませんし、それは多くの場合Cさんにもはっきり観察可能なものでしょう。

 

その交換でAさんかBさんに見解の相違があった場合、第三者に判定を求めることもよくあって、所有権をめぐる裁判などがその例になるでしょう。

 

そしてこの方針は、貨幣(マネー)をできるだけキチンと扱うための戦略でもありるのです。

 

ところでこれは、「優しい人」「怒りっぽい人」「穏やかな人」「怖い人」と言うときの「優しい」「怒りっぽい」「穏やか」「怖い」というような”人の属性”が、どちらかと言えばその人本人ではない、周囲の人たちが把握する属性であるということと似ています。

 

おカネに限らず、誰から何かを所有している状態というのは、実はその人にとってと言うよりも、その人以外にとってそれがどのような状態であるかが重要な話であることは、少し考えればわかると思います。

 

ではマネー、貨幣はどうでしょうか。

この例で想像できるように、マネーというものは必ず誰かと誰かの関係で表現されるものでした。

あなたが持っている紙幣は、あなたという存在と日銀という存在の貸借関係の表現。

あなたの銀行預金は、あなたと銀行の貸借関係の表現。

モズラーの名刺は、親子の貸借関係の表現。

ペイペイは、あなたとPayPay株式会社との貸借関係の表現。

 

だから「誰かのおカネ」という概念は、「数」でなく「数の表」で把握するのが適切だということになるのです。

 

こんなふうに。


 

お暇な方は、よろしければこの表を初めて公開した下のエントリもご覧いただけれたらうれしく思います。

 

お暇でない方も、本シリーズの続きを読んでくださるのであれば、こうした「数の表」で表現されない「誰かのマネー」は存在しないということをぜひ実感しておいてほしいと思います。

 

 

 

つづく