
「ユーチューバー」からの「69」by村上龍
「ユーチューバー」
それほどページ数が多くないので、
あっという間に読み終わりました。
作中に登場する「矢崎健介(ヤザキケンスケ)」という小説家は、
かつて彼の小説で何度か?見かけた名前で
ここでは、老齢の作家として登場。
当然、村上龍本人がモデル。
この小説は、4篇からなる連作で、
最初の「ユーチューバー」は、
「世界一モテない男」だと自称するユーチューバーの男が
その作家に会い、YouTubeに出演しませんかと切り出して、
作家が女性遍歴を語る、というお話。
(他には、
ユーチューバーの男だけの独白「ホテル・サブスクリプション」
矢崎といつも一緒にいる女性の独白「ディスカバリー」
そして矢崎本人の独白「ユーチューブ」)
作家が自分の女性遍歴を語る、それをYouTubeで配信するという流れの中で、
私たちは女性遍歴を語る作家と、
その作家を観察するユーチューバーの男の独白を読む。
作家がいて、作家を観察する男がいる、
という設定で、
それを描いているのは、自身を作家に投影させている、村上龍、という。
この構図がほんとうに面白くて、
なんとも不思議な、宇宙感覚だった。
四人のドラマが展開していくこの連作、なかなかに凝った構成。
語り口も、いつものように滑らかで、明快。
さりげないディテイルの描きかたも上手くて、
私の大好きな村上龍がそこにいた。
本当に久しぶりの龍さんだったが、
そういえば、
過去にこのブログでも何度か龍さんの作品についてあげてました。
でもって、
「ユーチューバー」を読み終わってから、
なんか、モーレツに過去の作品を読みたくなってですねえ〜、
どちらも大好きな作品だけど、
やっぱり、「69sixty nine」!
なぜって、高校生のヤザキケンスケ=矢崎剣介が主人公だから!
(ちなみに、「69」は初版。1987年8月10日発行の第一刷りだった!)
70歳の小説家ヤザキケンスケも、
1969年には、高校3年生だった〜
なんとも懐かしくて、
しかも、私とほぼ同世代!
涙出るほどに、この過ぎ去った歳月を振り返りたくもなる、というものよ。
大体、この「69」の出だしは、
「一九六九年、この年、東京大学は入試を中止した。」
という一文で始まるのだ。
それを私に置き換えるとしたら、
「一九六九年、東大の入試が中止されたこの年、私は大学を受験した。」
龍さん=ケンスケと私は、学年で1年違いということ!
この「69」は、
佐世保の高校に通うケンスケが、
女の子にモテたいがために、高校全共闘を作り、バリ封を決行し、
警察に捕まり、次にフェスティバルを企画し、
という、賛同する仲間たちとの行動を描きながら、
その底には、権力や理不尽への熱く燃えたぎる怒りがあり、
若者ならではのエネルギーが満ち溢れていて、
30年ぶりぐらいに読み返しても、
本当にすごい小説だと思った!
全編、博多弁のオンパレード!
これが、ユーモラスの域を超えて、おかしすぎて、笑いが止まらない。
30年以上前に読んだ時、
果たして電車の中で読んだのか、忘れてちゃったけど、
ぜ〜ったいに、電車の中では読めないよ。
笑いが止まらないどころか、爆笑だし、
笑いを我慢しようとすると、
お腹の皮がひくひくとよじれて、
確実にヤバい人に見えて、周りがドン引きすること必至!
未読の方、
まあ、騙されたと思って、読んでください!
さらに、ここには、
当時の私たちを刺激した人々などがわんさか登場する!
クラウディア・カルディナーレ、アン=マーグレット、
サイモンとガーファンクル、タイガースの「花の首飾り」
ジョナス・メカス、レッド・ツェッペリン、
ダニエル・コーンバンディ、立原道造、中原中也、
ルー・リード、ウェス・モンゴメリー、アランドロン、、、、、etc.
ほぼ、この時代を生きていた人たちなら、
1度は聞いているし、中にはアイドルだった人もいるはず。
さらに、いえば、この小説、
今ではヤバい禁止用語もいっぱい!
その過激さ、大胆さ、
でも、それも、意味のないことではなくて、
やはり、それらが当時の若者の状況をリアルに伝える。
私自身が当時の若者だったので、
その辺の時代感、リアリティ、とってもよくわかる。
本当にあの頃って、
みんな、熱かったなあ〜、って思うわ。
そうした当時の若者(私も含めて)の状況を巧みに代弁してくれている、
この小説は、そういう意味でも、
文学史に鮮やかに刻まれる傑作だと確信します。
そういえば、
ケンスケの心情と私の気持ちがピタリ一致している文章、見つけた!
小学生の頃『少年マガジン』の最新号を買ってアイスキャンデーを舐めながら、
『ちかいの魔球』の続きを陽だまりの中で読む時感じた幸福〜
ほんと、ほんと、
私も小学生の時に、
毎週毎週、マガジンの最新号を待ちわびたわ〜!
まっさらな最新号のページを開くや、
真っ先に「ちかいの魔球」を読んだな〜
(ちょうど巨人の野球を夢中で見ていた頃と重なる)
(私の中では、ちばてつやの漫画は「明日のジョー」より「ちかいの魔球」の方が上!)
なお、私が作家インタビューをしていた頃、
龍さんにも電話取材したことがある、
と、以前このブログでも上げましたが、
その時も、
天気の良い日は、テニスばかりしていると語ってくれた。
最近は、体調のことなどで時折心配するような記事が書かれているよう。
まあ、体の不調は、年齢とともに仕方ないので、
そこは、自分と相談しながら、
でも、
まだまだ面白い小説を書いていって欲しいと思います!


