「ミナリ」、余韻あふれる名作。
先週に引き続き、
昨日も映画館へ。
「ミナリ」、観ました。。。。
「ノマドランド」も、本当に圧巻の作品だったけど、
この「ミナリ」も、素晴らしい。
実に、さまざまなことを考えさせてくれるし、
どんな状況になっても、
希望を失いたくない、
そういう強いメッセージを受け取ることができた。
以下、ネタバレもしてますので、
未見の方、ご容赦。
舞台は、80年代、レーガン政権の時代。
韓国からの移民一家が
カリフォルニアからアーカンソーの田舎町に引っ越してくるところから始まる。
広い原っぱにぽつんと置かれた長いトレーラーハウス。
ここが自分たちの住まいだと妻モニカに言う夫ジェイコブ。
一家は、長女のアンと、末っ子のデビッドの、4人家族。
子供たちには車輪が付いた家が珍しくて、興味シンシン。
ジェイコブは、その大地を耕して韓国野菜を育てて、
それで稼いでいくことを計画しているのだが、
モニカには、それは現実ばなれした絵空事にしか思えない。
デビッドは心臓が悪いのに、
病院まで車で一時間もかかるのも、妻には不安でたまらない。
とりあえず、夫と妻は、ひよこの性別作業の仕事で食いつなぐ。
昼間、子供を見てもらうために、
韓国からモニカの母に来てもらうことにするが、
このハルモニが来てから、家の空気が変わり始める。
デビッドは初めて会う祖母に、嫌悪感を露わにして、
好きになれない。
でも、このハルモニも型破りで、
典型的な韓国ハルモニなら料理も得意だけど、
彼女は料理もできない、
孫にお愛想言うわけでもなく、
花札やったり、テレビ見たりのマイペース。
こうした環境の中で、
さあ、ジェイコブの農業はうまくいくのか、
妻の気持ちは変化していくのか、
ハルモニは、デビッドや家族たちとどう暮らしていくのか、
そして、デビッドの心臓病は?
不安材料をいくつも抱えながら、
物語が展開していく。
困難、また困難。
次々と過酷な運命に襲われる。
「ノマドランド」のように、
この映画も、淡々と進んでいく。
モニカとジェイコブの派手な喧嘩はあるものの、
ドラマティックな効果を狙うわけでもない。
静かで落ち着いた演出が
かえって観る者をぐいぐいと引き込んでいく。
静かだけど、作り手側の熱いたぎりはしっかりと伝わってくる。
最初は、初めて会うハルモニに、どう接していいかギクシャク。
ハルモニから感じる韓国の匂いも好きになれない。
でも、だんだんと、彼の中で、変わっていくものがある。
ハルモニの天然の人間性と呼応するかのように、
彼も自分の内面を、母には見せないような内面をあらわにしていく。
それは、ハルモニの、母親とは違う優しさを感じ取ったからだ。
やがてハルモニを襲った思いがけない運命。
それだけではなく、
彼女は、家族をも危険に晒すことになりーーー
そして、ハルモニのために、走る。
心臓が悪いために走ることを禁止されていたデビッドが
ハルモニのために走る場面。
涙が溢れて止まらない。
このデビッドの姿は、
監督のリー・アイザック・チョンの少年時代を投影したもの。
実際に監督の両親はアーカンソー州で農場をやっていた。
両親の口喧嘩が絶えなかったことも、
十字架を背負う男の話も、
祖母が火事を起こしてしまう話も、
彼が実際に経験していることだという。
どんなに頑張ってみても、
うまくいかない時もある。
何かが上手く行っても、
他の何かが足を引っ張ることもある。
人生なんて思うように進むことはできない。
それは、一種の諦めかもしれないけど、
でも、希望は失わない。
家族がいれば、家族がいるからこそ、
困難に立ち向かっていこうと思う。
愛があるからこそ、みんな、生きていこうと思う。
この映画から受けた、前向きのメッセージ。
ある意味、彼らも、
韓国からはるばる移ってきたノマドたちではあるが、
あのノマドと決定的に違うのは、
農場を作る、つまり、
大地に根を張って生きていこうという姿勢。
それが、とても強い。
ここを根っこにして、息子の代になれば、
きっと成功の希望があるに違いない、と信じる。
まさに、それは、タイトルになっているミナリ=セリの姿。
水辺で自生するセリは、逞しく、どんどん根を張って育っていく。
ハルモニが種を蒔いたセリを摘みに行くジェイコブとデビッド。
そのシーンで終わるエンディング。
あーここで終わるのか、と思うと同時に、
深い余韻が胸の中にす〜っと広がっていく。
見事な終わりかただと思う。
ユン・ヨジョン。
もう、彼女の演技に脱帽。
実際に彼女は6年ぐらいアメリカで生活しているので、
この映画のインタビューなどは、英語で受け答えしていて、
それも、とってもカッコいい。
「ユン食堂」でバリやスペインで食堂を開いている時も、
進んで英語で会話してたしね。
「ハウスメイド」などでは、
妖艶なおばさんに変身しちゃったり、
「それだけが、僕の世界」など、多くの作品でのオンマ役も見事。
とにかく多彩な面を持ち、多才な女優。
ウォシャウスキー姉妹の「センス8」にも出演していることは、
このパンフで初めて知った。
アカデミー賞助演女優賞、是非、あげたい〜
で、子役のアラン・キムも、すごい。
彼は、これが映画デビューらしいけど、
ハルモニへの微妙な気持ち、
その表現には舌をまく。
そして、ジェイコブを演じたスティーヴン・ユァン。
妻モニカのハン・イェリ。
ユアンは、
私がお初は「バーニング」テレビ版で、
その後、ポン・ジュノのもう一つの傑作「オクジャ」
とても印象に残っている。
メガヒット「ウォーキング・デッド」、私はスルー組なので、
これに関しては語れませんが。
今までの活躍ぶりから、
韓国人というよりアメリカ系役者としての認識が強かったけど、
この映画では、
成功を夢みて、アメリカの大地で生きようとする
普通の韓国人をリアルに演じている。
彼もオスカー主演男優賞ノミネートの快挙!
一方のハン・イェリ。
ちょうど先日、「ハナ 奇跡の46日間」で
初期の彼女に接していて、
さらに何と言っても
ハン・イェリといえば、「六龍が飛ぶ」のチョク・サグァン役!
公開後のメディア露出などは、
ユン・ヨジョンが圧倒的に多くて、
彼女は陰に回った感もあるが、
この映画の中でのモニカ役は本当に素晴らしいので、
もっと認知度が高まってくれることを祈る。
ジェイコブとモニカ。
夢見がちな夫と、地に足のついた妻。
何があっても、農場のことしか頭になかったジェイコブが、
火事の中、初めて妻を思いやる姿は、
ああ、やっぱり、愛の力だよねー
と、心震える思いで見られたし、
過酷な運命に立ち向かうことができるのも、
やっぱり、愛があればこそ、
そういう、家族愛、夫婦愛の姿を
さりげなく示してくれて、
この2人、忘れられない。
また一つ、名作が私の棚の中に置かれました。
先週の「ノマドランド」も圧巻だったけど、
こちらも味わい深く、
甲乙つけがたい名作。
アカデミー賞の行方が気になってきました〜





