「アリスのままで」

50歳にして、若年性アルツハイマー症に冒されてしまった女性アリス。
大学教授で、幸せな結婚生活を送り、
3人の子供たちに恵まれ、
絵に描いたような生活を送っていたアリスの人生が
根底から、少しづつ、瓦解していく。
その様相は、とても残酷で、悲しい。
これは、誰にでも起こりえることなので、
本当に身につまされる。
映画も、その通りに描いていくのだけど、
一人の女性が、懸命に生を生きようとしている、そのあがきを、
ジュリアン・ムーアが全身全霊で演じていて、
アリスという女性を通して、
ジュアン・ムーア自身が生きて積み重ねてきたものが、
圧倒的な存在感で迫ってくるので、
それが、この映画の深い感動へと繋がっているのだな、
と私は感じたのだった。
まさに女優冥利に尽きるというのは、こういうことですね。
ジュリアン自身が、人生をしっかり生きてきているということが、
こういう役柄を通して、伝わってくるし、
それが、アリスという役柄に命を吹き込み、
観客に深い感動をもたらしている。
どんどん記憶も言葉も失ってしまっても、
人を愛した記憶は、どこかに残っている、
ということを
ラストシーンでは訴えたかったんだろうな。
人は、何故生まれるのか、何故人生を生きるのか。
誰もがそのことを考えると思う。
私の中では、母や祖母の語ったこと、教えてくれたこと、
ほかにも私がふれあった人々との想い出など、
それぞれを記憶の中にしまっていて、
そういうものの引き出しがいっぱいあることで、
自分の人生が出来上がっている、と思っている。
そして、長じるに従って、
今度は娘、孫たちとの想い出の引き出しが増えていって、
愛の記憶の引き出しは、どんどん厚みを増していく。
こうして、人は努力次第で、
人生を深く厚くしていけるのだと思っているが、
同時に、娘や孫の引き出しの中にも私はいるわけで、
それは、
私が人生を終えた後も、
ずっと生き続けていくはず。
で、そこにこそ、人が生きる意味があるのではないかと思う。
そう、だから、アリスのように、自分の記憶の引き出しは失っても、
彼女がふれあった人々の中では、彼女はいつまでも生き続けていくのだ。
アルツハイマーとなって、自分の後半生が茫洋としてしまうのは、残念だけど、
生きた足跡は、決して消えることはない。
それが、せめてもの救い、だろうか。
人生や愛について、そして、人と人との絆について、
深く、考えさせられた、いい映画でした。

ちなみに、ジュリアン・ムーアですけど、
ほんとにいい女優だなあと、これで再確認しました。
その表情、眼差し、ひとつひとつが、味わいたっぷりで、
年を重ねて魅力が増していくという理想的なパターンを見せてくれる。
ついでに、わたくし、彼女の映画はこれだけ見てました。
「ゆりかごを揺らす手」
「逃亡者」
「妹の恋人」
「ショートカッツ」
「9ヶ月」
「暗殺者」
「サバイビング・ピカソ」
「ロストワールド」
「ブギーナイツ」
「ビッグ・リボウスキ」
「サイコ」
「理想の結婚」
「クッキー・フォーチュン」
「マグノリア」
「ことの終わり」
「ハンニバル」
「シッピング・ニュース」
「めぐりあう時間たち」
「エデンより彼方に」
「フォーガットン」
「50歳の恋愛白書」
「シングルマン」
「キッズ・オールライト」
「ラブ・アゲイン」
「フライトゲーム」
けっこうな数ですね。
中には、「フォーガットン」みたいなポカ~ン映画もあるけど、
「めぐりあう時間たち」「マグノリア」は特に素晴らしかった。
何度もオスカー候補になってその度に逃して、
もうチャンスないのではと思っていたけど、
これで、受賞できて、ほんとによかったわ。
そうそう、アレック・ボールドウィンも、意外といい味出してましたよ。
彼がダンナ役と聞くと、陰で不倫とかしてそう、なんて考えてしまうけど、
これは、そういう雰囲気ではなかった。
でも、やはり妻の病気を受け止められずに、
仕事をとってしまうという、
まあ、逆にいえば、だからこそリアルな展開といえるのかも。
二子の109シネマ、年配のお客さんが多くて、ほとんど満席でした~
