村上龍の「心はあなたのもとに」 | 映画とネコと、私の好きなもの。

村上龍の「心はあなたのもとに」

大好きな村上龍。

「55歳からのハローライフ」に続いて読んだのが、

恋愛小説「心はあなたのもとに」。



これは、中年にさしかかった裕福な実業家と風俗嬢の、切ないロマンス。

私はほとんど前情報を入れてなかったので、
読み始めて、すぐに、あれ、こういう小説だったのか、
とちょっと驚いた。

というのも、
リュウさんの恋愛小説といえば、
私の中では、ダントツに「テニスボーイの憂鬱」なのだが、
あの、大傑作の印象が鮮烈すぎて、
なんか、ああいう感じを私はイメージしていたのか、
あるいは「55歳~」」みたいな、しっとり系を予感していた。

で、いきなり、風俗嬢と不倫、ときたので、
頭、ガツ~ンという感じが。。。。

でも、すぐにこう思い直した。
「テニスボーイの憂鬱」の主人公も、
年を喰う歳月で、いろんなことがあったに違いない。
で、こういう中年男に到達するやもしれず、って。
ま、ちょっと男のタイプとしてはズレると思うけど、

とにかく、
私の中では、リュウさんが中年の領域に入ってきていること、
若いときに鮮烈な文壇デビューを飾り、
一作ごとに成長し、どんどん、深いところに到達してきている彼が、
62歳になって、その年相応に繊細にものごとを捉え、発信している、
そんな彼の才能に今更ながら、
感じ入ることしきりだった。

この小説は、決して、読みやすくない。
かなり疲れる。

彼の小説は、読みやすいのもあれば、
けっこう難解で、読み進むのに時間がかかるのと
2タイプあり、
全体にいえば読みにくい方が多いかもしれない。
(読みやすくて面白いのは、「テニスボーイ~」
「はしれ、タカハシ!」「69」ですね!)

この作品は、
難しいことを描いているわけではないんだけど、
風俗嬢とのセックスとか、
そういう描写が私の中では違和感があるのと、
そういう世界を描いているというのが、ちょっと読むのが面倒になるのですよ。

でも、やっぱり村上龍はすごい、と思うのは、
この小説のリアリティね。
恋愛している(正確には不倫ですが)男の感情を、
こんなにもリアルに捉えて描写する、
ある意味、写実主義小説なのですね。

重い病に冒されている恋人をとっても心配しながらも、
ひょいと仕事の段取りとかを考えていたり、
不倫してるけど、平気で妻子と楽しい時間を過ごしたり、
実は、私たちの実生活って、みんな、そんなもんじゃないかしら。

それを、当たり前に描いているところ。
そして、同時に自分の心の動きを正確に、ありのままに描いているところ、
そこが、この作品を特別なものにしているし、
村上龍の非凡な才能を物語っていると思う。
同時に、経済小説にもなっていて、
仕事に生きる男の心理状態を、経済事情を解説しながら描いているのも、凄いと思った。

ラストの方は、けっこう涙腺を刺激されますよ。。。。。