今日は、川村毅が続けているパゾリーニの戯曲の三本目を中野の「ボンボン」に観に行った。四部作になっているらしい。一部から三部まですべて観ているので、こうなったら最後まで観るしかない。うちの劇団にいた若手の俳優が出演していたので熱心に観ることになった。

一部から吊るした鮭の切り身が大写しになる演出である。「犠牲」を意味しているのだろう。吊るした鮭は毎日食べる分だけ切り取られて人間の胃袋に入る。時代はいつも何かの犠牲を求め、少しづつ切り取られる肉のように我々の胃袋に収まって行くということだろう。

上京したての頃、池袋の文芸坐でパゾリーニの「豚小屋」を観た。強烈な印象だった。

ドキュメンタリー風に映し出される豚小屋の映像をバックに男がひっきりなしに喋っている。ずっと喋っている。少しもほっとできない、緊張の連続。しかし、若い頭にはとても刺激的で面白かった。

パゾリーニ、フェリーニ特集があり、バイトが終わってからの深夜、一日に8本観たことがあるがそれでも疲れなかった。その時のことを思い出した。

難解な翻訳調の台詞を若い役者たちが楽しそうに喋っているのを観ているうちに上京した頃の時間と重なってしまったのだ。


山崎ハコちゃんが石川さゆりの40周年コンサートの曲を作ったので青山劇場に観に行った。

一部はソウラン節やドンバン節などの力強い民謡、二部が歌入りの一人芝居で、ハコちゃんはこの一人芝居の部分の音楽をすべて担当していた。30分ほどの台詞の多い樋口一葉を描いた芝居で、一人何役も演じていた。ハコちゃんの曲を石川さゆりが歌っているのが意外にピタッとはまっていた。

三部は「津軽海峡冬景色」などの持ち歌で、一人で三時間近く歌っていた。想像していた以上にパワフルな舞台だった。ほぼ同世代だと思うが、声に艶がある。

デビュー曲の「かくれんぼ」という歌に新しく歌詞を作って貰ってアンコールに歌っていたが、40周年で歌に生きようとする心と初心を忘れずにやって行こうという気持ちが重なった良い演出だった。

その作詞が山上路夫さんで、私が小学生でファンになった「タイガース」の曲の作詞をしていた方だ。

最初のアルバム「ヒューマンルネッサンス」もほとんどが山上さんだった。

「落ち葉の物語」も確かそうだったと思う。

ビデオ映像で山上さんが映し出された時「ああ、お元気で良かった」と思ったのだった。