黒いタイヤが、最速で回る。

路面と表立って、衝突することもなく。

ましてや、火花など散らすこともなく。

多少の摩擦にとどめ、回転していく。

綿密にフィットしているかのような、タイヤ周り。

それを支える、ハンドルさばき。

路面と乖離することも、ハマりすぎることもなく、緻密にタイヤの向きをコントロールしている。

すでに、十周台。

彼の速さは、そうでなくとも、路面の荒れ模様を誘いやすい。

それを知ってか、きめ細やかに路面をケアしながら、突き進んでいる。

 

盤石ではない地盤。

速く走るほど、露呈するイビツさ。

隣の光が、増せば増すほど。

余計に目立つ。

ゆがんだダークライトの照り返しが、タイヤに向けて、乱反射する。

それを叩き落とすこともなく、わざとその先へすり抜けていくタイヤ。

ゆえに、イビツさと正面衝突することもなく、やり過ごしている。

望んだ方向からズれても、最高速で駆け抜けることは続けて。

今のところ、となりの光ともつれ合うこともなく。

されど、バトルは譲らず。

最前線を、更新し続ける。

 

そのことで高ぶる、地盤である路面の温度。

摩擦は最小限でも、高速で触れていることには代わりはない。

速いということは多少の接触でも、相手の温度を上げてしまう。

こちらは、そこを常温に維持しようとしても。

否応なく、高回転は熱を高速に伝えてしまう。 

乖離することなくドライブしている分、その熱を交換せざる得ないタイヤ。

綿密に路面状況をケアしているため、なおさら。

蓄積される熱が、途切れるとがなく、溜まる。

 

さらに、上昇した路面の温度がこちらに。

あまつさえ、こちらの回転で高まってしまったものが、跳ね返ってくる。

それを身に受けて、耐える。

表面にのみ、それをたたえながら。

内部は常温そのままで、一緒にその温度に染まることもなく。

されど、それを表向きにもできず。

芯の温度を被せることは、避けたままで。

高速度で、駆け抜け続ける。

前後から煽られた熱をひっきりなしに抱え、表面上はそれ以上の温度さえたたえて。

相対的に見れば、地盤の温度が低温に見えるような温度を撒き散らして。

芯の温度を隠したまま、最高速を更新し続ける。

 

隣が光れば光るほど、先へ向けて。

それにより、イビツさが鮮明になっても。

いや、より露骨になろうとも。

最大瞬間速度で見せ続けることを、やめはしない。 

研ぎ澄まされたシャフトは高回転でも音を上げることもなく、速さの軸をタイヤに伝えて。

増す光でこれ以上、路面が逆なでられてしまう前に、タイヤ表面のそれを伝播させていく。

速度は上がり、表面上は、より細やかに行き渡っているように接し。

無論、余計なカスレなどあるわけもなく、表向きは滑らかに。

それでいて、黒い煤跡も残すほどの高温を振りまいて、展開されていく。

光が当たることで、剥き出される路面のささくれも、そこだけは見られない。

むしろ、粗さの間に煤が行き渡ることで、平坦さがスポットされている。

タイヤの上面が、次々と生み出していく円滑模様。

それは表層の景色ではあっても、アスファルトよりも暗くとも、優美でさえある。